サクラ
今日は私の誕生日。13歳になった。ハデスに拾ってもらってから冥府で生活をしている。幼いときの記憶なんてないけど、いつだってハデスの後を付いて回り、死神さんたちに囲まれて育った。死神さんたちは人の形をしていたり、影だったりと色々。だけど、怖いと思ったことなんて一度もない。皆優しくて大好きなの。もちろんハデスが一番大好き。たまに意地悪だけど優しくて、私の誕生日に決まって地上の散歩へと連れていってくれる。
大好きなみんなに囲まれて、こうして誕生日を迎えることができて、私って幸せ者だなぁー。
「おや、サクラ。何やら嬉しそうだね。」
部屋に戻る途中、死神さんたちに話しかけられた。
「今日はね私の誕生日で、これからハデスとお散歩に行くの♪」
「おぉっと、そうだった!そうだった!はてさて、サクラは何歳になったのだ?」
「13歳だよ!」
「なんと、淑女に…と言いたいところだが、何も変わっとらんな。小さい時のままだ。」
「…似たようなことハデスにも言われた…。」
「わはは!散歩には十分気を付けてな。」
「ハデス様が一緒なら安心だ。」
死神さんたちに手をふり部屋へと続く廊下を歩く。
私ってそんなに成長してないのかな。死神さんたちにも言われちゃったし…。ハデスには3歳だって…。
はぁぁー。ため息だって出ちゃうんだから。
「何よ、そのため息。あなたって本当に色気も何もないんだから。」
そこに居たのはコウモリではなくて…
ポン!
「クレアス!」
クレアスは冥府にいるコウモリで、こうして綺麗な女の人の姿に変身できる。どっちが本当のクレアスかは分からないけど、恐らくどっちもクレアス。だって口の悪さが同じだもの。
「あなたのその綺麗な髪も透き通るような白い肌も勿体ないくらいの美少女なのに、なぜかひとつ足りないのよね。って聞いてるの?私珍しくあなたのこと褒めてたんだけど…。」
「…んー。私って成長してないから3歳のままなんだって。ハデスと死神さんたちに言われたー。」
「まぁ納得だわ。ちんちくりんのままね。」
クレアスはいつもこう。
「そりゃあクレアスに比べたらちんちくりんだろうけど、みんなして何なのよ、もぉー!」
「それより、今日誕生日でしょ?プレゼントがあるのよ。」
「…?プレゼント?」
「そうよ。だからあなたの部屋に行きましょ♪」
クレアスはさぁさぁっと私の背中を押す。
「ちょ、ちょっと待って!私これからハデスと地上の散歩に行くのよ?」
「そんなこと知ってるわよ。ほら、さっさと歩く!」
部屋に入るなりクレアスは手際よく私を着替えさせ、少しだけ化粧を施した。
「馬子にも衣装ってとこかしら?」
「それって変ってこと?」
「その逆よ。はい、プレゼント。」
ふわっと良い香りに包まれる。
「いい匂い。」
「香水よ。サクラにぴったりね。」
「いいの?ハデスが香水は大人になってからつけるものって言ってたの。」
「じゃあハデス様をドキッとさせてらっしゃい。13歳とは言え立派な女なんだから。」
「そうよね。3歳って言ったことを後悔させてやるわ。クレアス、ありがとう♪」
パタン
「捉え方が違うけど…まぁでも、あんな笑顔見たらさすがの神様でもまいっちゃうんじゃないかしら?」
クレアスはクスクスと笑いながらサクラの部屋を後にした。