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1、プロローグ

「まったく、足手まといもいいところだな。そんな力でどうやって戦うつもりだ?」


「自分のレベルを下げるスキルだってよ、こりゃ傑作だな!」


「やだ、ダサ! ほんとあんたって使えないわね」


「くっ……」


 俺は佐倉木裕樹、都内の高校に通う16歳。

 そして、今俺のことを馬鹿にして笑っているのは、一緒に異世界に召喚されたクラスメートの三人だ。


 一人は俺が通う高校の生徒会会長、美堂崎光一。

 親は有力な政治家で、その上イケメン、勉強も運動も出来るが独善的で傲慢なタイプなので俺は苦手だ。


 その傍に立つ金髪のチャラ男が、獅童院玲児。

 色々悪いうわさも聞くが親が大金持ちで財界の有力者なので、学校もその寄付金が目当てで何も言えない。


 最後は麻宮星結衣。

 外見はアイドル並みの美人だが性格は超が付くほどの高飛車で、教師の前では優等生だが目を付けた相手を裏で徹底的にいびる陰険な女だ。

 ちなみに光一の彼女でもある。


 スクールカースト最上位のこの三人はいつもつるんでるが、俺はこいつらの友人でも何でもない。

 それどころか、一度こいつらに目を付けられてイジメられているクラスメートを庇ったら、酷い目にあわされた。

 それ以来、こいつらが怖くてクラスで俺に話しかける奴はいなくなった。

 つまり、今は俺がこいつらのターゲットってわけだ。

 受験勉強を頑張って有名私立になんて合格したのが、俺にとって運の尽きだったのかもしれない。

 大人しく近場の高校に通ってれば、こんな連中に会うこともなかったからな。


(よりによって何でこいつらと、元の世界に戻してくれよ!)


 信じられないことに、俺はこいつらと異世界に召喚された。

 たまたま、この三人に廊下で絡まれてた時に、足元に怪しい魔法陣が現れたかと思うと気が付いたら見たこともない城に中にいたんだ。

 俺達を召喚したのは異世界の王国、ラルファストの国王だという。

 魔族が世界に現れるようになり、魔王の復活が近いと噂されるようになったため伝承に従い勇者召喚とやらを行ったらしい。


 俺達は今、その王国の城の中にいる。

 先程、国王から色々と話を聞かされたばかりである。

 それによると、伝承では召喚された者たちには勇者に相応しい力が備わっているそうだ

 こちらの世界の言葉が分かるのもその力の一部のようである。

 最初は皆騒いだが、召喚される際に神から自分たちに与えられた力を知り、俺以外の三人はすっかり魔王退治とやらに乗り気になった。


「つまり、リアルなロールプレイングゲームみたいなものだな。面白いじゃないか、なあ結衣、玲児」


「ふふ、そうね。魔王退治も面白いわ」


「ああ、高校生活なんてもう飽き飽きだからな」


 完全にゲーム感覚の三人。

 勇者として召喚された俺たちが元の世界に戻るには、その魔王とやらを倒すしかないらしい。

 目の前の玉座には、いかにも国王という冠と豪華な衣装に身を包んだじいさんがいてこちらを眺めている。


「おお、それは頼もしい! ふむ、コウイチ殿は勇者に相応しい魔法や剣技を、レイジ殿は凄まじき武闘家としての力、そしてユイ殿は攻撃魔法はさることながら驚くべき回復魔法の力!!」


 国王の言葉に周囲の貴族や騎士たちも口々に三人を褒めたたえた。

 それぞれ勇者に相応しいユニークスキルを与えられた三人。

 光一は剣、玲児は格闘系、そして結衣は魔法系のユニークスキル。

 例えば光一のステータスはこうだ。


 名前:美堂崎光一

 種族:人間

 レベル:レベル1278

 職業:勇者

 力:1827

 体力:1631

 魔力:1178

 速さ:1772

 器用さ:1752

 集中力:1532

 幸運:1527


 魔法:全属性Aランク

 物理スキル:剣技Sランク、槍技Sランク

 特殊魔法:武器強化魔法

 特殊スキル:限界突破

 ユニークスキル:【光の剣】

 称号:召喚されし勇者


 おいおい、いきなりレベル1000以上って……

 この世界でのレベルの上限がどこまでなのかは知らないけど、まさにチートである。

 これを見れば魔王退治に乗り気になるもの頷ける。


「素晴らしい!」


「我らが救世主に相応しいお力ですな!」


「おお! 三人ともレベル1000を超えておられる! 並みの人間では努力を積み重ねてもせいぜい数百が関の山。ここからさらに成長されると思うと、これで魔王も倒せるに違いありませぬ!」


