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試作2話

 車両を走らせていると、助手席に先ほどの立体映像があらわれた。

『道を案内する』

「ありがたいね」

 いきなりあらわれた事への驚きを隠して返事をし、言われた通りに車を動かしていく。

 通路はほとんど一本道で、道に迷う事は無い。

 脇道は時折あらわれるが、そちらに誘導される事はない。

「あっちは駄目なの?」

『問題はないが先に燃料を手に入れてもらいたい』

 何事も順番があるようだった。

 拒否する理由はないので、言われた通りに車を移動させていく。

 今の所、重要な足である。

 動かなくなったら面倒な事になりそうだ。

「ついでに食べる物も手に入れたいんだけど」

『燃料を手に入れてから、そちらに向かう予定だ』

「なるほど」

 そつが無いようで助かる。

「あと、トイレとかも教えて欲しいんだが」

『……居住用の場所を幾つかおさえてある。

 後でそちらを案内する』

 ぬかりは無いようだった。



 言われた通りに車を走らせること数十分。

 燃料のある場所に到着し、それを回収していく。

 ガソリンのような液体のものではなく、電池のようなものが車両を動かすものらしい。

 かつての自動車のバッテリーと同じくらいの大きさである。

 これ一つで、車両を数百キロほど走行させる事が出来るという。

 それらを幾つか荷台にのせて移動を再開する。

「で、食料がある所までどれくらいなんだ?」

『距離にして三百キロほど。

 この速度なら二時間半もあれば到着するだろう』

「……もっと近くに無いのかよ」

『この近隣で最短の場所にあるのが、これから向かう場所だ』

「…………」

 あまりにも遠い。

 なんでそんなに離れてるのか分からない。

 が、言われた通りに動くしかない。

 そこにしか無いなら、そこまで行くしかないのだから。



 燃料が置いてあった場所もそうだが、食料もシャッターで区切られた小部屋の中に蓄えられていた。

 いったい誰がどうやって備蓄したのか分からないが、結構な量がある。

 荷台を埋めてもまだ余るほどに。

 とりあえず持ち運べるだけ持って外に出て、居住のための場所へと移動する。

 そこまでの距離も数百キロほど。

 移動というよりは旅行と言った方が良い。

「なんでこんなに離れてるんだ?」

 疑問とモンクが口をつく。

 それに対して立体映像は、

『現在、備蓄があるのが先ほどの場所しかなかった』

と答えた。

「じゃあ、前はもっと近くに固まってたのか?」

『そうだ。

 居住区近くに必要な物資が存在した』

「それはどうなったんだよ」

『消費され、現在消滅している』

「補充は?」

『されてない』

「なんで?」

『消費するべき者達がいない』

「ちょっと待て」

 聞き捨てならない言葉だった。

「前は、誰かがいたんだよな?

 そいつらはどうなったんだ?」

『現在、保護されている』

「ん……?」

 不可解な言葉だった。

「保護されてるって、じゃあ、別の場所にいるのか?

 安全な状態で」

『安全ではある。

 少なくとも生命の存続の観点から言えば』

「はっきりしねえな。

 もっと正確に言えよ」

 とにかく分からない事だらけである。

 今は何にしても情報が必要だった。



『保護されてるというのは、彼らなりの表現を使った場合の話だ。

 実態は、幽閉や監禁と言える』

 その言葉に慄然とする。

『現在、この空間に存在する大多数がそのような状態にて管理されている。

 そのため、生命の保護・存続という面で見れば問題は無いと言える』

「でも、自由はないと」

『己の思うままに活動するという意味では、全く自由ではない。

 ただ存在してるだけだ』

 それが今現在、人が置かれた状態であるらしい。

『この状態が好ましいものだとは考えられない。

 よって、我は接触できる全ての者達に保護下におかれないよう促している』

 一気に話が物騒になっていった。

「その、保護下におかれるってのもよく分からないけど、そういう事をしてる連中を止める事は出来ないのか?」

『我々の権限を逸脱している。

 直接の阻止は不可能に等しい』

「じゃあ、俺達は……」

『自らの手で自分達の自由を確保してもらいたい。

 可能な限りの情報は提供する』

「それだけか?」

『我の権限で出来るのはそれが最大限である』

 無いよりはマシだが、何とも頼りない事である。



「じゃあ、そいつら────保護とかをしようとしてる連中を撃退するにはどうすりゃいいんだ」

 一番気がかりな部分だった。

 保護しようとしてるのが何者なのかは分からない。

 だが、危険である事は感じている。

「対抗するにも、手段がないとどうしようもねえぞ」

 どんな相手なのか分からないが、素手でどうにかなるとは思えない。

「やり合わなくちゃならないんなら武器とかも必要になるだろ。

 それはどうすんだ?」

『備蓄されてるものがある。

 それを用いてもらいたい』

「おお、ちゃんとあるんだ」

『防衛用に用意された物がある。

 居住区を案内してから向かう予定だ』

「今すぐってわけにはいかないのか?」

『今から向かっても到着はかなり遅くなる。

 先に食事や休息を済ます事を提案する』

「なるほど」

 それなら仕方がない。

 素直に居住区に向かう事にした。

「でも、追跡とか大丈夫なのか?」

『この速度で移動してるなら、即座に追いつかれる事は無い。

 食事と睡眠をとる時間は十分にある』

「ありがたいね」

 素直にそう思えた。

 数時間に及ぶ運転を強いられるのだから、それくらいの余裕は欲しかった。

「出来れば、あんたが運転をしてくれると助かるんだが」

『その権限は無い。

 実行不可能だ』

「左様ですか」

 期待はしてなかったが、少々悲しくなった。

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