05・NAISEI嫌いのあなたに捧ぐ説明回という名の俺のでんぢゃらす人生 Aパート
あの後、俺の新妹となったミッチーがぐぅ、とお腹を鳴らしたので、会場から食べ物を貰って来て医務室でぷち宴会となった。
子供達はすぐに打ち解けてけらけらと笑いの絶えない夜となった。先生も「よかったよ~」と泣き笑いな顔で喜んでくれたし(その後、他の子供達を放置していた事実に気が付き慌てて国王の後を追っ掛けていたが)副作用も記憶の齟齬も出ていなかったようで、万事上手くいったと言っていいかな?
まぁ、俺も他の子供たちを放置した事に負い目はあったが、それなりに楽しんでくれていたようなので結果オーライと思うことにした。
その後数日を城の中で賓客として過ごした少女達であったが、召喚された本来の目的は言ってしまえば《防人》である。つまりは王都を離れ最前線へと出立しなければならない。
そして、その最前線とは、
そう。俺の領地である通称【勇者領】である。
本来なら新たな勇者達に対して誠意を示す為に、王都で国を挙げて武器、糧食、あるいは初期の訓練等融通をするのが筋というものである。しかし、それがままならない理由というものがこの国にはあるのだった。
この「ヨソノランド王国」のあるヨソノ大陸は大別して四つの地域に分かれている。(ヨソノの意味は「他所の」ではなく「四園」である)
1つは、「ヨソノランド王国」を含む中央地域。中央とは言っても、人類の居住可能域としては最北端に当たる。ある意味最前線の地域で出生率も高いが、死亡率も高いという入れ替わりの激しい地区だ。国としては「ヨソノランド王国」という大国があるのみ。土地の半分近くが山岳地帯で山岳地帯に鉱山妖精や一部獣人の集落があるだけで、他の広大な盆地が人類の居住地域である。山脈の切れ目が北正面にありその地域が北の魔王領と繋がっている。温暖湿潤で盆地の割には熱が籠る程気温が高くならないのが救いか? 農耕地としてはその盆地内と山岳の一部を棚田として活用し、場所によって作物の植え付けを調整している為糧食に関しては比較的裕福である。
2つ目が、その通称「魔王領」である。とはいえ、実際の魔王の支配する土地と言う訳でも無いが。イメージとしてはユーラシア大陸の中でのロシアの突出して広いというイメージだろうか? 海岸線の形は全く違うが。広大な土地にぽつん、ぽつん、と魔族の城塞都市があるというイメージをしてもらえば間違いではない。土地の大半は赤茶けた荒野であり、農耕には向かない上、ゴブリン、オーク、オーガなどの魔物や、それを餌にする大型魔獣が闊歩している為、単独での行動には向かない。正直、勇者といえども、48人だけで魔王を倒してくるとかは不可能に近い、旅をするには厳しい土地だ。
3つ目は、中央地域の南西にある「戦乱の帝国群」である。「ボーラ連邦国家群」という城塞都市国家群と、「ガロマン帝国」「ズォーダ帝国」「バティス帝国」の三帝国が四つ巴の戦争を行っている地域である。元々は統一された帝国であったものが、旧帝国の三皇子がそれぞれ勝手に独立して帝国を起こしたのだという。中央にある「大森林」を間に挟んで現在もにらみ合いが続いているものの、表立っての衝突は現在行われていない。「ボーラ連邦国家群」はその三帝国に翻弄されているかというと、さに非ず。それぞれの小国が経済力と知恵で完全に凌駕しているそうだ。ま、脳筋の三帝国と知恵と経済の小都市国家という処か?
4つ目が、南東地区の「ナンカン王国」である。【第一次異世界勇者召喚の儀】の生き残りの子孫が起こした国で、この大陸で最大の国力を持つ安定した国である。国土の大半が標高2000m~3000m以上で高地でありながら、気候は日本に近く、酸素が薄い以外は過ごしやすい土地であるとのこと。独自に発展した「米」や「芋」「玉蜀黍」等が栽培されている。更には漁業が発展しており流通ルートの確保により、国内全域に魚介類が流通しているとのこと。更には文化水準も高く義務教育や国民皆保険制度などが揃っており、正直「ヨソノランド王国」なんかより余程食指が動くんですけど。
先の【第四次異世界勇者召喚の儀】に先立って「ヨソノランド王国」は、周辺各国に対し、「戦時国債」を発行しこれを引き受けて貰った。その額、実に国家予算の40倍となる1兆7千億ガバス。(日本円で34兆円) 内訳は、「ナンカン王国」「ボーラ連邦国家群」がそれぞれ40%ずつと、「ガロマン帝国」「ズォーダ帝国」が各10%「バティス帝国」は脳筋らしく、投資活動に否定的であった為これに参加していない。
しかし、この金額は亜人を含めてようやく1千万人の人口に達する国のする借金としては完全にオーバーフローである。これを年7%で借り受け、魔王領に侵攻し、返済は魔王領から出土する鉱物資源と土地、魔王国の人民とその財産で支払うというとっても堅実(笑)な方法で返済するという算段であった。
当然、勇者達を前面に押し出しての電撃侵攻で少なくとも魔王領の半分は完全に自分たちの物にするつもりでいたのだ。
しかし、結局この作戦は魔王領に入った直後の段階であっけなく頓挫した。
その理由は、突発的に発生した魔物たちのパンデミック(大量ポップ)である。