12・血のめぐり~ず~む~のめかに~ず~む~ Aパート
その後も、シガーを交えてプリキ○ア談義に花を咲かせていることしばし、みきが戻って来て俺に耳打ちした。
「御主人様。例のお医者様の御一行が到着されました。応接室にお通ししておきましたが、直ぐにお会いになられますか?」
どうやら例のお客様がいらしたようである。確か、80過ぎの御老人の精神科医との事だったか。色々と御助言頂ければ幸いである。
「直ぐに会おう。御一人でいらしたのか?」
「いえ、この街に居を構えるおつもりとの事でご家令と奴隷を一名お連れでした。住居を構える場所についてもご相談したいとの事でしたので」
ふむ。要請を受け入れて頂けたのなら重畳である。この世界での先達にして貴重な現代医学の権威である。ぜひとも協力を取り付けたい相手である。ミッチーの件もそうだが、生き残りの勇者たちのケアや、こちらの世界の人でも彼の治療を必要としている人は少なくない。加えて、先に受け取った資料によれば、薬学に対しても権威と言っていい程の知識と経験を持つという。こちらにある材料で地球の薬品を再現できれば、魔法と併せて救える人も増えようというものである。
みきに案内されて応接室にやって来た俺とシガー、桜は、扉を開けた処で非常に困惑した。
「おおおぅっふ! ドクター! 他所様のお家でこの仕打ちは流石にないと思うのですよっ!」
「やかましいっ! ばかすかと出された茶菓子を大量消費しおって! 交渉の前に無駄に借りを作るような真似をするなと事前に言い含めておっただろうが!」
そこには、亀甲縛りにされた金髪巨乳のバドガールと、それを折檻している15、6程度の少年がおりました。
「お館様。どうやら領主殿がお見えですぞ」
背後に控えていた地味な初老の男が二人を窘めている。この人が例の医師? いや、精々5、60歳位で年齢が合わないし、どうみても使用人の風情である? とはいえ、このはっちゃけた二人が医師?
「ええと、失礼、部屋を間違えました」
「いいえ、間違えておりません。こちらにおわすお方が件のお医者様でいらっしゃいます」
そう、みきが紹介したのが、先の少年であった。
☆
精神科医 薬学博士
毒島 骨継
「大変お見苦しい所をお見せしました」
「ああ、いえ、楽にして下さいませ」
名刺を渡された俺達は、狐に化かされたような顔をしていたのであろう。
「こう見えてなかなかの名医じゃよ。我が国に流行しかかっていた流行り病を初期の段階で撲滅してくれたり、先年のドラゴン禍によって被害を受けた者たちの精神的ケアをしてもらったりとなかなかの芸達者振りであったの。その報酬として若返りの霊薬を授けたのであるが、その後自力で量産してしまったようでの。気がついたらこのような若者の姿になっておったのじゃ」
この中で唯一知己のあったシガーが絡繰りを説明してくれた。
「陛下に頂いた霊薬は非常に効果的でありましたぞ。最早棺桶に足を突っ込んでいた某がまさかかような若人の姿を取り戻せる日が来ようとは、お陰様で後100年は医学に貢献出来ようと言う物。正に亡命した甲斐があったというものですな。がっはっは」
可愛らしい美少年の姿で年寄じみた言葉を吐くのだから違和感半端ねー。なんといったらいいのか? ショタじじい? 誰得なキャラなんだか。
「それで、先生はこの街に居を構えたいとお聞きしましたが?」
「ふむ。それじゃよ。どうせ研究するのなら、人類の発展の中心地でというのが某のモットーであるからして。ならばこれからはこのブレイブラントであろうとのシガー陛下からの御助言を賜ったのでな。考えてみれば、陛下の都も居心地は良かったが残念ながら枯れた大地では素材集めに関してはいささか不利な点も多くあっての。それならば足を伸ばせばヨソノランド領まで採取に行かれるこの地の方が森の実りに期待できるし、なんと言っても先年の戦役で魔物由来の素材はだぶついておるのであろう? この地でなら出来る事が多いのじゃよ」
成程、そういった地理的な要因は確かにあるやも知れない。
「それで、実はこちらにも先生に見て頂きたい患者がいるのですが……」
そう言ってミッチーの件をなるべく詳細まで説明して見解を聞いてみた。




