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プロローグ 3話:ゲーム

3話:ゲーム


 俺はひたすらにゲーム攻略に勤しんだ。もうここへ来て二週間は経っているだろう。これはクレアが帰宅する度に一日と考えている為、実際はもっと経っているかも知れない。ただでさえ長編のRPGなのにやっとの思いでクリアすると難易度が上がった鬼モードが開放された。俺は現在はそっちを攻略中だった。

 とはいえ、俺も常にゲームをしているわけではない。


 一日の始まりは女神のクレアが出勤してきて「おはよーアキ君」と俺を起こし、朝食を用意してくれるとこから始まる。呼び方もいつの間にかアキ君で決まった。最初の頃は俺の分の朝食を弁当で持ってきてくれていたが、最近はどこからかキッチンを取り出しこの空間内で調理し一緒に食べる。

 クレア様は料理が上手でいつも美味しい。

「今日も美味しかったです。ご馳走様でした」と言うとクレア様は笑顔で「お粗末さまでした」と言ってくれる。俺はクレア様の笑顔を見て勝ち組になった気分だった。

 俺は食後にシャワーを浴び用意してもらったスーツに着替える。

 その後は今まで通りクレア様の書類整理を手伝い、切が良い所で昼飯にする。今まではクレア様もOLのように他の課の女神達とランチに出かけていたようだったが、最近は俺と一緒が多い。

 午後はマニュアル通り来客対応(孤独死した人)をしてクレア様に引継ぐ。どうやらクレア様は孤独死課の課長のようで孤独死した人がここに来る。基本的に来るのは年寄りばかりで皆が未練など無い……と言うよりは生まれ変わりなんてごめんだ!と天国行きを希望し、すんなりサヨナラする。ひとつだけあるとすれば、ここに来るのは俺が住んでいた地球の人間だけではなく、他の世界の猫耳を生やした人や全身を鱗で覆った蜥蜴人の様な人?もいた。ちなみに俺の様な若者(・・)は稀だとあとからクレア様に聞いた。

 時間で来客も打ち切り、来客者の書類を纏めて仕事は終わる。

 その後はクレア様と神界の居酒屋で酒と食事を摂りながら愚痴を聞く。ちなみに俺はジュースだ。言いたい事を話し切って満足した千鳥足のクレア様を家に送った後に元の職場に戻り、わざわざ空間の片隅に作ってもらった風呂部屋に入る。


 ちなみに神界というのは今いる場所で名前の通り神々の住む場所だ。

 俺は現在、神界の管理責任者である偉い(らしい)爺さんにクレア様のアシスタントをする条件で滞在許可証を貰って生活している。これが無いのに無理やり滞在すると罪人として魂を牢獄へ送られるらしい。

 どの様な死者が不滞在をするかというと、簡単に言えば女神や男神に惚れた死者らしい。女神も男神も皆が美しい為に一目惚れをし、ここに残りたいという死者は少なくはないようだった。


 まあそんな訳で俺は風呂から上がった後は用意してもらったパジャマに着替えふかふかのベッドにダイブしてゲームに勤しむ。



 そんな幸せな時間は長くは続かなく、ひとりの女神によってぶっ壊された。



 翌日もいつも通りのルーチンをこなしていると、入り口の扉が力任せに開かれた。


「クレアいる?」

 黒縁の眼鏡をかけ、胸元を大きく開けたワイシャツに黒のぴっちりスーツを着こなした金髪碧眼でグラマーな身体を持つ女神がズカズカと入ってくる。

 見た目だけは完璧なのだが、この女神は仕事を自分よりも弱い者に押し付ける事で有名なナイアという女神で、現に大量の書類を抱えている。内心で面倒な奴来たよ。とテンションを下げながらもバレない様に対応する。

「いえ、クレア様は現在休憩中でございます」

「そう、休憩に行く余裕あるならいいわね。これ渡しといて。今日の帰りまでね。終わったら私の所へ持って来なさい」

 無理やり自分の仕事の書類を僕に突き出し『ん』と早く受け取れとでもいいたいかのように顎を軽く持ち上げて睨んでくる。

「いえ、それはできません。それはナイア様の仕事であってクレア様の仕事ではありません。お引取りください」

 俺が言い放つと書類を床に捨てて思いっきり左の頬を引っ叩かれた。

「おい人間。お前は誰に口聞いてるか分かってんのか? 人間なんだから神様に言われた事は『はい』のひとつ返事でやってりゃいいんだよ!」

 ナイアは綺麗な顔を歪ませたまま俺に近づけ唾を撒き散らせながら怒鳴った。

 流石は女神。こんなに近くで唾や息を顔にかけられても汚いとも思わないし、嫌な臭いもしない。むしろ息ですら良い臭いだ。俺がドMならご褒美だな。なんて思っていたけど罵声が終わったので言い返す。

「いえ、それは出来かねます。これはクレア様の意思だけでなく、管理責任者様からも『違う課の仕事は決してう引き受けないように』ときつく言われていますので」

 爺さんの事を出すと『チッ』と舌打ちをした。

「早く拾えよ。持って帰れないだろうが!」といわれ、俺は書類を拾い纏め渡すと「お前、いつまでもここにいられると思うなよ」と言い残しナイアは去って行った。


 そのまま仕事を終えて、クレアと一緒に居酒屋へ向かう最中に後ろから声を掛けられた。


「おい」

 俺とクレアが振り向くと、そこには綺麗な顔を歪ませた金髪碧眼の女神がいた。

 面倒だと思っていると、クレア様が口を開いた。

「ナイア様どうなさいました?」

「はあ? どうなさいましたじゃねーだろ! そこの人間が女神の私に逆らったから罰を与えてやりにわざわざ来てやったんだよ!」

 言い終えるとナイアは死者を転生させる時に送るゲートを開いた。

「ちょ、ちょっと待って下さい! あ、アキ君!? ナイア様と何かあったんですか?」

「少しだけ。ゴメンなさい。これは僕とナイア様の問題だから」

「女神ナイアが命じる。タケハラアキはこの先の世界で新たな人生を送る事にする」

 ナイアが言い終えると、俺はそのゲートから伸びる影の腕の様な物で雁字搦めにされ引っ張られる。未だに状況を理解できないクレア様が俺を守ろうと手を伸ばし俺を掴むがゲートに引っ張られる力は強くクレア様も一緒にゲートに吸い込まれた。


「チッ、クレアめ! 面倒な事になったがまあいい。人間の分際で私に逆らったからこうなるんだよ」


 『アハハハハ』とナイアの歪んだ笑い声だけが道に響いていた


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