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秋物語り  作者: 大橋むつお
18/30

18:『タレコミ……』

秋物語り・18

『タレコミ……』        


 主な人物:水沢亜紀(サトコ:縮めてトコ=わたし) 杉井麗シホ 高階美花=呉美花サキ


 ※( )内は、大阪のガールズバーのころの源氏名



 

 いきなりドアが開いて警備員のオジサンが二人入ってきた。


「女子高生は、どこにいる?」

 オチケンの部室のみんなが固まった。運悪く、わたしの他は、秋元君をはじめ、男子学生ばかり。

「なんですか、いきなり」

「いや、オチケンの部室で女子高生を連れ込んで、いかがわしいことをやってるって、通報があったんだ」

「ここにいるのは、みんなうちの学生かね?」


 一瞬の動揺が、みんなの顔に走った。すかさず年かさの警備員さんが、わたしに目を付けた。


「わたし、東都短大の学生で、オチケンの交流に来てます」

 思わず去年のウソ八百が口をついて出た。

「うーん、高校生には見えないが……」

 多分警察のOBあたりの警備員さんなのだろう。目つきが険しい。

「これ、学生証です」

 言われもしないのに、わたしは去年のままに持っていた学生証を出した。

「じゃ、ガセですね」

 若い方の警備員さんが納得して、帰ろうとした。 

「氷川聡子さんね……東都短大は、どこの駅で降りるんだね?」

「C線、S駅の4番出口です」

「生年月日は?」

「平成〇年5月15日です」

 これは、自分の生年月日に一年を足しただけのもの。去年東京を麗と美花の三人でフケルときに何度も練習した。

「干支は?」

「戌年です。警察じゃないんだから、これ以上は答えません!」

 正体を知っているオチケンの男子学生の方が動揺しているのだから、しつこいんだ。


 年かさの方が携帯をとりだした。


「もしもし……」

 なんと、東都短大に問い合わせし始めた。

「まだ、疑います?」

「いや、こいつは本物だ」

「こいつ呼ばわりはないでしょ!」

 秋元君が、つっかかった。案外……ってか、ほんとに怒ってる。

「いや、すまん。こいつってのは学生証のことだよ」

「じゃ、わたしも正直に言います」

 年かさの目が、また光った。

「わたし、この秋元君のレコ。で、わたしたちが本番までいかないように、あとの二人が監視役。ってか、あわよくば合コンにしたいの見え見えなんですけど。個人的にHの手前ぐらいやってもいいと思いません? もう高校生じゃないんだから、学内でやっていい線は心得てますから」

「分かった分かった、君たちには学内自治の権利があるからね。じゃ、行こう」

「その前に、そんな虚偽のタレコミやった奴教えてもらえませんか?」

「文学部の学生と言っていたが、どうもそれも怪しいな。顔は覚えてるから、見たら注意しとくよ」


 で、ケリになった。

 

「亜紀ちゃん、なかなかやる~!」

 雫さんが、ドリンクとスナックの山とお腹を抱えて入ってきた。


 わたしは、そのタレコミが気になって、明くる日の昼休み、麗と美花の三人でカレーうどんを食べながら話し合った。


「その場は、笑い話で終わったけどさ、わたし、なんかヤな予感がするんだ」

「ひょっとして、大阪の頃のこと?」

 麗が滝を逆さにしたようにうどんを吸い込みながら(これが、この子の見た目に合わない芸)言った。

「もう、とっくに終わったつもりでいたのにね」

 美花は、出汁を残したまま、箸を置いた。それを当たり前のように、麗がすする。真剣なのか楽しんでんのか、こっちの身にもなれよな。その時校内放送が流れた。


――三年A組、水沢亜紀、すぐに生徒指導室まで来なさい。くり返します……――


「なんだろ?」


 美花が、ヘタレ八の字眉になって、本気で心配な顔をした。麗も、ドンブリを置いて、マジな目をわたしに向ける。


 大波乱の予感……。


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