07・いかに精霊といってもわが身のかわゆさはオンリーワンのようで Bパート
「ほぉ、つまり、そなたらは朕の領土と民を蹂躙し我が物とせんとする者共の先兵であると、そう申すのか?」
俺達四人の生き残り勇者は額に青筋立てた魔王と謁見しこちらの戦力の事情を説明していた。魔王の陣地に陣幕を飾っただけの大本営にて地べたに座り、今はスーパー正座タイムである。
「しらなかったんですよ~ 私達、魔族の人が人間の国を侵略しているとしか聞いていなかったのです~」
既に限界を超えている桜が足の痺れに耐えながら弁解している。
「たわけめっ! 即位して120年。これまで只の一度も侵略行為を侵しておらんことが朕の為政の誇りだというに、言うに事欠いて今時手垢の付いた魔族脅威論者の言に惑わされて平和の守り手たる朕の国に侵攻してくるなぞ正気の沙汰にも思えんぞ!」
「陛下、かくなる上は人族なぞ滅ぼしてくれましょうぞ!」
速水奨みたいな渋い声の将軍? みたいな角付魔族の人がいきりたち魔王に進言する。
「阿呆! それでは人族そのものの行動原理じゃ! 我等ドゥワイアン族はそのような野蛮な民族とは違うという事を見せつけてやればよいのだ!」
「あの~ お取込み中申し訳ないんですが、今回の侵攻軍は事実上壊滅状態ですし、実はほっといても人間の国は既に大ダメージを受けています。わざわざ逆侵攻するまでもなく早晩侵攻計画をした『ヨソノランド』は滅亡しますし、周辺の国も大ダメージを負う事は間違いないと思いますよ」
「! なんと、その話、誠か?」
俺の台詞に魔王が喰いついた。
「実の所、ほぼ素寒貧状態で戦争を起こそうと企画したかの国は、戦費を他の国から借りてようやく今回の軍勢を仕立て上げました。しかも、場所の特定されていない魔王様の国を探索する為に万単位の軍勢を数年間は探索に当てる為、軍需物資を莫大な量用意して。しかも、何も得ていない時点で莫大な見返りを保証しての借金ですから、一年後には利息の支払いだけで不渡りを出す事請け合いの超大博打です。それに負けた、というか、魔王領舐めてかかってましたしね。今回のように何も出来ないまま敗退するリスクをヘッジしていなかったのは確かです。むしろ、侵攻するよりは一年後にしれっとした顔で手を差し伸べた方が政治的には優位に立てるかと存じますが?」
「ふむ、おぬし、なかなかの政治センスを持っておるな」
「いえ、実はかの王家の一人の受け売りでございます」
「ほう、愚かな人の王家にもそのような者もおるのか? それに、受け売りとはいえ、この場でそれを朕に進言できるとは、知性と胆力はそちもなかなかのものじゃぞ」
「勿体ないお言葉です」
「見ればまだ若く溌剌とした雰囲気で顔だちも朕の好みじゃのう(じゅるり)どうじゃ? おぬし、朕に子を孕ませてみんか?」
「「「!」」」
うわーい! 隣で正座してるみんなが見た事無い位怖い顔してる~
「ちょっと! 黙って聞いてれば勝手な事ばかり、大体あたしが個人的に正座して罰受ける理由も無いっ、あたたたたたっ」
無理に正座を解いて立ち上がろうとしたりえがこてんとすっころんだ。
「なんじゃ? その面白いムーブをした珍獣は? そちの性奴隷か?」
「どっちかというとあたしの性奴隷よっ! こいつの精子は最後の赤玉に至るまで全部あたしが管理するんだからねっ! ぽっと出の魔王ごときが今更あたしらを差し置いて好きに孕むとかっ! そんなこと絶対ゆるさないんだからねっ!」
こ、こいつそんな事考えてたのか? いつもいつも、俺がジョゼと何かしようとしてたら邪魔してたのはそういう訳か?
「その通りです。御主人様と奥様の絆は何人たりとも裂けないもの。私も御主人様にお情けを頂く時は事前に奥様の許可を頂いてから一週間程身を清めつつ待ちわび、漸く許可がでるのです」
聞いてないよっ! いつからだよっ! って言うかさりげなく奥様言うなっ!
「まったくです。勇者様はみんなの勇者様なのですから、あのおっきしたのは私達の共有財産なのです」
俺は俺んだ――――っ!
