ぼくのせかい
少年が蟻の生態観察を始めたのは、夏休みの宿題がきっかけだった。毎日蟻の巣観察キットを見ていると、色んな蟻がいる事がわかる。
せっせと餌を運ぶ働き者の蟻、何をするでもなく、ただウロウロしている怠け者の蟻、そして、その蟻達を産み出した女王蟻。
「まるで人間みたいだ。」と少年は思った。
ある日、少年は誤って観察キットをテーブルから落としてしまった。落ちた衝撃で観察キットから土や蟻が散らばる。
「ああ、バラバラになっちゃった。でも、また作ればいいか。」
人間からすれば、それは些細な出来事だが、それまで築き上げてきた世界を一瞬で壊された蟻にはたまったものではない。
ある日、神は誤って巨大隕石を地球に衝突させてしまった。
「ああ、バラバラになっちゃった。でも、また創ればいいか。」
神からすれば、それは些細な出来事である。