2章 16話:積み荷
16話:積み荷
可能性を考えて一度家に帰るが、まだ帰ってきていない様だった。
彼女いない暦=年齢の俺は、女の子がどこで買い物しているのかなんてわかる筈も無く、闇雲に探したが見つからなかった。
まいったと思いつつも、知り合いに当たる事にした。宿屋のおばちゃんと商業ギルドのリンネは見てないと答えた。
しかし、冒険者ギルドのシーナさんは「クレア様にゃら一時間ほど前に来て、アキ様を追いかけていきましたよ?」と重要な事を教えてくれた。
南門に戻ると、丁度街道から戻って来て大荷物を背負ったクレアと鉢合わせる。
「アキ君!クエストひとりで行くなんてダメでしょ!何かあったらどうするの!」
めっちゃ怒ってた。
「ご、ゴメン。でも先に助けて欲しいんだ!」
「謝ったて今回は許さな……助ける?」
状況を説明をしながら教会へ向かっていると「成る程ね」と納得していた。
「「「「あねさん!お勤めご苦労様です!」」」」
……クレアは極道の道へ進んだのだろうか。
「その挨拶はやめてもらえる?どの人かしら?」
「こりゃまた、美しいお嬢さんだ」
助けたおっちゃんが、何食わぬ顔で前に出てくる。
「あなたがゴブリンに襲われたガルスさんね。そのまま動かないで下さい【解析】……うん、特に異常はないから問題ないわよ」
「そうですか……皆様ありがとうございました。このお礼は必ずさせていただきます」
おっちゃんが、向きを変えながら全員に何度も頭を下げる。
これで一安心だな。流石に人が死ぬのは嫌だしね。
「で、積み荷なんだけど……」
おっちゃんの顔が一気に強張った。そんなにヤバイ物を積んでいたのか?
「……どうでしたか?」
「ふたりはダメだったは。でもひとりだけは間に合った。ん?起きたかしら?」
クレアの背負っていた荷物袋から顔を出したのは、【猫人族】の女の子だった。女の子は『んーーッ』と袋から腕を伸ばして起用に伸びをするとキョロキョロと周囲を確認しだし『ん?』と首をかしげた。
何この子?メッチャ可愛い。持って帰っていい?とクレアに目線を向ける。
「ダメよ。この子奴隷だし。ね、奴隷商人さん」
「……わかってましたか。それにしても…そうですか……あの子達はダメでしたか……良い子達だったんですけどね……」
俯くおっちゃんは目頭を抑えて泣いていた。
クレアは荷物を降ろし女の子を袋から出してあげる。
「お姉ちゃんが助けてくれたの?」
似合わない黒い首輪を付けた五歳くらいの猫獣人の女の子が周囲にいる男達にビクビク怯えながらも、恐る恐る尋ねる。
「ええそうよ。あなたお名前は?」
「ルーニャです。五歳です。よろしくおねがいします」
「よく言えたわね偉いわ。私はクレア、そこにいるお兄ちゃんがアキ君で……あとはその他よ。
それにしてもルーニャちゃんか~可愛い名前ね。私の妹もあなたと同じくらいの歳なのよ」
クレアは女神のように優しく微笑みルーニャの頭を撫でる。……いや女神か。
「あれ?スーニャちゃんと、カベス君は?」
「ゴメンね……あの子達は遠いところへ行っちゃったの」
「えっ?……もう会えないの?」
いなくなった友達を思い、目に涙を浮かべてクレアに尋ねる。
「会えるわよ。大丈夫お姉ちゃんが約束するわ。ずーっと先になっちゃうかもしれないけど絶対に私が会わせてあげるわ」
「ほんと……やくそく?」
「ええ、約束しましょう」
それでも悲しさは抑えられない様で、ルーニャはクレアに抱きつき声を上げて泣いていた。
そんなルーニャを優しく包み込むクレアはとても美しく教会内の時間は止まったようにいる人全てを釘付けにした。
ルーニャが泣き疲れて眠ってしまったため、クレアが「今日は家で寝かせてあげてもいいかしら?」とおっちゃんにいうと、「お願いします」と頭を下げた。
俺は、とりあえず事情を聞く為に残り、クレアだけが家に帰った。
「で、奴隷商人っていってましたけど……」
「え、ええそうです。私の仕事は奴隷を仕入れ、仕込み、売る事です」
「あの子も奴隷なんですか?」
「そうです。あの子の首にも黒い首輪が付いていたでしょう?あれが奴隷の証です。特別な魔法がかけられていて一度付けると契約を満たすまで外れません。あの子達は元々親を亡くした孤児でして、住んでいた孤児院からの依頼で引き取らせていただきました。孤児院も続けていくにはお金が掛かりますからね」
「聞きにくいんですけど、あの子をどうするつもりなんですか?」
「ルーニャを心配してくれてるんですか?大丈夫ですよ。犯罪奴隷でもないあの子が性奉仕させられる事はありませんから。
それに引き取る際に、院長からルナは読み書きが出来るので出来ればそういった仕事に就かせてやってくれと、頼まれましたからね。しばらくは私の下で勉強させ、そういう方向で受け入れ先を探してやろうと思っています」
奴隷っていっても俺の知識とは随分違った。人権もあるようだし奴隷商人も後ろめたい職業ではないのかもしれない。おっちゃんは隠したそうだったけど。
折角なのでもう少し突っ込んだ事を聞いてみる。
「ちなみにですけど……金額は?」
「そうですね……読み書きができるとなると……金貨50枚といったところでしょうか」
50枚か、買えない金額じゃないな。とりあえず、そうですか……と呟き、この話は終わりにした。
泊まる所の当てがあるのか聞いたが、どうやらこの街は通過するだけの予定だった様で無いとの事だった。この教会で泊まってもらってもいいが、せっかくなのでおばちゃんの宿屋を紹介すると「今晩はここでお世話になります」と言った。明日の昼に教会で待ち合わせの約束をし、おっちゃんは宿屋に入っていった。
家に帰ると、どうやらふたりでお風呂に入っているようで、随分と騒がしい。
ふたりが風呂から出るまで暇なので水道から出る水を何個も【水球】にして飛ばしながら魔力強化をしていた。
そんな時に脱衣所のドアがガラガラと開かれる。
「お風呂いやなのーー!!助けてお兄ちゃん!」
素っ裸の猫幼女が俺に抱きついてきた。『おーよしよし』って思う存分ルーニャの頭を撫でたかったが、ルーニャが飛び出してきたって事は当然……
「こらビチョビチョのままで外出ないの!って?ああ、アキ君お帰り。ルーニャちゃんをそのまま捕まえててね!逃がしちゃダメだよ」
「……いや、まず隠そうぜ」
一糸纏わない堂々とした姿のクレアを見て思わず言葉が零れる。
しかしマジマジみるとやっぱり完璧だよな。形もよく綺麗な胸に薄い桜色……ってマジか!髪の毛とあそこが同じ色なのって都市伝説じゃなかったのか?って薄いから大事なクレヴァスが見えてますよ?ってやばいこのまま見てるのはマズい!
ん?……というより俺の事を男として意識してないのか……何か裸見て凹むとか贅沢だけど悲しいよ。
「お兄ちゃんだいじょうぶ?いたいの?」
「何でもないよ!ほらルーニャも女の子なんだからお姉ちゃんと綺麗になってきなよ」
無理やりクレアにルーニャを押し付けて扉を閉める。
「…………魔法の練習しよう」
ふたりが風呂から出てきた頃に魔法の使いすぎで俺はぐったりしていた。




