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秋物語り  作者: 大橋むつお
20/30

20:『拡散……!』

秋物語り2018・20

『拡散……!』        


 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗シホ 高階美花=呉美花サキ


 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名



 モニターを見つめたまま三人とも声が出なかった。


 わたしは、例の件は親にも言わなかった。学校も、わたしが何も言わないので、気を遣いながら静観している。

 そこに、麗から電話があった。渋谷のネットカフェMで待ってる。Mの前、電話でブースを確認してから、ネットカフェに入った。美花がブースから顔を出して、わたしを待ってくれていた。


「亜紀、ごめん!」


 麗の言葉から始まった。

 そいで、無言で開いたサイトに、なんと例の写真がアップロードされていた。そして数が増えていた。

「これ、雄貴の仕業だ!」

「分かってる。学校でも同じの見せられたから」


 わたしは、生指の部屋で起こったことを二人には話していなかった。でも、ネットでアップロードしているのには驚いた。


「リュウの写真は別として、こっちの写真は合成だ……体は、あたしだもん」

「麗、こんなの撮られてて気づかなかったの?」

「うん、これ、多分隠しカメラ。アングルから見て、観葉植物とか、飾り棚のとこ」

「じゃ、これは。このアングルは、スマホかカメラをまともに構えないと撮れないよ……」

「目つぶってたから、分からなかったんだと思う。ほんとにゴメン……」


――東京現役女子高生激写、都立○○高校か!?――


 キャプションは、それだけで、看板をぼかしたうちの学校の正面の写真が付いていた。わたしの顔には割り箸程度の黒い目隠しが付けられていたけど、両方とも見る人が見ればすぐに分かるシロモノだ。

「もう、消そうか」

 あまり見つめているわたしに、美花が気を遣って言った。

「いい、もうちょっと。なにか手がかりになりそうなものを……」

 男の顔は完全に写っていなかったが、体が部分的に写っている。それに脱ぎ散らかされた服が映っていた。

 そのか細い手がかりをメモして、自分でシャットダウンした。

「麗……」

「なに……?」

「……何でもない」

 言いたいことはあったけど、口にすれば、友だちとして取り返しの付かないことを言いそうで、わたしは無言のままネットカフェを出てバイトに行った。




 二日たって、今度は保健室に呼び出された。


 ドアをノックするときに管理責任者のシールで、そこの主が内木優奈先生だと分かった。


「例の件ですね」

 見当がついていたので、こちらから切り出した。可愛そうに、先生のほうが取り乱していた。

「いや、その、あの、女同士で、年も近いから、わたしが、その……」

「学校が、先生に押しつけたんですね。で、学校の要求はなんなんですか。特別推薦の取り消しですか。まさか、辞めろって言うんじゃないでしょうね」

「え、辞めるって?」

「自主退学。事実上の退学処分」

「いや、そんなんじゃないわ。しばらく学校を休んだらどうかって……」

「梅沢が、そう言ってるんですか」

「いえ、これは、わたし個人の意見。もう他の生徒の間でも評判になりかけてるから」

「……知ってます。こういうのは拡散するのが早いですから」

「学校が抗議したら、学校の写真は削除されたらしいんだけど」

「もう、遅いです。コピーされて、また、他のバカが流します」

「そういうものなの?」

「ハハハ、先生って、アマちゃんなんですね」

「いや、ごめんなさい。こういうことにはウトイもんで」

「いいえ、先生には感謝してます。あのとき、キッパリとわたしじゃないって、証言してくださって」

「女なら、誰でも分かることよ。それに水沢さん見てると、そんなことする子じゃないって、分かるもの」

 わたしは、この学校で、初めていい先生に会った。あの写真、ガールズバーに関しては本当だもの。

「わたし、学校は休みません。休んだら認めたようなもんです。指定校推薦取り消すようなら、訴えます。そう言っといてください」

「水沢さん……」

「こんなことで、負けたくないんです……」


 内木先生が、そっとハンカチを出した。


 頬に涙が伝っていることに、初めて気が付いた。

 


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