ライバーン融合(1)
セリナたちはリュセルの案内で巨大な船の展望室のような場所にきていた。そこが艦橋という場所らしい。軍用の船では中枢に当たる場所だと教えられた。
「タイキ先生は?」
一番気になる点だ。
「あそこ! 飛んでる」
「無事なんだ。よかった」
「四機もいる。あいつら、寄ってたかって腹立つー!」
エイマが憤激している。たしかに集団で追いこんでいるように見えた。
追いつめられたライバーンは地上に降りるとビームを放つ。付け焼き刃の一撃は的外れな方向に飛び、一機が接近すると膝蹴りを食らわされる。固まったタイキの機体はゆっくりと後ろに倒れた。
「せんせーい!」
敵に囲まれた状態でのこと。殺されてしまうか、あるいは捕まるかしかない。そこにいる全員がこれから起こる怖ろしい事態を予想する。
「まあ、仕方ないのん」
唯一落ち着いているリュセルがあきらめの台詞をもらす。
「しょーがなくない! 助けに行かないと! これ、軍艦なんでしょ? 大砲くらいないの?」
「興奮しないのん。付いてるけど必要ないのん。後悔するのはあっちなのん」
「へ?」
リュセルが四機のほうを指さした意味がセリナには解らなかった。
◇ ◇ ◇
「制圧完了。鹵獲するぞ」
デレイフは部下に指示する。
「鹵獲するんですか、隊長? 原始人に手を出すと厄介なことになりそうな気がするんで破壊したほうがよくありません?」
「原始人じゃなく未開人だと言っている。この機体を調査する」
彼は必要に駆られていた。普通なら部下の判断も間違ってはいない。原住民を監禁したとあっては管理局の心証はすこぶる悪い。しかし、今回は話が違う。
(調べないわけにはいかない。このアームドスキンが飛行するのに使っていた金色の翼。自分の認識が間違っていなければ重力場フィン。どこの機体だ?)
アームドスキンの本場であるゴート宙区で十年以上前に発表された推進システムである。実用化に三年を要し、量産化にさらに二年を必要としたと聞いている。星間管理局でもようやく量産化にこぎ着け、配備が徐々に進められている。
(敵国ランナはもちろん、軍事予算に寛容な我がフォルセアでも製造されていないほど。投入できる第三勢力がどこにある)
筆頭格は管理局。それがデレイフの懸念だが、まさか保全対象惑星に持ちこむわけがない。そうでないならゴート宙区のどこかの国になる。
(そんな馬鹿な。あの新宙区がこんな辺境の紛争に介入するつもりだと?)
不可侵の国々である。感覚的には保全惑星に手を出すより問題だ。星間軍と五分を張るような相手を敵にまわせばフォルセアとてひと溜まりもない。
「出どころを調べる。ドルセセフに運べ」
「了解いたしました」
『そうはいかねえなぁ』
黄土色のアームドスキンがゆっくりと身を起こす。今度は彼らでも理解できる言語が聞こえてきた。
『痛えじゃねえか。パイロットはどうなってもいいんだがよ、オレ様のボディに傷が付いちまうだろ?』
「なに!?」
瞬時に持ちあげたビームランチャーが光を放つ。油断していた僚機の頭部が吹きとんだ。
「だっ!」
「トゼル!」
気を取られているうちに不明機は動きだしている。数歩で接近するとブレードを閃かせてもう一機の左腕を肩口から斬りとばした。
「ハガー!」
「くぅ、速い! 動きが段違いですぜ、隊長!」
部下の言うとおりだ。先刻までの素人くさい動きは微塵も感じられず、機体性能をフルに発揮しているような攻撃が繰り出されている。
「散開しろ。仕切り直す」
デレイフは冷静に判断してもう一度鹵獲に向けて動きだす。しかし、容易な敵ではなくなっていた。
視界を閉ざされて状況把握に劣るトゼル機がワンテンポ遅れて飛びたとうとするも追いつかれる。肘打ちが腹部へと刺さり機体が流れた。
(ん?)
彼は妙な点に気付く。とどめを刺されてもおかしくない状況で、不明機は目標を次に切り替えたのだ。
変化を嗅ぎとっていたハガー機は機敏にビームを躱し間合いを取る。相手は深追いせず、全体に注意を振りむけるように滞空した。
「詰めの甘さは変わってないぞ。怖れることはない」
「そうみたいですね」
危うい状態だったトゼルは胸をなで下ろしている。
『バレちまったか。たしかにオレ様じゃ撃破までは持っていけねえ』
「投降しろ。何者かは知らないがたった一機でどうにかなるものではない」
『冗談じゃねえぞ。殺しにセーフティが働いても、ぶっ壊すほうは制限掛けられてねえからな。そんな玩具に毛に生えたようなヒュノスでこのライバーン様をどうにかできるとでも思ってんなら甘過ぎだぜ?』
ビームを牽制に使って散らされる。間合いを作られると機動力がものを言ってしまう。金色の翅を閃かせたアームドスキンは射線に捉える暇もなく僚機の背後にまわっては打撃を与え、四肢を撃ちぬいていった。
「簡単にやらせるかよ!」
『防げるもんならやってみな』
デレイフのエテルギームがパワー任せに割りこむ。ブレード同士が噛みあって紫電の花が開いた。雷光の向こうに輝く球形のレンズアイが凶暴な光をたたえているように感じてしまう。
(この機体の変貌具合はなんなのだ? 意味不明の言語を発したかと思えば妙に攻撃的になる。まったく理解できない)
戸惑いを押し隠してブレードを振る。
あまりに把握できない状況にデレイフは落としどころをつかみかねていた。
次回『ライバーン融合(2)』 『そうだぜ。寝こけてていいのかよ』




