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第一章 ~1~
それは、ある春の日。
私とあの子は、夕日のさす食堂で、初めて会話した。
『ひじり!』
『え、えと・・・』
『同じクラスのあかねだよ! アカって呼んで!』
中学生になって、初めての友達。
『あ、アカ・・・?』
『そう、アカ! 私これから帰るところなんだけど、ひじりは?』
『わ、私は、ジュースを買ってから・・・』
『あ、いいね、それ! 私も買っていこっと! でさ、今日、よかったら一緒に帰らない?』
中学生になって、初めて誰かと一緒に帰った。
『うん、いいよ』
『まじで? やったね! じゃあさ、ジュース、何にする?』
中学生になって、初めて誰かとジュースを選んだ。
何もかもが、初めてだったあの日。
私が、初めて『親友』と呼べる友達を作った日。
これは、人生で初めてのことだった。
それは、全ての始まりであり、同時に決定的な哀しい終末を予知するものでもあった。
もちろん、私がそれに気がついたのは、その終末を目前にしたときで、要するに全てが手遅れだったわけなんだけど。