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冥府に咲く花  作者: rumi
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ゼウスが冥府に来た

朝からメークに起こされた。今日は久々に死者を裁かなくても済む日、すなわち休みだ。ゆっくりとメークの淹れる茶でも飲もうと思っていたのに…

「何故いる、ゼウス。」

先日オリュンポスで会ったばかりの弟、ゼウスがサクラと会話を弾ませていた。

「あ、兄さん、おはよう。」

ニッコリと笑顔を見せるゼウス。

「ハデス!おはよう♪」

サクラが私に抱きつく。

朝からなんて元気なやつ…クスクス。

「あぁ、おはよう。」

私はサクラの頭を撫でた。その様子を見ていたゼウス。

「君たちっていつもこうなの?」

「えぇ。

はい、離れてくださいね。くっつきすぎです。」

メークが私とサクラを離す。

「サクラちゃん、僕にもその挨拶して。」

ゼウスが手を広げる。

「はーい。」

言いながらサクラがゼウスに近付くのを阻止した。

「それはダメ。」

「兄さんばかりズルいなぁ…。僕だって可愛い子にハグされたい。」

まったく、コイツは…。まぁサクラに手を出す気は無さそうだし、何よりゼウスにはヘラがいるからな。

「で、一体何しに来た?」

そう、コレが気になっていた。

「だって、来ていいって言ってくれたから。」

確かに言ったが…

「すぐに来すぎだ。」

「でも、それだけの用事じゃないよ。」

どうせ、突拍子 もないことを言うにちがいない。

「ハロウィンパーティーをしない?」

ほら、みろ。

「ハロウィンパーティーって何?」

サクラが不思議そうに首をかしげる。

「簡単に言えば仮装パーティーだよ♪それでお菓子を食べる♪」

「えぇー!したい!ハロウィンパーティー!」

お菓子という言葉に食いつくサクラ。

「一体何処で誰とソレをする?」

「ここ(冥府)で僕と兄さん、サクラちゃん、メークにクレアス。それからーー死神たちも誘ってみんなでやろう。そもそも彼らは既に仮装済みと言えなくもないけど…。天界からは僕だけの参加だよ。ここは兄さんの場所だからね。」

ため息がでる。騒がしいのは苦手だというのに。

「ねぇ、ハデス、ダメ?」

サクラが上目遣いで私を見る。私はつくづく甘い。

「はぁー。仕方がない。」

花が咲いたように笑いサクラが私に抱きつく。

「ありがと、ハデス♪」

「コラコラ。まったく。」

と言うメークに、

「本当、困ったもんだね。」

と笑うゼウス。

「さて、そうと決まったら地上に行くよ♪」

「何をしに地上へ?」

「ハロウィン準備にね♪」


などと言うから私とサクラとゼウスで地上へ来た。

サクラの子守りで手一杯なのにゼウスの子守りまでしなきゃならないなんて。

「みなさんで行ってらしてください。私はハロウィンのご馳走を考えないといけませんから。大人が2人もいるのです。どうぞお気をつけて。」

ニッコリと微笑むメークにあぁ言われたら仕方がない。

「ねぇ、ロエンに会える?」

サクラの口から布屋の青年の名が出た。

「ロエンって誰?」

「地上でできた友達だよ♪」

「それって男?女?」

「男の人だよー」

ゼウスが私の顔を見る。

「へぇー♪男の友達ねぇ、気になるなぁ。」

何故コイツはこんなに嬉しそうなんだ。

「布屋さんに行けば会えるよ。」

「ふーん♪布屋かぁーハロウィンの衣装を作ってもいいね♪」

ニヤニヤと笑うゼウスに若干、腹が立ってきた。

「さっさと布屋に行くぞ。」

「はーい♪」

サクラは嬉しそうだ。

それもそうだろう。せっかくできた人間の友達なのだから会いたいと思うのは当たり前のことだ。なのに何故か私の心は落ち着かない。

「あんなにはしゃいじゃって(クスクス)まったく可愛いね。ねぇ、兄さん?」

…面白くない。

「ハデスー♪」

振り返り私を呼ぶサクラ。そんなにあの青年に会いたいか…。

「サクラが可愛いのは私が一番に知っている。」

ゼウスが不思議な顔をした。

「兄さん、それってヤキモチ?」

ゼウスはサクラの元に駆けた。

私がヤキモチだと?

…そんなことはありえない。私は冥府の神で、サクラは人間だ。

あの日私がサクラを拾った。本来であれば共存などありえないのだ…。

「あれー?今日はお休みみたい。」

サクラが落胆した声をだした。見てみれば店はシャッターがおりている。どうやら休みのようだ。ホッとしたような何とも言えない感情だ。

「それなら仕方ないね。残念だけどまた来よう。」

「うん…。」

落ち込むサクラ。

「元気を出さないと連れてきてやらない。」

私の言葉でサクラは笑った。理由が何であれ、やはり笑顔でいてほしい。私はサクラの頭を撫でた。

「なぁに?」

「何でもない。」

「兄さんも、サクラちゃんも僕を忘れてない?」

ゼウスの言葉に私とサクラは笑った。

「忘れちゃったからこのままハデスとお買い物♪」

サクラが私の手を取る。

「あぁ。そうするとしよう。」

「えぇー。」

「あはは、嘘だよー♪」

ゼウスが一緒で良かったかもしれない。サクラとゼウスを見て思った。

私の胸のざわつきはいつの間にか消えていた。



「どうでした?地上は。」

メークが茶を淹れながら言った。

「どうもこうもない。せっかくの休みがあっという間に潰れてしまった。」

「そうでしたか。まぁ、たまには良いのでは?ゼウス様も喜んで帰られましたね。」

「あぁ。そうだな。ゼウスの嬉しそうな顔は幼き日以来かもしれない。」

メークは微笑み私に茶を出した。

「それで?布屋には行かれたのですか?」

「行ったが休みだった。」

サクラがロエンに会ったらさぞかし喜んだに違いない。ロエンがサクラに惹かれているのは間違いない。会ったらまた嬉しそうに笑うのだろう…。

クギはさしてあるがサクラが望めば仕方がないのだ。私は瞼が重たくなり眠りに落ちてしまった。メークが私に布を掛けたことにも気が付かなかった。

「今日はお疲れ様でした。ハロウィンパーティが楽しみですね。」



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