2章 11話:休日
2章:家族
11話:休日
「アキ君起きて~朝だよ~いや昼だよ~」
ゆっさゆさと揺さぶられて嫌々目を開けると、準備完了!今すぐクエスト行こうぜ!とでも言わんばかりの女神様がいた。
「おやすみ」
昨日の肉体強化は、どうやら【限界突破】という固有スキルらしい。ギルドからの帰り道にクレアに聞いた。ギルドカードを確認しても【Unknown】から変化してたし間違いないと思う。
爺さんが何か条件を決めて、その条件を満たさない限り【Unknown】という状態に封印していると思う。と言っていた。まあ何にしろ助かったから良しとしよう。
しかし、どうやらこのスキルは最大で十分しか使えないのと、使った後の反動が大きいという問題(HPとMPを使用するため回復までの間に時間がかかりその間は非常に強い倦怠感に襲われる)が露見した。その為に俺は未だに疲れが取れていない。とはいえ、デメリットよりもメリットが多いのも事実だった。
一度使用しただけで【筋力】【敏捷力】が一気に上がった。【精神力】は『腕の無いカースを見てたからグロ耐性でもついたんじゃない?』とクレアが言っていた。
ちなみに俺の体から出てた黒い煙は限界を超えて体を動かす為に消費した生命力と魔力らしい。要するにHPとMPを使用してスーパー状態になるって事だ。
「もー!そんなつれない事いうと一緒に寝ちゃうぞ!?」
「いいよ、ほら早く」
「きゃあ!」
そんな事くらいで睡眠許可が下りるならいくらでも一緒に寝るよ。丁度、温かい抱き枕が欲しかったん……
「もう、寝顔は無邪気な子供なんだから。今日だけだからね。明日はちゃんとクエスト行こうね」
眠る青年に優しく囁きかけながら髪を撫でる姿はまさしく女神だったが、残念なことにそんな姿を見ているものは誰もいなかった。
~翌日~
「アキ君起きて~朝だよ~今日こそはクエスト行こうよ~」
ゆっさゆさと揺さぶられて嫌々目を開けると、バスタオルを巻いただけの女神様がいた。そりゃ一気に目が覚めた。
「へ?風呂入ったの?」
「え?シャワーだけどね。アキ君も浴びてくれば?」
「浴びる!」
布団から飛び起きクレアが指を差した壁には、いつの間にか木製のスライドドアが付いていた。開けて中に入ると、脱衣所になっており洗面台とドラム式洗濯機まである。
クレアの趣味なのか可愛らしいバスタオルに体洗いようのタオル。それと男性用の下着が準備されており、俺が入る為に準備してくれたいた様だった。
あれ?何でクレアはバスタオル一枚で部屋にいたの?下着持って行くの忘れたの?
風呂場のドアはアルミサッシに樹脂パネルで、何故か懐かしさを覚えたがドアを開けると小さい浴槽とシャワーがあった。置かれているラックには可愛らしいスポンジやネットがあるが、使う勇気はなかった為、準備されていたタオルで洗った。
シャンプーなどは使ったことが無いような良い匂いがして、これをクレアが使っていると思うと息子がイエス戦闘モードオーケーになったが、シャワーをお湯から水に変えて強制的に武装解除した。
やっぱりシャワーだけど体を洗うのはいい。いくら服に【浄化】が付いていて汚れなくても、シャワーを浴びたことで気持ちまでスッキリする。
新しい下着を穿き洗面台のドライヤーで髪の毛を乾かし、服を着て部屋に戻る。一応タオルは洗濯機に入れておいた。
「ふぅースッキリした!やっぱ一日一回は最低でもシャワーくらいは浴びたいよ。シャンプーとか使わせてもらったけど大丈夫だった?」
「全然いいよ。それより、アキ君も男の子だし抑えきれないリビドーを我慢できなくなってひとりでする時は処理が楽って理由でお風呂を選ぶって聞いたんだけど……した時はしっかりと掃除してね?」
「……はい。なんか気を使ってもらってすいません」
「そんな事より!朝ごはん作っておいたから食べよ?」
「……はい」
「何でそんなに落ち込んでるの?まさかさっき風呂場で……」
「してないから!風呂場ではしてないから!」
「風呂場では?じゃあどこで?トイレ?トイレなの?」
「そんな事はどうでもいいでしょ!とにかくここ最近はしてないから!いただきます!」
俺だって本当なら十七歳で思春期真っ盛りなんだから、そんなに堂々と若者の性の話をしないでくれよ……ただでさえ我慢してるってのに。
「じゃあアキ君!今日の予定を決めましょう!」
なんかこの女神様こっち来てから生き生きしてんな。可愛いからいいけど。
「それなんだけどさ、商業ギルドで換金したら一通りスキル覚えたい」
そう、未だに俺は剣術しか使えず魔法も使えない。せめて回復魔法だけでも覚えないといざという時が恐い。
「おっけー!じゃあ食べ終わったらさっさと換金済ませましょう」
今日はスキル全部覚えてやるぜ!
……なんて思っていた時が俺にもありました。
商業ギルドへ向かっている途中で俺とクレアは男達の集団に絡まれた。
「アニキ!俺達をアニキ達のチームに入れてくれ!」
「はい?」
俺とクレアは顔を見合わせて『はぁ……』と溜息をつく。
俺はいつになったらスキル覚えれるのだろう……




