異世界を救うまでの道のり。
どうやら、伊月楓は学校帰りの電車で寝てしまったらしい。
学校終わりの心地良い眠りの中。
不意に意識が覚醒し目を覚ます。自分の今の状況を把握するのに15秒程時間が掛かる。
電車の中だからだろうか。不意に焦りが生まれ、
慌てながらも、目を滑らせ外を確認する。
ーー「は?」ー
伊月楓は想像もしていなかった光景に呆気に取られる。
夜の景色を流し揺れながら、線路を走行している。
「え、暗っ!」
大声で言ってしまう。
2秒いや4秒程静寂が流れ、
伊月楓はこの場が電車内と思い出す。耳が顔が熱くなるのを感じる。
伊月楓はこの空気に耐えられなくなり、何事も無かったかの様に席に着く。
周りも何事も無かったかの様に静まり返っている。
不自然な程に静寂がこの場を支配している。
ただただ、電車の走行する音だけが響く。
伊月楓はさっきの大声といい、外の知らない空間に焦りに焦っている。
「待て待て、こんな風に焦って行動すると余計に現状が悪化に繋がるんだよ。
落ち着いて、現状把握しなくては。
5時20分に部活が終わり、5時48分の電車に乗って、
いやいや、これはさすがにおかしい。
6時ぐらいに電車に乗って、3時間ぐらい寝たくらいでこんなに暗くなるか?いや、なるよな ごめんな。」
と誰も聞こえない様な声でいつもの癖の一人コントを披露する。すぐさま伊月楓はこの状況の打開策を考える。
「これは次の駅で降りて、反対ホームの電車に乗るかしかないよな。ひとまず、次の駅に止まるまで
スマートフォンは持ってねぇーしな。久しぶりに炸裂するか。俺の特技九つの内の一つ
ハーレム妄想!」
電車の乗客は伊月楓以外にも10人程はいるが、
誰も喋らない、アナウンスも無いそれどころか物音一つもしない。不気味に感じる笑みを浮かべる(名前)達を乗せた電車が周りに民家も無い、外灯も無い、木が生茂る何も無い様な場所に入りかける。
「はぁ。最高だった。」
と小声で呟く伊月楓
「しかし、まだ駅つかねぇーのかよ。ハーレム妄想に入ってから絶対20分は経ったぞ。
てか本当に静かだな。ここに居る人みんな黙って俯いたままだし。
ここまで来たら、さすがにこぇーよ。」
他の乗客が居る事を忘れる程何も音がしない。
この電車の不気味な空気がさらに伊月楓の恐怖を掻き立てる。
「慌てても状況はか」
伊月楓の小声を誰かが妨げる。
今まで無かったアナウンスの声だった。
「次は暗澹ー 暗澹です。」
その声はあまりにも不気味で無機質な声だった。
「っくりしたー。お前俺の独り言を横から止めるなよ。ちょっと悲しい気持ちになるだろ。」
と誰にも聞こえない声で誰かに注意をする。
あの無機質なアナウンスが終わってから十秒程経ち、
電車のスピードが徐々に下がっていく。
嫌な音を立てながら、電車は止まりドアが開く。
外は完全に真っ暗だった。ドアから見える限り本当に何もない。いわゆる誰も使わない無人駅と言うやつだ。
「マジでにここで降りていいのか?最後まで乗るべきか?」
ドアが閉まりそうな雰囲気を感じる。
「決まった。」
伊月楓は電車から降りた。
降りた瞬間後ろからドアが閉まる音がする。
電車は機械的な音を立てながら去っていく。
「はぁ。次の電車待つか。」
伊月楓は反対ホームへ足を向ける。
すぐに気付く。
対反対ホームに、左右半分が割れた仮面を着けた二人の少女が立っていたーーー。