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幸せ♡ロリコンえんぱいあ♡  作者: おまわりさ~ん こいつです~
第二章 8年生の秘めた望み
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SS 天才! 毒嶋骨継博士の異世界人体実験ショー!

 以前別の小説として投稿していた物ですが、SSとして再掲載させていただきます。


 春雷、という奴だろうか。季節の割に暖かい気温の所為か、大気が不安定でこの半時程はそこかしこからゴロゴロと雷が鳴っている。様々なハーブを栽培している庭園は既に水浸しで何株かは諦める必要もあるだろう。


 まあ、それは良い。良くはないが、今年の作付けは既に半ば諦めていた処である。


 それよりも、漸く昨年摘み取ったエンゼルトランペットの葉からエキスを抽出し終えた。


「トゥッサン! 悪いが茶を二杯所望する!」


 某は、研究室の外に居る家令を呼び、紅茶を淹れさせる。一杯は自身の喉を潤す為、いま一つは、研究に協力して貰っているうら若き少女の労に報いる為。


「さて、それでは、待ち疲れたであろう。茶でも飲んで一服しようではないか」


 そう、語りかけた少女は、バドガールのぴったりとした服を着たまま、両手、両足を鉄の鎖に繋がれて壁に拘束されている。半端に鎖の間が開いている所為で、股がオープンして、短いスカートから下着が見えているのが残念さを誘う。


「ドクター毒嶋! どーしてわたしはこんな格好で拘束されているのですか~?」


 ふむ、二時間近く拘束されたままで今更それを聞いてくるのか? まあ、奴隷市場で購入した時からおつむの緩い少女だとは思っていたが、この、毒嶋骨継(ぶすじまほねつぐ)の実験動物として科学の発展に寄与することが出来る事を誇りに思うべきなのだ。


「ミメットくん。先般も語った事だがもう覚えていないのかね?」


 その少女、ミメット=クッコローセは、一年前にガロマン帝国(この国)と戦争になったボラ連邦国家群の騎士として戦争に参加していた姫殿下の親衛隊であったそうだが、大敗を喫したスカラベク高原での会戦で捕虜となったあげく、実家から身代金支払いを拒絶され、泣く泣く奴隷落ちした悲しい身の上の少女である。


 縁あって【一の市】の奴隷競売で某が落札したのであるが、期待していた家事、料理、雑用と全てが壊滅的に駄目であった。唯一の美点が爆乳と頑丈な事という、年頃の娘としては、それはどうか? というスペックの持ち主であったのだ。


 おまけに、後から調べたスキルにも、剣技すら無く、盾技がLV1、頑強LV2の二つだけという。おまけに体力と精神力こそ過剰な他は、知力、筋力、時の運、全てが人並み以下という非常に残念なステータスで、これを相場の一割増しで購入するという失態を演じた某は、後からトゥッサンにこっぴどく無駄遣いを窘められるという屈辱を受けたのである。


「お館様。お茶が入りましてございます。本日の茶葉はスリランカ産のダージリン。セカンドフラッシュでございます。お茶請けにはチーズサンドとバタークッキーをジャムでどうぞ」


「ほう。良くも未だ残っていたものだな」


「はい。ですが、これが最後の茶葉となりました。後は、こちらの世界の茶葉を焙煎して疑似紅茶にするしかないかと存じます」


「うむ、寂しいことだな」


「ええ、本当に」


 二人してしみじみと遠き故郷に思いを馳せていると、どうやら放置プレイに飽きたのか、生意気にもミメットくんが


「お願い! 無視しないで! かまって~!」


 と懇願してきた。全く、このかまってちゃんめが。

 




 某が、屋敷ごとこの異世界に転移したのは、その一年程前である。帝


都ガルデンベルクにほど近い衛星街(サテライトシティ)であるクスコの街の郊外、「迷いの森」の出口付近に突如として現れた大仰な洋館は、当時の代官をして、


「すわ! 一夜城が現れた!」


 と、兵士を派遣してくる程の大事件であったと記憶されている。


 比較的高い煉瓦作りの塀に囲まれた我が屋敷は、この世界ではちょっとお目に掛かれない程のセキュリティで守られていた事もあって、何やら最初は悪の魔導士(ウォーロック)が城塞を造り攻めて来た! と言われたものであったが、屋敷内の薬草を使った病気治療を代官の息子に施したところ、大変感謝されて今度は我が街の聖者呼ばわりである。


 いずれにしても、それ以来この街にて一定の立ち位置を築き上げた某は、偶に医者の真似事をしながらも、我がライフワークを満喫するための準備を続けて来た。


 幸いにも、屋敷ごとの転移によって、我が財産の大半を所有したままこの世界に足場を築くことが出来たのは僥倖であった。この屋敷は、塀内の敷地だけで約180エーカーあり、約2500種類のハーブ等を栽培している。他にも、科学薬品等の類をそれこそちょっとした調剤薬局が出来る程溜め込んだ薬品倉庫、世界中の薬学の知識を集めた書庫、そして地下の実験室と、いくらでも研究に没頭できる環境がある。まして、この世界には薬事法など存在しない。


