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秋物語り  作者: 大橋むつお
19/30

19:『いったいだれが……』

秋物語り2018・19

『いったいだれが……』        


 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗シホ 高階美花=呉美花サキ


 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名



 十数枚の写真が目の前にバサリと置かれた。大阪時代の写真だ。


 お店でお客さんの相手をしている写真……ロングやアップがいろいろ、どうやら隠し撮り。


「これ、わたしじゃりません」

 メイクをしているので、違うと言い張れば、通りそうなものばかりだった。

「わたしは、渋谷の本屋さんでバイトしてるんです」

「今はな。これは去年の夏の写真だ」

 生指の梅沢が、淡々と言う。

「去年は、家出して、一夏北海道の花屋さんにいました」

「それがなあ、送り主は『サトコやトコと呼ばれて、水沢亜紀さんはガールズバーで働いていました』と書いてきてるんだ」

「いったいだれが……?」


「こんなのもある」


 わたしの質問には答えずに、梅沢は、別の写真をばらまいた。

 その、十何枚かの写真は、私服で、ほとんどスッピンの写真ばかり。それに、例のサカスタワーホテルに吉岡さんと入る写真、フロントで二人で立っている写真、エレベーターに乗り込む写真が混じっていた。幸い吉岡さんの顔にはボカシがかけられている。


「これも、わたしじゃありません」


「こんなに、はっきり写っているのにか!?」

 わたしは、雨宮さんが、北海道の友だちに頼んで作ってくれた写真が頭にあった。あそこまで合成ができるんだ。これらの写真を合成と言い張れると思った。

「これは、良くできた合成写真です」

「そこまでシラを切るのかよ……」

「事実だからです」

「じゃ、これはどうなんだ!」


 そこに投げ出された、写真は、はっきり合成だと言い切れるものだけど、とんでもないものだった。


「これが一番問題なんだよ!」

 それは、わたしの首に差し替えられた、H本番中の写真だった。

 さすがに、顔が赤くなった。


「動揺したな」


「当たり前でしょ、合成とは言え、こんな写真を見せられて!」

「オレだって、こいつばかりは見せたくなかったよ。でも、お前がシラを切り通すから、見せざるを得なかった。さっさと白状しろ。たとえ一年前でも、こればかりは見逃しできねえよ!」

 気づくと、三年の生指主任の大久保まで混じって、シゲシゲと写真を見ている。合成とは言え、屈辱感でいっぱいになった。

「そんなに見ないでよ!」

「水沢、お前、何度もこういうことやってるんだな」

「どういう事よ!?」

「この三枚は表情が硬い。まだ慣れていないころの写真だ……ところが、この一枚は表情が違う。どうだ、この恍惚とした表情は」


 その顔は、自分でも分かる。クシャミをする寸前のわたしの顔だ。タキさんなんかがいっていた。トコのクシャミ顔は、ちょっとエロい。とかなんとか。


「これは、クシャミをする寸前の顔よ!」

「水沢、オレは写真部の顧問で、写真のテクニックには詳しいんだ。着衣の写真と違って、こういう写真は合成がむつかしいんだ。継ぎ目も見あたらんし、光の具合も自然なものだ」

「これって、もう完全なセクハラよ!」

「そんな言葉で、オレたちが怯むとでも思ってんのか!?」


 訴えてやる……その言葉が喉まで出かかった。でも、そんなことをしたら、反対証明もしなければならず、そんなことをすれば、北海道のウソもバレてしまう。

 わたしは、屈辱の一枚を見て、あることに気づいた。


――この体は……麗だ――


 写真の送り主の見当がついた。麗がシホとして、こういう関係になっていたのは雄貴しかいない。


「わたし、胸のこんなところにホクロなんかない、体の線も違う……なんだったら見せようか」

「そんなことまでせんでいい。ただ、お前が事実を認めればいいんだ」

「やってもいないことを……そんなこと認めたら、停学だけじゃ済まない。指定校推薦だって取り消しでしょ」

「当たり前だ、だからお前も必死で言い逃れようとしてるんだろう!」

「脱ぐ。担任の江角と、保健室の先生呼んで!」


 迷惑と困惑が、二人やってきた。


「水沢さん、そこまでやらなくったって……」

 保健室の、今年きたばかりの名前も忘れた女先生が言った。

「学校に縛られんのゴメンなんです。だから、さっさとケリをつけたいの……」

 わたしは上着とチョッキを脱ぐと、ブラウスのボタンに手を掛けた……。


「あの体は、水沢じゃ、ありませんね」


「ホクロもないし……」

 迷惑と困惑の答えだった。

「そ、そんな。ホクロなんていくらでも合成できる!」

「女同士だから、分かるの。亜紀の言うとおり体の線がまるで違うの」

「養護教諭の目で見ても、はっきり言えます。あの体は別人です」

「あんたたち、大変なことさせてくれたわね。保護者に訴えられたら、ただじゃ済まないわよ」


 そう、ただじゃ済まなかった……。


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