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冥府に咲く花  作者: rumi
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ハデス以外の神様

あれからクレアスとたくさんの種を撒き、帰宅したハデスとご飯を食べた。

ふぅーっと息を吐きベッドに横になった。私は部屋の灯りを見ながら今日を思い返した。


私がメークじゃなくてクレアスと庭作りをしたかったのは、今は亡きクレアスの恋人、アシュレイの為。

「花が咲いたらアシュレイのお墓に供えようね!」

そう言ったらクレアスは照れたように、だけど嬉しそうに笑ってくれた。

ケルベロスも久しぶりの外が嬉しかったみたいで走り回っていた。

それから水やりもした。

「どうしてこの場所は太陽もないのに花が咲くの?」

するとクレアスは言った。

「それは地上での話。神様のいる世界では不思議なことが起こるものよ。」

「神様はハデス以外にもいるの?」

「もちろんいるわ。ハデス様が冥府の神であるのと同じように天空や海にも神様がいるのよ。12人いると言われているわ。」

「そんなにいるの?」

「えぇ、私が知っているのは天空の神、ゼウス様だけだけど、彼は根っからの女ったらし。サクラを見たらどうなることやら…。それに彼はハデス様を冥府の神に命じた神よ。唯一、神に命じることができる神なのよ。」

「凄い神様なんだね。」

「えぇ、ゼウス様は全てを司る最高神よ。それでいてハデス様の弟。」

ハデスに弟…。聞いたこともない。私、ハデスのことよく考えたら何も知らない…。落ち込む私にクレアスが言った。

「誰もが嫌がった冥府の支配をゼウス様はハデス様に命じたのよ。誰にだって言いたくないことの1つや2つあるわ。」

そう言って慰めてくれたけど…胸が痛むのは何故だろう。そんな疑問を抱いたところにハデスがメークと共に帰ってきた。

「お帰りなさい、ハデス♪」

「あぁ、ただいま。」

「お帰りなさいませ。お早いお帰りで。」

「そりゃあ、クレアスに庭作りを任せてはいられませんからね!」

クレアスとメークがただならぬオーラを出して睨み合っているけど、こんなのはいつものこと。何だかんだで仲が良いんだから。

「種は撒き終えたのか?」

「うん♪ケルベロスの散歩も終わったよ♪自由に走り回ってた♪」

「そうか。」

そう言ってハデスは優しく微笑み私の頭を撫でた。

「…サクラ、何かあったか?」

「え?何もないよ。」

ビックリした。確かにハデスのことで落ち込んではいたけど、普通に振り撒いていたはずなのに…。

「そうか?何かあったらすぐに言うように。」

「うん。それよりお腹空いちゃった。」

「でしたら、さっそく食事の準備をいたしましょう!」

メークが待ってましたと言わんばかりに言った。

「ですがサクラ様、土だらけですので、身支度を整えてから食事にいらしてくださいね。」

ケルベロスを地下に戻すのはハデスとメークに任せることにして、私とクレアスは館に戻った。


「ねぇ、クレアス。どうしてゼウス様はハデスを冥府の神様にしたのかな?」

お湯に浸かりながらクレアスに聞いた。

「さぁ、何ででしょうね。噂だとゼウス様がハデス様を嫌いだからだと言われていたけど、本当のところはゼウス様にしか分からないわ。」

「ハデスを嫌いになる人なんているの?」

「そりゃ中にはいるかもしれないわ。だけどそれは今のハデス様を誰も知らないからね。」

「そんなに今のハデスと前のハデスは違うの?」

「えぇ、違うわ。サクラの知らないハデス様もいるけれど、サクラしか知らないハデス様もいるのよ。」

…なんだろう。クレアスの言葉で心があたたかくなった気がした。

「そっか♪」

「元気になったのなら、いつまでもしょぼくれていないで、いつものように笑っていなさい。あなたの笑顔は花のようなのだから。」

クレアスにそう言われ笑顔にならないわけがない。

「ありがとう、クレアス。」


部屋の灯りがぼんやりと見え始めてきた。眠たくなってきたな…。寝るならちゃんと布団に入らなくちゃ。それに、カーテンを閉めなくちゃ。私は重たくなった体を起こして窓際へと向かった。

「ニャアッ」

え、何?突然の声に目が覚めた。

「ニャーニャー…」

見るとベランダに黒猫がいた。まるで私を待っていたかのようにお行儀よく座っていた。

何で猫がこんなところに…。

「黒猫さん、どうしてここにいるの?どこから来たの?」

猫は開いた窓から部屋の中へ入ってきた。そしてソファにコロンと横になった。か、可愛い…。

「大分人馴れしてるけど、どこかで飼われている猫なのかな?」

私は猫の隣に座り、猫を撫でた。すると、もっと撫でてとすり寄ってきた。

「フフッ可愛いねぇ。」

ケルベロスも可愛いけれど、ケルベロスでは味わえない可愛さだわ。

「可愛いのは君の方。」

いきなり声がした。辺りを見回しても誰もいない。

「ここだよ。話したのは僕。」

もしかして…そう思って視線を落とせば、そこには話す猫がいた。

「初めまして。サクラちゃん。」

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