 正に、夢の研究ライフを満喫できる世界である。そして、奴隷制度。この世界では人体実験ですら合法とは言わないが、咎め立てされる言われも無いという某のような研究バカにはこれ以上無い良い環境下で研究ができるのである。


 最も某はバカではない。IQは本郷猛を上回る640。市井にありながら、日本では数々の特許を取得し薬学界の麒麟児と謳われた程の存在であった。最近は第二次大戦期の各国軍での人体実験の記録を収集したり、真っ当な薬学のみならず、オカルトにまでその幅を広げ、文献を買いあさるような生活をしていた。


 御年78の齢を重ねて、なお寿命という限界点に達したかと我が境遇を嘆く直前、なんと、異世界転移という自身でも信じられない幸運に恵まれて新たな研究人生をリ スタートさせたのである。難点は、189cmという無駄に高い身長と、半ば滅びかけている頭頂部の毛根であろうか。それでも、白髪の偉丈夫という外見は見る者には頼もしき大賢者に見えるらしく、街へ出れば「先生様、先生様」と呼ばれ頼りにされる。この歳で人に頼られることの何とも愉悦を感じる事よ。


 某は今の生活を満喫しておる。




「うわーん! お願いですから、いい加減はーなーしーてーっ!!」


 

 もはやギャン泣きとなったミメットくんに対して、


「ああ、済まなかった。取りあえずお茶でもどうかね? 君の好きな砂糖たっぷりの甘いお茶だよ」


 と、努めて優しく声を掛ける。甘い物に目の無い彼女は、予想通り


「わーい! ドクター大好きー」


 と、思ってもいない事を某に告げる。まったく、某の所に来ていなければ一欠けのパンと引き換えに毎夜股を開くような生活をしていたのではないか? と心配になるではないか。


 もっとも、そんな生活を送っていた方が幾分マシな人生だったかも知れんがな。うひひ。


 こくこくごっきゅんとロイヤルコペンハーゲンのカップから紅茶を飲むミメットくん。


 もう少し、人から出された物に対する警戒心という物を育まないといずれ身の破滅を招くぞ。


 もう遅いとも言う。




「あ、あで? にゃんだかふにゃふにゃしますよ~ ドクター?」


「ふっふっふ。今、君の飲んだ茶には先程抽出したばかりのエンゼルトランペット(チョウセンアサガオ)のエキスを混入してある。この成分は、まず短時間で意識が乱れはじめ、次いで恐ろしい幻覚を生じ、遂には思考が完全に停止する」


「え~? どうしてそんなおしょろちいもにょをちゅくっていりゅにょでちか?」


 うむ、効いてきたようだな。


「この成分は人間を完全に支配して言う通りに動くロボットにする『ゾンビメイカー』という薬の主成分となるのだ。某は、その薬効を更に調節してこちらの人間に丁度良いチューニングをしようと試みておったのだが、どうにも実験に相応しいモルモットが不足しておってな」


 などと説明していたものの、どうやら完全に機能停止してしまったようである。


 こうなってしまえば、説明など意味の無いものになってしまう。あとは、只命令に対して無意識下で従うだけの人間ロボとなってしまうのだ。


 但し、天然の幻覚剤としては優秀であるが、この成分は多く与えすぎると一発で死んでしまう。過去にはこの葉を直接食べて死んだ者が多くいた程である。精々2~3枚の葉を煎じて飲む程度が限界である。それとて、度が過ぎれば危ういのである。まぁ、良い子の皆は某の真似などしないようにすることだ。




「ふにゃ~」


 どうやら完全に落ちたようであるな。


「では、忠誠の証として、某に接吻せよ」


 と、言いつつ手の甲を差し出す。普段なら絶対にしないような事を喜んでするようになるのがこの薬効の肝である。


 ぶっちゅ~っ


 な、なんと、手の甲をガン無視して、某の唇に吸い付いてきおった。


 れろれろっ!


 あろうことか、舌まで入れてきて某の口内を侵食して来おった。


「ふへへへ。どくた~、だぁーいすきぃ~」


 年頃の娘が出してはいけない下卑た薄ら笑いをしながら更に某の体を求めてべろべろ舐めてくる。


 その舌が唇を離れ、某のズボンにまで手を掛けんとしている。




 春の目覚め~




 数十年ぶりに某の体を流れるリビドーが海綿体を熱くさせ、遂にはあの青春の日々を思い起させるあの熱く燃え滾る……





 すぱこーん!

 すぱこーん!




「お館様。お戯れも大概になさいませ。ミメット様も大概にいたしませんと、女を下げますぞ!」



 トゥッサンのハリ扇が某とミメットくんの後頭部に炸裂した。


 若い頃と違うのだから、ダメージが体の芯まで通ってしまうのである。


 某はその場に蹲り、痛撃に必死で耐えていた。


 再燃した「春」は、もはやどこかへと去っていた。

 

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