真の平等(3)
フェルシム六十機が整列し、一斉に両手にビームランチャーを構える。一糸乱れぬ動きで照準を定めると掃射を開始した。エイマはその姿を勇壮に感じる。
(すごくよく訓練されてる)
彼らが普段見せる打ち解けた態度からはうかがえない。
連射は迫り来るアストロウォーカーの前列に圧力をかけ、その足を止めさせる。ヒートゲージいっぱいに砲撃をつづけると、今度は見事に揃って砲身を降ろし道を譲った。
後ろから次の六十機がビームランチャーを構えながら前進。間髪入れずに連射を開始した。こうして前列は圧力をかけ続けられてしまう。
(ここまでいくと綺麗に見えちゃう)
対するアストロウォーカーの雑然とした感じが反対に目立つ。
前進を阻まれたアストロウォーカー部隊の後列はしびれを切らしてジャンプする。すると三列目に位置していた六十機の砲口が同時に立ち上がる。
放たれたビームが飛翔中のところを迎撃。手足などを撃ち抜かれて大破する機体、リフレクタで受けつつも推力を使い果たして降下する機体、時折機関部に直撃して爆散する機体にあふれた。
「見とれてないで迎撃開始」
少女は自分を棚に上げて指示する。
「うっし、負けねえぜ!」
「気負うな、コウヤ。確実にいけ」
「そうだった。ごめん、ピオあんちゃん」
トリアンデの二人もアストロウォーカー迎撃部隊に入っている。
「いつもどおりでいいのよー」
「だよねー」
「ん!」
マニャの号令にアスホやフユキも従う。
第十四の六隻百八十機が弾幕を張る中、緑の戦隊は右側に陣取って砲撃を始める。長距離砲は主に下向き。大地をえぐって一撃で多数のアストロウォーカーを転倒させる作戦。
「よく狙うのよ」
「任せて」
無防備な起き上がり際が狙い目。頭や手足を破壊していく。擱座した機体が後列の前進を邪魔し、効率のいい足留めになる。繰り返すだけで隊列は乱れていった。
「ばらけたところで突入。っと、呼吸合わせないといけないんだった」
今回は自分たちだけではない。
「向こうが合わせてくれるのーん。エイマのタイミングで仕掛ければいいん」
「了解よ、リュセ。よろしくって伝えて」
「とっとと行けって言ってるん。口の悪いおっさんなのん」
グリード司令が聞いてるのに暴言を吐く。
緑の戦隊はロングバレルをその場に置いて突入を開始。舞い上がって敵中に着地した。
「各個に攻撃。コウヤ、離れすぎないようにね」
孤立させないよう目を光らせる。
「指揮頑張って、エイマ」
「フユキ?」
「周りはいいから」
頭を振ってビームを躱す弟のシャクラバーン。両手に握らせたビームガンが光を吐けば、その数だけアストロウォーカーの頭部が吹き飛んでいく。
(あたしの周囲だけ安全地帯ができちゃうじゃない)
怖ろしく精度の高い狙撃に、迂闊に近づいてこれない。取り囲まれながらも空隙が生まれている。エイマは頭部を失って固まったアストロウォーカーの脚を狙いながらコウヤ組やピオット組との相対位置を気にしていた。
(先頭集団がこれだけ混乱すれば後ろは詰められない。何千機いたって同じこと)
タイミングを合わせて第十四のアームドスキン部隊も突入している。乱戦は拡大していく一方。
エイマは僚機の状態と体力だけを気にしていれば作戦どおりに時間は稼げるはずだと思った。
◇ ◇ ◇
「待ちなさいよ、ラウラ!」
「まあ、そう欲張るな」
チリリと嫌な感覚がルナレーゼの背筋を駆けのぼる。反射的に蹴りつけたペダルがクエンカムを10m近く跳ねさせていた。
振り返れば爬虫類を思わせるような頭部を持つアームドスキンが手を伸ばしている。掴まれればどうなっていたか解らない。
(こいつはいったい……)
幾たびか出し抜かれているが、初遭遇のときから覚えているプレッシャーは原因不明。
流暢な星間公用語で応じてくる。しかし、情報ではパイロットは未開人のはずなのだ。疑わしくなってくる。
その機体に関しても対戦情報程度しかない。機体名の欄など『悪魔』という怪しげなコードしか記されておらず不気味極まりない。
「あいつがいなくたって二人とも相手するから」
いつもながら気安い口調。
「二人?」
「大口を叩くな! すぐに墜としてやる!」
「いたの」
もう一機のクエンカム、レゲネードが絡んでいく。
「あんたなんかシルバーラインにこてんぱんにやられて泣いてたじゃない」
「誰が泣くか! 泣いてたのは整備兵だけだ」
「いや、泣かせてやるなよ。しかし、お前ら本当に仲悪いな」
レゲネードの二連射はするすると躱される。牽制から繋いだ斬撃もかすめただけ。逆に間合いに入ってしまい腕を絡められようとしていた。
(この馬鹿!)
慌てて飛び込む。
逆袈裟の一閃はかすりもしない。だが、ディアボロスを間合いの外へ弾きだすには十分。赤いレンズアイが警戒してうかがってくる。
「手間かけさせるんじゃないわよ、この名前を冠しているだけの種馬が」
「言わせておけば!」
「イグナイルの男なんて血を繋ぐだけの数合わせなんだから大人しくしてなさい」
「おいおい」
白銀のアームドスキンは呆れたように腰に手を当てている。
「事情は軽く聞いてるが、いくらなんでもかわいそうだろ」
「部外者は黙れ! もう許さんぞ!」
「やれるもんならやってみれば?」
先に始末したい気分。
「別に止めないけどな。もう始まるから邪魔にならなきゃいい」
「なにを?」
ルナレーゼは聞き捨てならない台詞を怪訝に感じて振り返った。
次回『真の平等(4)』 (今日はわたくしも彼らとともに戦います)




