一話:世界の成り立ち
遠い、遠い昔にあった、小さく、大きい物語。
この大地が生まれたのは、神様たちの気まぐれから始まったと言われている。
空の上のまた上。そこに存在する聖域、“神界”。そこで世界の源が詰まった一粒の雫が生まれ、
ポチャンという音と共に世界が生まれた。
そこは緑で溢れていたが、そこに人やエルフといった種族は存在していなかった。
それでお終い。それ以上は何もしない。ただ傍観しているだけ。
神様たちにとって、世界を作るということは子供が面白半分に手をつけてそのまま放っておくのと同じなのだ。
少なくとも、最初の頃は。
世界創造から幾許も無く、それは起った。
神界から、一人の神が世界に落ちてしまったのだ。
それがただの神なら放っておかれただろう。仕方がなかったと言うだけで終わっていただろう。
だが、落ちたのはただの神ではなかった。
落ちたのは神界を統べし主神“オティヌス”の娘である“シフティア”だったのだ。
様々な神々がシフティアを助け出そうとしたが、全てが失敗に終わった。
結局オティヌスは、シフティアが落ちてしまった世界に神々の加護を注ぐことにより、シフティアを守ることしか
できないまま終わってしまう。
その神々の加護が降り注いだことにより、世界には三つの種族が誕生した。
一般的な能力を持ち、この世界の人口の六割を占める人間。
知能が高く、魔術においては一流と言われているが、他の種族とは距離を置いている森人、エルフ。
小柄な体格だが、他のどの種族よりも一つ先の技術力を持つ巧人、スミス。
世界最強ともいえる力をその身に宿す竜人、ドラニトゥ。
この四種族が世界に生まれ、今の世の基盤が出来上がる。
世界に落ちてしまったシフティアは、四種族を見守る守護神となり、彼らを見守るために
精霊を生み出した。
これが、気まぐれで始まった物語。
でも、これはまだ終わっていない。
何故なら、今のこの世こそが、物語なのだから。