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2章 13話:今度こそスキルを

13話:今度こそスキルを


 あの後も中々帰ることはできなかった。何故なら、むさ苦しい男達が『レスティ様の声に惚れた!あんな可愛い声の子が可愛くない訳ないぜ!俺達はレスティ様に言われたとおり姉さんに付いてきやす!』なんて言い出したからだ。

「いや、付いて来なくて良いから。でも、手伝ってくれる?」 

 ……とクレアは突き放していた。

「「「「何でも言ってください!!」」」」

「ちょっと待っててね」

「「「「はい!!」」」」

「【取寄(アポート)】!えーと、合ってるわね。【複製(コピー)】!使えるわよ……ね?」

「クレアそれは?」

「【回復魔法】のスキルスクロールよ?この人達に覚えさせようと思って」

「理由聞いてもいい?」

「ええ。まず、教会を治したのはここで【回復魔法】を覚えた男達を数人ずつ交代で常駐させて怪我人達の救済を行う為よ。そうすれば治った人や家族は感謝や祈りを捧げるでしょ?その結果、信仰に繋がれば完璧ね。

 始めは加護が足りないから効果も薄いと思うけど数人で掛かれば重傷以外なら何とかなると思うわ。重傷でも止血位はできるだろうし苦しみは軽減できるんじゃないかしら。

 それで、得られた信仰はレスティに頼んで教会のみを加護で覆ってもらうつもりよ。そうすれば教会内での回復効果は上がって、男達の回復魔法レベルも上がるでしょ?

 回復魔法レベル5が神官への転職条件だから希望者には私が転職させるつもり。本来転職は神殿で大神官が行うんだけど、どうせこの世界には大神官もいないし、神殿も荒れてるだろうしね。どう完璧でしょ?」

「うん。確かにこの世界の現状を考えてそれならいいかも。神官になってくれれば、他の街や村に派遣するのもいいかも。そうすれば中には神官を目指す人も出てくるかもしれないし」

「それだわ!」

「でもひとついい?」

「なに?」

「この世界の職業ってどうやって決まるの?」

「身分証を作る際にステータスレベルによって職業が選べるようになってるわよ?

 筋力があれば戦士や武道家、敏捷力があれば忍者や盗賊みたいな感じ」

「……俺そんなの聞かれてないんだけど?」

 普通にシーナさんに「ニャか問題がありましたでしょうか?」って言われたし。せめて選択肢くらい教えてよ!

「……まあそういう事もあるわよ。で、でも【女神騎士】は転職でなれないし、覚えるスキルも特別なのがお、多いから!」

「まあ……いいけど」

「あ、あの?いいですか?」

「なにかしら?」

「俺らは結局どうすればいいんでしょうか?」

「「…………」」

「べ、別に忘れてた訳じゃないわよ?と、とりあえずこれを渡すから、ひとりずつ取りに来て」

 クレアは男達全員に【回復魔法】のスキルスクロールを配った。この世界ではスキルスクロールは存在するがスキルによっては一本で国が買えるらしい。実際に冒険者が迷宮で見つけた【召還】のスキルスクロールを売ったお金を駆使し爵位を買い、その後も金の力で国王になった者もいたらしい。

 そのくらい貴重だと思ってくれればいい。

 俺は何本使ったっけかな?世界の半分を買えるくらいは使ったかな?

 結局のところ転職ができない世界での問題点である。大神官がいないので上位職の【付与術師(エンチャンター)】に転職できる者がいなくなったのが原因である。

 そんな貴重な物を平気で配るクレアは男達にどう映ったのだろう。もし俺なら持ち逃げして売って遊んで暮らすけどね。ここでそんな下卑た考えをしていたのは俺だけだったようで。皆が自分の前にスキルスクロールを置き床で土下座していた。どっかの御老公にでもなった気分だった。印籠なんて持ってないけど。

「それで、この巻物では【回復魔法】が覚えられるから三日以内に全員が使えるように努力しなさい。魔法の使い方は魔術師に聞きなさい。使えるようになったら毎日倒れる寸前まで適当に回復魔法を使って魔力の底上げをしなさい。でも決してひとりではやらずペアを組んでやること!いいわね?」

「「「「はい!!」」」」

「じゃあ三日後にここで会いましょう」


 結局全部が終わった時には日も暮れ商業ギルドは閉まっていた。

 とはいえ、三日間は自由な時間を得ることができた。明日こそは換金をしてスキルを覚えよう。


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