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ゼムナ戦記 英雄の条件  作者: 八波草三郎
第四話

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メタリヤ猛攻(3)

 緑色の宇宙戦艦を魚雷の飽和攻撃であぶり出しているつもりだったメタリヤ戦闘機隊は、突然の陸地側からのアームドスキンの出現に一時離脱を余儀なくされた。その間に浮上した戦艦は上陸していた車両を収容してしまっている。


「正気かよ、こいつ。最大戦力を放り出して潜ってるとか、どれだけ素人なんだ?」

 艦そのものに防衛能力があるとはいえ戦闘を放棄しているとしか思えない。

「ブリーフィングで聞いただろう、ドミトリ4。本当に素人なんだ」

「読めなさすぎですよ、ドミトリ1」

「戦闘だと思うからそうなるんだ。これは猛獣狩りだと思え」

 常々感じるが面白いことを言う上官だ。

「なら、我が軍の誇る最強空母は猛獣に穴を空けられちまって負けたんですかい?」

「そうだ。だが沈んでないぞ、レトライエンは」

「戦場を離脱させられてるんだから負けですよ」


 ターゲットは悠々と空中に静止している。背後に巨城のごとき緑の戦艦を背負って。


(怪物め、騎士気取りかよ)

 ドミトリ4は苛立ちを覚える。


 常勝無敗の祖国は今や異星人が闊歩する場所に変わっている。それが軍人としてのプライドをいたく傷つけていた。

 それと同等の機材をこともあろうか意気地なしのダジェン人が扱っていてメタリヤを脅かそうとしている。許せるものではなかった。


(その思い上がりをぺちゃんこにしてやんぜ)

 扁平な頭に穴を空けんばかりの視線でをにらみつけた。


「攻撃指示を、ドミトリ1」

「よし、一斉攻撃だ、ドミトリ2」

 許可が下りる。

「熱源といえる熱を発していない。アクティブレーダーモードを使用。全機、発射!」

「ライ!」

「食らえ!」


 ミサイルを発射するときに用いる「伏せ(ライ)」を意味する掛け声とともにトリガーを落とす。射出口から産み落とされた弾体はレーダー波反射に従って18mもある人型に殺到した。

 ところがミサイルは道半ばで爆発する。旋回する機体が「ちりちり」と音を発するのをドミトリ4は聞いた。


「なにをやりやがった?」

 憎々しげに吐き捨てる。

「情報どおりレーザー兵器を使ってくる。一筋縄ではいかんぞ」

「でも、奴はあの銃を使っていませんよ」

「我らのミサイルはあれを使うまでもなく迎撃できるということだ。時代遅れなんだよ」


 さっきの音はレーザーがソリッドザウの表面を薙ぐ音なのだと知る。ずっと浴びていればミサイルのように切断されるということ。


(嘗めやがって!)

 横Gに耐える奥歯が砕けそうな軋みをたてる。


「続くぞ。ラデス2から20、撃て!」

「ライ!」


 攻撃が集中するも人型は揺るがない。無敵の防壁のようだ。その姿は甲冑をまとった比類無き騎士のごとき様相。


「いつまでももつものか! コムラ全機、発射!」

「ライ!」


 爆発させられる距離は変わらない。ソリッドザウのミサイル攻撃は飽和させるにもいたってないという意味だ。


「レイビー2から20。諦めるな。続けろ」

「ライ!」


 20機ものソリッドザウが落としたミサイルが一定の距離で噴射炎を発して目標へと走る。しかし、同じく効果を発揮せず爆散するだけに終わった。


「なんだってんだよ、この!」

 ドミトリ4は吠える。

「仕方ない、手数で攻めるぞ。全機、機関砲口開放。フォーメーションを崩さず接近戦を挑め」

「了解!」

「攻略法を見いだすのだ。こいつがメタリヤ本土へ侵攻してきたときを思え。絶対に国土や家族を蹂躙させるな」


 曳光弾の光が人型を塗りつぶす。今度ばかりは迎撃もできないようで腕を頭にかざすだけ。その黄土色のボディからはなにかの破片がキラキラと光を反射しながら落ちているが、傷一つ付いている様子がない。


「よし、黙らせてるうちに宇宙戦艦を……、って回避っ!」

「くおおっ!」


 人型が銃器を向ける。その銃口から発せられる青白いビームは恐怖を喚起する。飲み込まれたミサイルなど爆発する暇もなく蒸発させられている。


(あれを食らったらお終いだ)

 背筋が凍る。


「ひどいジョークだぜ。こいつはフォークを片手に戦車に立ち向かえって言われてるようなもんだ」

 併走する機からそんな愚痴が聞こえる。

「たまったもんじゃないよな、レイビー9」

「まったくだ。だが、考えてみろよ、ドミトリ4。昔から竜退治の勇者ってのは玉砕覚悟で挑むもんだろ?」

「いやいや、死にたくはないぜ」

 冗談にもほどがある。

「待てって。そりゃ鎧だとそうはいかないが、俺たちの乗ってるのは戦闘機だ。やりようってものがあるじゃないか」

「は? やりようだって?」

「見てろよ。あいつの弱点、見切ったぜ」


 レイビー9のソリッドザウは旋回すると不用意に人型に突っ込んでいく。単なる玉砕に見えたが意外にもそうではなかった。突進してくるレイビー9に銃器を向けるが、その銃口が光を発することはない。


「ヘイヘイヘイ、この腰抜け野郎! これでも食らえよ!」


 レイビー9の機体はそのまま突進。あと数秒で激突というところまで迫るが迎撃されない。そこでパイロットが脱出(ベイルアウト)した。

 激突するかと思えたが、すんでのところで銃器が発射される。ビーム光にさらされたソリッドザウは粉砕され、燃料タンクが爆発した。


(そうか! こいつ、人が撃てないのか! とんだ甘ちゃんだぜ)


 たしかにミサイルは防いでいる。牽制の気配も見せる。ただし、ソリッドザウを狙った一撃は放たれていないし、撃墜されたのも今の一機が初めてだったのだ。


 ドミトリ4はキャノピー越しに人型を眺めてニヤリと笑った。

次回『メタリヤ猛攻(4)』 「覚られたな、俺が人を撃てないのが」

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 大陸(惑星)最強と言う名の負け犬。 やってる事は完全に八つ当たりなんよ……。
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