3章 23話:伝えられていない約束
評価ありがとうございます。
状況の表現などわかり難い部分も多いと思いますが、別の良い言い回しが思いつき次第少しずつ直していきますので長い目で見ていただけると幸いです。
3章 23話:伝えられていない約束
実際のところ宿を借りようとしたのだがクレアの追求が厳しくて断念した。
まあ聞いてくれこんな感じだ。
「クレア今日出かけて来ていい?」「ん?どこか行くのアキ君」
「うん、ちょっと自分を見つめなおそうと思ってさ」「じゃあ私も付いて行くね。またクエスト行かれたら困るし……ルーニャはシーナさんに頼もうかしら……」
「いやクエスト受けるつもりはないから大丈夫だよ?」「えっ?じゃあ何するの?」
「……ナニするといいますか」「ん?男の子の事情で情事的な奴?」
「あ、何でもないです。忘れて」「え?まさか一度もお風呂場使ってないの?もうこっち来て結構経つよね?まさか、朝一で偶にアキ君が洗濯機を回してる時って……そういう事なの?」
「もう俺さ生命力が尽きたし成仏してもいいよね?」「なんなら今から私がルーニャ連れて一時間くらい外出てようか?」
「そういう気の使われ方本当に困るので勘弁して下さい」「じゃあ私が手伝ってあげようか?……その、経験ないけど」
「どこまで本気?」「アキ君がして欲しいなら私頑張るよ?」
「明日からどんな顔して会えばいいか分からないから気持ちだけ受け取っておきます」「このヘタレ」
全く反論できなかったよ……でもそんな事ばかりいってるといつか俺に襲われても知らないぞ!
俺にそんな度胸はないけどね!
という訳で俺は今も洗面所でひとり寂しくパンツを洗ってるんだよ……死にたくなるよね。あーはいはいこの話は終了!
こっから本題。
食事会の次の日リンネさんから日にちと時間の指定があって一週間後の十二時に決まったんだけど……毎朝リンネさんは出勤前に俺たちの家に寄っている。
ちなみにリンネさんの仕事は九時からなんだけど七時に来て訓練場で投擲を一時間してからウチでシャワーを浴びて俺達が出かけるのと一緒に出勤という気合の入り方が半端なかった。
仕事も俺達が素材換金を終えたのを確認して、定時の十八時で終わった後はウチに寄り更に一時間投げてから帰るという徹底ぶりだった。二日に一回はウチで飯も食べている。
そのおかげか、三日で【投擲】のスキルを得たのだが結局一週間通い続けレベルも3まで上げていた。
五日目には何か他のスキルも教えて欲しそうな感じを醸し出しているが何を覚えたいのかリンネさんからいってくれないと俺からは教えようがなかった。
まあこの一週間で随分と距離が縮まった気がする。
そんな訳で、一週間が経ち十二時の鐘がそろそろ鳴りそうな時にリンネさんの家の前まで俺たちは来ている。
街の中心の大通りから東へ行った住宅街にあり、買い物などの立地条件は非常に良い場所で家もウチの四倍はありそうな立派な石造りだった。
コンコンコンッ。とノックし呼びかける。
「こんにちはー」
本来なら、ごめんくださいっていいたい所だけど、以前どういう意味?って思って調べたら『いきなり訪問してきたことを許して』って感じらしいから今回みたいな約束の場合はこんにちは、で失礼にならないよね?
そんな事を考えている間に中でドタドタ音がして続いてガチャリと鍵が開いた音がした。
「……誰?」
扉を少し開けこっちを覗い見る目が随分下のほうにあった。おそらくこの子がナコルだろう。
「リンネさんと約束をして伺わせていただきました。冒険者のアキとクレア、ふたりの妹のルーニャが来たとリンネさんに伝えていただけませんか?」
「……無理、あたし聞いてないし。じゃ」
バタンッ。と扉を閉められてしまった。知らない人を信用しないという点では素晴らしいが、流石に今日は約束できているのでどうしたらいいか悩む。
「やっぱりこういう時にスマホっていうより電話が無いと不便だな」
「そうだね、でもどうしよっか」
「……おにいちゃん、わたし嫌われちゃった?」
おっとウチのお姫様が目に涙を浮かべて落ち込んでいるではありませんか。
確かに同年代の友達ができるかもって一番楽しみにしてたのはルーニャだもんな。
仕方がない。今回は諦めてお姫様とデートを楽しむ事にしようかね。
「ルーニャは何も悪くないよ。あの子も俺たちが来ること知らなかったみたいだし、いきなり知らない人が来てビックリしちゃったんじゃないかな。
だから、今日はおにいちゃんとおねえちゃんと買い物に行こうか。何食べたい?」
「グズッ。……今日はいらないです」
これが反抗期ってやつですか?でも今まで我が儘いってこなかったから少しは心開いてくれてるのかな?
「そんな事いわないで。ルーニャちゃん今日は私たちといっぱい遊ぼうよ。お姉ちゃん何でも買ってあげるよ」
「グズッ。……いつも買って、もらっているので、グズッ、大丈夫です」
「ルーニャはいつも良い子だから、なっと。じゃあクレア行こうか」
俺はベソかいたルーニャを肩車してリンネの家を後にした。今度謝らないとね。
ルーニャは冒険者ギルドの酒場で大好きなシチューを食べてやっと少し笑顔になった。
その後は教会に行っていつものおっさん達に遊んでもらい、夕方になったから食材を買って家に帰るとそこにはいつから待っていたのだろうか、リンネさんとルーニャと同い年くらいの小さな女の子がいた。
そしてリンネさんが開口一番「すみませんでした」と頭を下げた。
うん、何とも気まずい空気である。




