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3章 28話:供養という名の自己満足

3章 28話:供養という名の自己満足


「クレア、ルーニャもういいよ」

「気づいてたの?」

 さっきネムレスが確認した時に気がついたんだけどまあいいだろう。

「まあね、ルーニャは?」

「……そこにいるんだけどね。ルーニャちゃん」

「グズッ、おにいちゃん、わたしがんばったの……グズッ、でもあの子わたしのこと嫌いだって。うわゎゎぁぁぁん」

 泣きながら飛び込んでくるルーニャを抱きしめて頭を撫でてあげる。

「まあそればっかりはしょうがないか……で、あの子は?」

「一緒に行くのが嫌だって。変な事してた男は倒したけど、ここにいるって聞かないから置いてきちゃった。だからわたしはルーニャちゃん連れて一回街に帰って……」

「いやぁー、グズッおにいちゃんと一緒にいるー」

「アキ君随分愛されてるじゃないの」

「日頃から無償の愛を注いでいるからね」

「……アキ君はロリコンだったのね」

「そんな事より一回帰ってリンネさん達連れてくる?」

「そうね……流石に知らない人と【転移】でここには来れないから馬で帰ってから馬車で来るね。ルーニャちゃん眠いでしょ?お姉ちゃんと一緒に行かない?」

「おにいちゃんといっしょにいたいのダメ?でもおねえちゃん大好きだよ?」

 上目遣いで涙を溜めながらの懇願はクレアにも効くのだろうか?

「うーん、じゃあ今日は帰ったら一緒にお風呂入る?」

「はいるー」

「約束だよ?破ったら大変な目に遭うよ?」

「だ、だいじょうぶだよ?」

「じゃあアキ君、私は行くね。馬車は何台欲しい?」

「三台は欲しいかな」

「了解!じゃあちょっとのお別れね頑張って!」

 軽く俺にハグしてクレアはひとりで洞窟を後にした。


 その後は一時間程度ルーニャの不満を諭しながら聞き続けた。

 その内にいいたい事を話し尽くして満足したのかルーニャは疲れて寝てしまったのだが……もうナコルはどうなってもいいんじゃないかな?

 俺はルーニャは可愛いと思うけど、そもそも子供ってそんなに好きじゃないって事に気がついたんだよね。

 まあ俺からどうするって事はないけどさ。 


「ご主人様、終わったぞ開けてくれ!」

「開けるのはいいけど、ご主人様は止めてくれ!」

「まあ何でもいい開けてくれ!」

「んぅ?おにいちゃん?」

 おっと大きい声出したからウチのお姫様がお目覚めだ。

「今から仕上げだからルーニャ起きれる?」

「え?えっと……うんだいじょうぶ!」 

 寝ぼけていたが辺りをキョロキョロして状況を思い出したのか一気に真剣な顔になった。

「一応警戒しててね」

「うん!」

「おーい!まだかーご主人様ー」

「だからそれ止めろって!」

 でも壁は消した。

「野郎共説明した通りだ、質問がある奴は先に聞け」

「じゃ、じゃあ俺でも本当に飯と寝床用意してくれるんすか?」

「ああ、ちゃんと日当も銀貨で二枚出してやる。まあこればっかりは信じてもらうしかないんだけどな」 

「そんな顔すんな俺も同じ条件だ!旅は道連れと行こうぜ!」

「親分と同じ条件?いや無理っすよ!俺の日当は下げてその分親分の上げてくれませんか?」

 何いってんの?と周囲を見回すと皆が俺もって顔してる。慕われすぎでしょ……デキてんの?どうすっかなー

「まあそのくらいは分かった。じゃあお前らは日当が銀貨一枚と銅貨七枚な。

 それでお前らが……五人だからネムレスの日当を銀貨三枚銅貨5枚にしてやる。それで他に要望は?」

 

 特に無さそうだったのでこの条件で新たに五人と契約した。

 でもクレアが来るまではあと十時間はかかるだろう。


 俺がやった事だ死者を弔おう。


 俺はルーニャ連れ死者を持ち上げて洞窟の外から少し左に出た所にある人工的に(ひら)けた場所に並べていった。

 途中からは何も言わずにネムレスや手下達が手伝っていた。中には涙を啜る者いて自分の行った事を考えるが、目的の為には仕方がなかったと無理やりだが自分にいい聞かせた。

 このまま炎魔法で焼いてしまうのもどうかと思い、木を切り倒して丸太をキャンプファイヤーの時の井桁型(いげたがた)に組み中には簡易的な棺桶を作り、この世界に三途の河があるのかわからないけど冥銭として銀貨を6枚入れた。

 この辺は女神様のレスティか大神の爺さんが何とかしてくれるでしょ。

 日本にいた時に得た何となくの適当な知識だし、ぶっちゃけ適当だ。いくら入れればいいかなんて知らないもん、それに会った神は仏様じゃなかったし……要するに自己満足だ。

 これを人数分用意し、最終的には炎魔法で火をつけた。


 目を閉じ死者に告げるのは残った奴らは俺が責任持つよって事くらいだった。

 人を殺したんだからその位は俺が背負(せお)うって事。

 でもお前らも人を殺したり悪い事してるんだから俺を怨むなよっていっておいた。

 殺していいのは殺される覚悟のあるやつだって誰かがいってたし。

 いいたい事をいい終えて隣を見るとルーニャが俺と同じように目を閉じていた。え?何してるの?