 ひとしきり三人を絶賛した後、連中は俺を馬鹿にした目つきで眺めた。


「じゃが、それに引き換え………」


 ゴミでも見るかのような目で俺を見る国王。

 何だよその目は。

 勝手に呼び出しておいてさ。

 俺たちの力を調べると言うことで用意された大きな水晶玉には不思議な魔法がかかっているようで、俺たち全員のステータスが浮かび上がっている。

 そこに映し出された俺のステータスはこれだ。


 名前:佐倉木裕樹

 種族:人間

 レベル:レベル1

 職業:なし

 力:5

 体力:4

 魔力:2

 速さ:5

 器用さ:5

 集中力:3

 幸運:1


 魔法:なし

 物理スキル:なし

 特殊魔法:なし

 特殊スキル:なし

 ユニークスキル:【自分のレベルを一つ下げる(使用制限100回)】

 称号:召喚されし勇者


 ……なんだよこれ。

 レベル1とか、どう考えてもスライム並みのステータスだろこれ。

 それに称号には召喚されし勇者とあるものの、職業は空欄だ。

 勇者の光一とは比較にもならない。


 それに俺が唯一使えるスキルは【自分のレベルを一つ下げる(使用制限100回)】という使えないにもほどがある力。

 敵ならともかく、自分のレベルを下げてどうするっていうんだ。

 しかもご丁寧に使用制限までついている。

 どう考えても、キング・オブ・使えないスキルである。

 国王は玉座からまるでゴミクズを眺めるような眼差しで俺を見下ろすと、光一たちに言う。


「さてどうしたものか。こんな男が役に立つとは思えんな。コウイチ殿たちの仲間でなければ、つまみ出すところだが……」


 それを聞いて、結衣は笑った。


「勘違いしないでもらえるかしら。こんな奴、最初から仲間なんかじゃないわ。むしろ目障りでしょうがないぐらい。身の程もわきまえずに、私たちに意見したんだから」


 俺が前にこいつらにいじめられているクラスメートを庇った時のことを言っているのだろう。

 玲児も結衣に同意する。


「確かにな。こんなクズと仲間扱いされるのはごめんだぜ。なあ? 光一」


 光一は俺を見て嘲笑うと頷く。


「まったくだ。こいつはたまたま才能がある俺たちと居合わせて、一緒に召喚されただけだろうな。魔王退治は面白そうだが、こんなお荷物を連れていくのは勘弁してほしい」


 それを聞いて国王たちは先ほどよりもさらに冷たい目で俺を見下ろす。


「なるほど。勇者殿たちの仲間ではないのですなこのゴミクズは。おい、構わんこやつをつまみ出せ!」


 おい、いきなりゴミクズ呼ばわりかよ。

 酷い扱いだ。


「「は! 陛下!!」」


 国王の言葉に俺たちの傍に立つ衛兵が二人、俺の腕を掴んで連れて行こうとする。

 思わず俺は叫んだ。


「お! おい、どこに連れていくんだよ! 俺はそもそも魔王退治なんて興味ないんだ、もとの世界に戻してくれよ!!」


 国王たちはそれを聞いて嘲笑う。


「聞いたか?」


「ああ、やはり勇者ではない。臆病者め!」


「見苦しい、とっとと追い出してしまえ!」


 国王は改めて俺に宣告する。


「ええい、情けない。ここから追い出すだけでは気が済まぬ。そやつを我が国から追放せよ!」


 俺は追放を宣告され、引きずられていく。


「は、放せって言ってるだろ! 俺は元の世界に戻りたいだけなんだ!」


 魔王を倒さないと帰れないとか言ったけど、それが本当かさえ分かりはしない。

 こんな目にあわされて信じろと言うのが無理だ。

 そんな中、俺を眺めながら結衣が言った。


「ねえ。そいつ、ウザいから始末してくれない?」


 結衣は俺を引きずっている二人の衛兵にそう言った。

 は? 何言ってるんだこいつ……

 俺は思わず背筋がゾッとした。

 まるで冗談を言うかのような口調だったが、その目は笑っていない。

 衛兵たちが流石に聞きかえした。


「は? この男を殺すのですか?」


「しかし……」


 結衣は笑いながらこちらを眺めると言う。


「あんたたち剣を持ってるんだし出来るでしょ? 私、前から一度でいいから人が目の前で死ぬところが見たかったのよね。ゴミのくせにこの私たちに逆らうなんて、そもそも死んで当然でしょ」

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