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ゼムナ戦記 英雄の条件  作者: 八波草三郎
プロローグ
1/305

紺碧の星

本日はプロローグと第二回まで更新しています。

本作は第三話まで一日二回分の更新をしていきますのでお楽しみください。

 彼らの母艦ドルセセフは濃密な大気へと沈んでいっている。


 そこは巨大惑星(ガスジャイアント)。高重力の惑星(ほし)は様々な物質を引きよせて溜めこんでいる。そこで推進および戦闘資源となる物質を採取しているのだ。


 通常の補給地、星系外縁(カイパーベルト)と違ってダイレクトに通常空間復帰(タッチダウン)はできない。5万km以上離れて復帰してから通常航行で接近しなければならないが、水やメタンガス、アンモニアなどの資源採取効率は遥かに良い。


 反重力端子(グラビノッツ)の普及で、一昔前と違って艦艇も大気圏降下が一般的となった星間宇宙歴1442年の現在、ガスジャイアントは有望な補給地として見直されている。ここ、カグトレン星系の第五惑星もその一つだった。


「この戦争、こんなに長引くとは思わなかったぜ。な、ハガー?」

 アームドスキン『フェルシム』のコクピットで、トゼルは僚機のパイロットに話しかける。

「ランナの連中、能天気かと思いきや案外粘りやがる」

「オレらは軍事強国フォルセアだぞ? 半年も攻めたてりゃ音を上げると思ってたのに、もう二年近くもこんな有様だ」

「はぁーあ、早く本国に帰って恋人(イーゴ)に会いたいぜ」

 ハガーはぼやいている。

「イーゴか。お前にしちゃいい女捕まえたんだもんな」

「これじゃあよ、プロポーズもできないだろ?」

「別に止めないけどな」

 戦友は「殺す気か!」と笑いながら吠える。


 彼らの国フォルセアは近隣国家ランナと戦争中。作戦行動中の補給地としてカグトレン星系を訪れているのだ。

 今のところランナはこの第五惑星を補給地としていないので会戦宙域となることもないだろうが、もう把握はされていると思ったほうがいい。なので彼トゼルとハガーも周回軌道で宙域の監視任務に当たっている。


「炭素フィルター通した味気ない空気にも飽きてきたって」

 彼にも不満がある。

「たまには美味い空気を胸いっぱいに吸いたいじゃないか」

「おあつらえ向きの場所はあることはあるぜ」

「冗談はよせ」


 ハガー機が指差す方向を見る。望遠ウインドウには紺碧の星が輝いていた。


「あれは保全惑星だぞ」

 不可侵の地。

「降りてみろ。お国が管理局に冷たーい目で見られちまう」

「だがよ、とびきり美味い空気なんじゃね? あそこには原始人しか住んでない」

「その原始人だって第五惑星まで探査機械を飛ばす技術くらい持ってる。だからターナ(ミスト)まで使わなくちゃなんない」

 探査機械の電波を阻害するために攪乱物質まで使用している。

「ま、触らぬ神に祟りなしだな」

「だろ? 今は眺めて楽しむのがいいとこだって」


 暇つぶしの会話も一段落する。二人も彼方の紺碧の星にどんな人類が住んでいるかは知らない。


「真面目にやってるな」

 第四惑星に機体を向けているのがそう映ったようだ。


 飛んできたのは隊長機『エテルギーム』。左肩に『1』のナンバリングを持つのは、彼らの隊長のデレイフ・クアン操機団長補である。


「無論です、隊長」

「なんなりとご命令を」

 フォルセア軍の規律は厳しい。

「そう気張るな。戦闘でもないときに疲れる必要はない。気軽に構えておけ。ここには敵はいない」

「は!」

「目を除いては休ませております」


(ターナ(ミスト)を使ってるから無駄口は聞こえてないだろ)

 トゼルは高を括る。


 隊長(デレイフ)さえも敵がいないという状況では彼も油断する。


 しかし、そんな彼らを見つめる目があるのには気付いていなかった。

次は第一話『ぼくらの先生(1)』 「絶対に俺の生徒には手を出させない」

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