試作8話
おびき寄せる事が出来るようになって、核や資源の回収効率が上がった。
製作できる道具も増え、効率も上がっていく。
武器や弾薬の余裕も増えており、戦闘における不安は少しずつ解消されていった。
持ち込んだ残骸を資材に変換していく工場のおかげだった。
なんでも、というわけでないようだが、持ち込んだゴミを有効利用できる形に仕上げてくれる。
設計図さえあれば、それを形にする事も出来るらしい。
そこまでいかなくても、製造したいものの現物や映像資料などがあれば、それに似せたものは作れるらしい。
もちろん、本来のものほどの性能を引き出すことは出来ないようだが。
なお、今現在は蓄えられてる情報を元に色々なものを作り出してくれている。
作れる範囲はその中に限定されてしまっていた。
とはいえ、それでもかなり膨大な物品の製作が可能なので、特に不便というわけではない。
そういった中にはかなり便利そうなものもある。
「……出来たね」
製造工場から出てきたものを手に取る。
満足げな笑みを浮かべながら仕上がったものを見つめる。
『それが目的だったのか?』
「ああ。
製造出来る物の中にあったんで、作ってみたんだ」
工場(と呼ばれる機械)に内蔵されてた製作可能物品一覧は膨大で、その全てを見る事は不可能に近い。
だが、求める物を検索する機能がついてるので絞り込みをかける事は可能だった。
その中に、今現在欲しい物に合致する物があった。
仕様や性能も記載してあり、本当にその通りの能力を持ってるならば十分に役立つと思えた。
物は試しと作ってみて、出来上がったのが今である。
実際にそれがどれだけ役立つか分からない。
もし役に立たない程劣悪なものだったら資源を無駄にした事になる。
ゴミとして再度資源にすれば良いのだが、その場合多少の目減りは覚悟しなくてはならない。
資源として放り込んだものが全部利用されるわけではない。
再生する事に幾らか量が目減りしていくようで、資源の完全な再利用というわけにはいかなかった。
それは分かっているのだが、実際に手にとってみなければ良し悪しも判断出来ない。
なので、試作として作ってみた。
無駄は覚悟の上である。
そういった試行錯誤が繰り返されていた。
作れる種類は数多いが、どれがどれだけ有用なのか分からない。
それらが説明通りの性能を持ってるのか、持っていたとしても操作する事が出来るのかどうか。
確かめるためには、一度作ってみるしかなかった。
概ねそれらは問題無く作動し、性能も満足のいくものであった。
製作可能物品に記載された性能や能力に、誇大広告のようなものはない。
今回作った物も望んだ性能を発揮してくれた。
動力付きの装甲服。
SF作品などに出てくるパワードスーツやパワードアーマーなどと呼ばれるもの。
それが製作したものだった。
人間が身につける事が出来る鎧である。
重量も結構なものだが、衣服上の人工筋肉などにより動かすのに支障はない。
ごく普通に動く事が出来るし、増強された筋力は重量があり反動も大きい強力な火器を使用可能とする。
接近戦なっても、この強化された力があれば相手に対して有利に戦闘が出来るだろう。
防御力だけでなく戦闘力も強化されていた。
これを作るためにかなりの資源を消費したが、それだけの価値はあった。
臨んだ戦闘において、それは遺憾なく威力を見せつけてくれた。
いつもより多くの武器を持ち運んでも苦にならない。
筋力の強化による俊敏さもあって、相手の動きを軽々よける事が出来る。
装甲のおかげで、攻撃も防ぐ事が出来た。
何より、接近されても安全性を確保出来るのがありがたい。
心理的な圧迫や不安が払拭できる。
それが精神的な余裕となり、落ち着いて対処する土台となっていく。
(まあ、燃料を使うのはしょうがないか)
欠点と言えばこれがそれになるだろうか。
動力を用いてるので、どうしても燃料を消費する。
車両だけでなく、これのために核を確保せねばならなくなる。
それがきついと言えばきつい。
戦闘が楽になった事で核を入手する事もそれほど苦ではなくなってるが、それでも危険をこなす事に変わりはない。
安全性は増したが、その為に戦闘回数を増やさねばならないなら、どこか本末転倒にも思える。
(必要経費って事なんだろうけど)
より大きな何かを手に入れるために増える、ささやかな負担。
そう思って納得するしかなかった。
(でも、次にあれを作ればもう少し楽になるだろうし)
そう考えて気を紛らわしていく。
新たな装備である動力装甲服により、装備の幅が広がる。
今までのように、人間が使うことを前提とした武器だけを使わなくても良い。
物品一覧にはそういった武器も掲載されている。
それらの幾つかを作りだす事を考えていく。
(でも、その前に……)
何かを作るためには材料を確保せねばならない。
その為にも残骸を大量に集めねばならない。
(まずは荷台を拡張しないと駄目だな)
運搬量を増やさないと効率が悪い。
新しい車両を手に入れるか、さもなくば作るか。
なかなかに悩ましい問題だった。
もう少しこんな調子の地味な話が続く……かもしれない。