「ルーニャはこの人たちに何をいったの?」

「え?おにいちゃんのまねしてただけだよ?」

「まあいいや。この人たちが生まれ変わる事を選ぶかもしれないから、その時の幸せでも願ってあげて」

「うん!」

 まあ酷い人生だったなら成仏に進むと思うけどな……って犯罪者はどっか違うとこ行くんだっけ?まあその辺は個人のしてきた事だし俺には関係ないだろう。

「ご主人様、俺らも祈っていいか?」

「そりゃいいけど、あんたら俺が憎くないのか?」

「まあこんな事やってりゃいつかは報いを受けてこうなるさ。

 それにこうなったのは親分の俺の責任だ。せめてこいつらに謝らせてくれよ」

「「「「「俺らもいいっすか?」」」」」

「ああ……でも、なんかすげー俺は気まずいよ」

 ん?商人は?って、そんなの知らないよ未だに道に放置されているんじゃない?


「これ全部やるから迎えが来るまでここで思い出話でもしててくれ」

 俺はポケットから酒樽を四つ取り出しネムレスに渡した。これは俺が酒場で購入して最近頑張ってる教会のおっさん達に渡そうと思ってた物だ。

 まあ思い出すのが供養っていうくらいだし、残った人たちは酒で少しでも悲しい気持ちを流してもらえばいいと思う。

「……なんか悪いなご主人様」

「まあ俺がやった事だからな……自己満足だよ気にしなくていい」

「じゃあありがたく貰うぜ!野郎共!今日はこいつらの事でも思い出しながら飲むぞ!」

「「「「「うぃーっす!!!!」」」」」


「じゃあ俺らはあの辺で寝てるから何かあったら呼んでくれ。

 あと逃げ出したりすると何かしらペナルティがあるから部下をちゃんと見てろよ?これ以上減らしたくないだろ?」

「ああ、しっかり見てるさ」

「そか、おやすみ」


 俺はいつの間にか寝てしまったルーニャをお姫様抱っこで運んで魔法を使う。


「【ロックウォール】【ロックウォール】【ロックウォール】【ロックウォール】【ロックウォール】【創造】【創造】【創造】【創造】……はぁ疲れた。

 じゃあルーニャおやすみ」


 石造りの正方形の箱というか家に創造で扉、床、ベッド、布団を作り靴を脱いでルーニャの頬に軽くキスをして一緒に布団に入ると俺は一瞬で睡魔に襲われる。


 あ、ナコル放置しっぱなしだ……


~ナコル~


 ガチャリ。何かを開ける音がした。


「明日までだしここでおとなしくしてろよ……っていってもそれじゃ動けねーか」


 男があたしに告げた。そして再度ガチャリと音の後に足音が遠くなっていった。

 あたしはどうなるの?

 ここはどこかもわからないし、それに……その、そろそろおしっこも限界なのに……

 お願いトイレに行かせてよ!

「ふぅーふぅーんぅー」

 必死に尿意に耐えていると足音が近づいて来る。一瞬トイレに行かせてもらえるかもなんて思う。


 ガチャリ。何なのこの音……


「はぁはぁ、お譲ちゃん可愛いね~その可愛い顔を見してくれよ」

 息を荒くしそんな事をいって突然おじさんはあたしの目隠しを外した。

 そこにはズボンを下ろして自分の下半身を出しナニかを握って一生懸命上下に動かして蕩けた目でこっちを見ながら息を荒くしているおじさんの様なナニかがいた。

 な、何?なんなの?気持ち悪いよ……お姉ちゃん助けてよ…あ、もうダメ……

 あたしは我慢できずについに漏らしてしまった。それを見たおじさんの様なナニかは更に息を荒くした。

「何だ?漏らしちゃったのか?悪い子だねー」

 そういってわたしのお尻を触ってくる。気持ち悪いよ……やめて!

「おい!動くんじゃねえ!」

 触られたくないから必死に逃げていたら怒鳴られてあたしは動けなくなった。

「そうそういい子だね~これはおじさんが洗ってきてあげるよ」

 ナニかはあたしのパンツを脱がし顔の前に持っていってナニかしている。もう無理だよ……本当に気持ち悪いよ。誰か助けて……

「よし、イクぞ!こっち向け!ぐはっ!」

 よく分からなかったけどあたしはぎゅって目を閉じて体を硬くした。

 ドンって音がした。

 ……あれ?急に静かになった。シュッシュッてナニかを擦る音も、ハァハァって息遣いも聞こえない。何?どうしたの?あたしはうっすら目を開けた。


「だいじょうぶ?」


 そこにはルーニャっていう同い年のニャーテルの子供がいた。


「ルーニャちゃん待って!ひとりじゃ危ないよ!」

「おねえちゃん早く!」

「ん?どうしたのって……間に合ったのか微妙ね」


 おねえちゃんと呼ばれた人……確かクレアだっけ?そのクレアはわたしを縛っているロープを切って解放してくれた。


「…………」

 あたしは何もいえなかった。本当はお礼を……ありがとうっていわなきゃいけないのは分かってる。でも口が動かなかった。

「だいじょうぶ?」

 またルーニャが聞いてくる。

「…………らい」

「ん?ニャに?」

「あんたなんか大っ嫌い!」

「えっ?」

 いっちゃった。でもあたしのお姉ちゃんをとったあんたなんて大嫌いだ!

 ルーニャはそのまま反対側へ駆け出していった。

「流石にそれは無いんじゃないかな。ルーニャちゃんがどんな気持ちでここまで来たのか考えてみてね」

「うるさい!うるさい!みんな大っ嫌い!」

「そ、じゃあそこにいつまでもいればいいよ。ってルーニャちゃん待って!そっちはダメよ!」

 またひとりになっちゃった。どんな気持ち?それならあたしの気持ちを考えてよ!なんで誰もあたしのことわかってくれないの?


「う、うわぁぁゎぁぁん」


 檻の中で女の子の泣き声だけが響き続ける

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