「む、それは済まぬ。順番はきちんと守るから朕にも少し分けて欲しいのじゃ!」
「「「それならよしっ!」」」
「よしっ! ぢゃね――――っ!」
「陛下――――っ! このような与太者の精を御身に受けるなどっ! 臣は絶対許しませんぞ!!」
「無粋を言うでないわ、ハヤーミ将軍。朕もそろそろお年頃。近頃は夜な夜な子宮が疼いてたまらんのじゃ」
「何がお年頃ですかっ! 既に齢200を超えていて臣の祖父君の頃から戴冠なさっているお立場であられながらっ!」
「それは言わぬがハナマルキーじゃ」
なんか不穏な台詞が聞こえたような気がするが……
「えーと、そのど、どわい、えん? 族の方々は長寿種の方々で?」
俺の問は無視されるかと思いきや、その速水いや、ハヤーミ将軍が答えてくれた。
「我等ドゥワイアン族の寿命は精々人種共の1.5倍程度だ。だが、代々の魔王様は精霊との契約を以って戴冠の資格を得るのだ。精霊の加護を得る事で寿命は当初の10数倍まで伸び、その間は我が国は安定して繁栄できるという訳だ」
えっへん、と胸を張って将軍は俺に説明した。姿は只のマッチョだが妙に仕草がかわいくてキモイ。
「もっとも、その精霊の加護は受けられれば誰でも寿命は伸びるのじゃがな。精霊の加護を受けるといつまでも若く瑞々しい肌でいられる上、魔力も数十倍に嵩上げされる。朕はまだ283歳じゃから後1000年はこの姿のままじゃな。もっとも、普通精霊と契約できるのは若い女子だけなのじゃが」
「「「なにそれ? 精霊欲しいっ!」」」
女たちは色めき立って前のめりだ。リアルにセーラームーンの妄想が実現できるとか、女の業って……
「だが、精霊というのは気まぐれなものでのう。数はいっぱい居るのじゃが、そうそう契約まで持ってくことは叶わん。大体一億人に一人位じゃの。精霊を友に出来るのは。朕の血筋はそれでも精霊に好かれる血統じゃから世代に一人は出てくるらしいがの」
「「「精霊ってどこにいるのっ!?」」」
「おおおうっ! この大地にはそこかしこに居る筈じゃよ。岩の影とか、草の根の傍とか」
「釣りの餌にする虫か?」
この展開では流石に一人敬語にするのも馬鹿らしいか? 流石に将軍も、もうつっこまない。
「居た――――っ!」
陣幕ひっぺがして早速精霊探しの旅に出たりえは僅か20秒後には精霊ひっつかまえて戻って来た。
「で? で? どうすればいいの?」
「おぬしも大概じゃな。そんな乱暴に扱うと嫌われるぞよ。可哀想に怯えておるわ」
「そんなことないもんね――? 精霊さん。あたしと契約しない?」
涙目でぷるぷるしているちっちゃな精霊さんは完全に縮こまって防衛態勢だった。りえが正体を露わにしたキュウベ○に見える。無理だろこれ。
「……あい」ぺっかーん
「契約した――――――――っ!?」
流石に魔王や将軍たちが驚愕の声をあげる。俺はりえと契約した精霊にとってもシンパシーを感じた。分かる。わかるぞっ!
「こっちも捕まえました。精霊さん、私と契約しませんか?」
流石に鷲掴みではなく手の平にのせた精霊にみきが優しく問いかける。なんか目が笑ってないんですけど。
「あい。おおせのままに~」ぺっかーん
「え? また、じゃと?」
続けてみきも契約したらしい。最初に聞いてた話はなんだったんだ?
「「ぴ――――っ」」
そうかと思うと二人の恐ろしい契約風景に、飛び出してきた精霊二匹が桜の所に突っ込んできた。
「あらあらあらあら」
そう言いつつおっぱいで受け止める桜。既に涙目の精霊二匹は桜に向かって
「おたすけー」
「おたすけー」
保護を求めて来た。
「大丈夫ですよ。私が怖いお姉さんから守りますからねー」
そう言ったとたんぺっかーんと桜は光り輝き出した。
「「けいやくしまー」」
「「「「「ええええ――――っ!! ダブルで契約ぅ――――?」」」」」
流石にこれには一同ビックリしたようで。
「なんか朕の威光がおちょくられてる気がしてきたのじゃ~」
すっごい落ち込んでる。どこかからひょっこり出て来た精霊が魔王を慰めているのがかわいい。
ちょんちょん
ん? 誰かが俺の肩をつついた? 振り返るとそこに居たのは
「おっす。おらとけいやくしてまほうしょうじょになってよ」
ずいぶんと蓮っぱな精霊だった。
「俺は男だっ!」
「じゃあいもうとたちのぶんしょうかいして?」
「ん。それなら」
「そしたらおらあんたとけいやくするから~」ぺっかーん
「ええええ――――っ! 男まで!?」
もう、魔王様テンパってるよ。
「まさか」
「こんな事って?」
「いや、あいつら魔王様に匹敵するプレッシャーが」
「この世界の最高戦力に並ぶというのか?」
ざわざわと魔王の部下達が恐れ慄く。ハヤミー将軍も例外ではない。
「や、やはり、そちは朕と子を成すべきじゃ! 悪いようにはせんからの。是非、是非にちん○汁を――――っ!」
魔王が俺の上にのしかかって来た。
「おーたーすーけーっ!」
俺の悲鳴が荒野に轟いた。
「がっしょう なむー」
俺と契約した精霊がなむなむした。




