3年もの月日
「ただいま!」
サクラの声に皆が集まり、成長した姿に言葉を失ったあと、喜びの声をあげた。
「「サクラだ♪サクラが帰ってきた♪」」
死神たちは陽気に歌った。
そのへんてこな歌に皆が笑う。
「大きくなったわね。」
と、クレアスは涙ぐんだ。
「お美しくなりましたね。やはり私が貰いたかった。」
などと言ったメークの頬をつねった。
こんなに賑やかなのは久し振りだ。
サクラがいるだけでこんなにも明るくなる。
サクラは"冥府に咲く花"なのだ。
そういえば、サクラに目を輝かせていたゼウスはというと…
ヘラにしっかりと捕まっていた。
その様子をサクラも見たのか笑って2人の元へかけて行った。
何を話しているのかは分からないが嬉しそうに笑っている。
「サクラ様、楽しそうですねぇ。」
メークが言った。
サクラが笑ってくれていたらそれでいい。
「本当、あの子が帰ってきてくれて良かったわ。」
クレアスが言った。
サクラが此処に居てくれるだけで、それだけでいい。
なのに、何故…
「私の元に来ない。」
「だったらハデス様が行かれたらよろしいじゃないですか?」
近くにいたメークがが言った。
「いつもなら私の傍にくっついて離れないくせに…。」
「あら、ハデス様。
サクラだっていつまでもハデス様だけではありませんのよ?」
クレアスが意地悪く笑いながら言った。
「こら、クレアス。」
「だってそうでしょ?
サクラが今もまだハデス様を好きとは限らないわ。」
「……。」
そんなことは分かっている。
私を好きだと言ったのは3年も前のサクラだ。
迎えにも来なかった男など好きでいるわけがない。
それにしても、サクラの姿には目を奪われる。
前に一度、成長をしたサクラを見ているというのに、あの時とはこんなにも違う。
私の視線に気が付いたのか、サクラがこちらを見た…はずだが、思いっきり逸らされた。
仕方がない。
怒っているのだろう。
だが、さすがに…
大きなため息を吐いた。
「これは結構重症ですね。」
「えぇ、本当に。」
2人のそんな言葉さえ私の耳には入らなかった。
(ゼウスとメークの会話)
「何あの兄さんの顔…。」
私の横にきたゼウス様がハデス様を見て言った。
「なんでもサクラ様がそっけない事に気を病んでるみたいなのですよ。」
「(クスクス)冥王ハデスが?」
「(クスクス)えぇ、冥王ハデス様が。」
本当に、誰が想像できますでしょうか。
あのハデス様がですよ?
サクラ様がいらっしゃる前までは、何にも執着せず、趣味も興味もなく、ただ死者を裁くだけの冥王様だったのに…
「ここは女性たちに任せるとしようか。」
「と、いいますと?」
「ヘラとクレアスにサクラちゃんを任せよう。」
サクラ様の気持ちは女性たちのが聞きやすいだろう。
私からみた感じだと、サクラ様は避けているというよりは、恥ずかしさから顔を背けているような…
でも実際は分からない。
もう幼いサクラ様ではないのだから。
「そうですね。」
「僕たち男は素晴らしい成長を遂げたサクラちゃんの話で盛り上がろう♪」
「それは賛成ですね。」
サクラ様の美しさと言ったら…。
あんな顔で笑うものだから終始ドキドキでした。
外見だけではなく、中身も成長し、時折見せる少女のような顔ときたら、もう…。
そのような話でゼウス様と盛り上がってる最中、
……もちろんハデス様に怒られたのは言うまでもありません。




