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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
――――報告なし
89/110

残骸の価値

 キカク地域は一瞬にして混乱が広がった。


 Cleanが纏う人的鎧(ヒューマノイド)が乗っ取られ、そして攻撃を行っているのである。現在の負傷者は不明。死者数は今のところ確認されていない。統括者はより深い地下シェルターに退避。キアカク地域の被害は統括者を中心に、その近い場所に置いて行われている模様。


 暴動を起こしているのはclean。


 しかし現在、この情報は曖昧な面が多い。


 そもそも、キカクの治安委員会の面々は、現在半分は技術廃棄街への視察に向かっている。そしてもう半分の何割かは、四人の統括者の護衛につけられ、それ以外は人民への非難勧告あんどを行っている。


 現状、治安委員会はこの騒動における容疑を否認。


 よって、この暴動は治安委員会ではない別の集団が起こしたものだと思われる。


 現状、市民が本物のcleanと、cleanの人的鎧(ヒューマノイド)を纏っただけの暴動者を見分ける方法はない。早急に打開策を思案しなければならない。


 キカク地域の治安委員会に属するものは、この正体不明の人的鎧(ヒューマノイド)に注意すること。


 非難は人的鎧(ヒューマノイド)、およびその兵器の持ち込みが不可能である公的機関に誘導すること。


 警戒態勢は最大とする。


 逃げることが難しい場合、家庭に内蔵されている小型のシェルターに退避。治安委員会からの連絡を待つこと。過度な移動ができない市民はこちらを選択すること。


 


「なるほどネ」


 彼女を降ろし、ダムのコンピューターから得られたキカクの状況は、そのようなものだった。


 おそらく、この情報源、この指令を現在出しているものはモモタビ・マイリである。この騒動の原因である彼だからこそ、ここまで的確な指示をこの状況で出すことができるのだ。


 その情報を、彼女オリガ・カナエは食い入るように見ている。おそらくは、この現状を信じることが出来ないのかもしれない。キカク地域というフィールドで、これだけの惨事がおきるなど。


「わたしは――」


 そんな、彼女らしくもない言葉を吐く始末である。


「無駄な思考をしない。現状はどうにもならないデショ。それは、アスコのフィールドにいる方々に任せるしかない。こちらはこちらでやることがある」


「――あのさ、じゃあ、さっきからおまえがやってることって何?」


 コンピューターの操作をしているこちらに、彼女は懐疑的な目を向ける。


「現状、俺がもっともキカク地域の行為に貢献できることだヨ。――と、そうだった」


 自身のアタッシュケースの中に入っているそれを取り出し、通話をかける。


 それ――黒いトランシーバはしばらくの間ノイズに近い電子音を排出した後、その声を響かせた。


『待ってたよ。フタリ』


 その声は、紛れもない彼の声。統括者であり、この騒動の根幹である。モモタビ・マイリの声だった。


「どうもマイリ。どうかな気分は」

『良くも悪くもないかな。いうなれば普通』

「それは良かった。で、一つだけ提案があるんだけど」


 言いながら、横にいる彼女の顔を覗く。

 それは、言いようのないものだった。怒っているのか、泣いているのか。睨んでいるのか、投げているのか。少なくとも、その表情は一概的な感情によるものではなさそうだった。


 いや、話しを聞いたあとだからだろう。思い返してみれば、彼女はモモタビ・マイリが関わった時はいつも、このような表情をしていた。


『提案、ね。まるで、きみが僕の弱みを握っているようないいぶりだね』

「そうじゃないのカナ。今回の騒動の首謀者」

『僕は騒動に巻き込まれただけだ。重要なことはすべて復元くん一人の独断によるものだよ。僕はあくまで統括者として、自身の職務と義務において行動しただけだ。首謀者だなんてとんでもない。何をいうのかなフタリは』

「自分だけに被害がでないように立ち回るのは結構だ。そういう行動は嫌いじゃないヨ。ただし、こちらに被害が出るのなら、等しくこちらも反抗させてもらわなければならない」

『抵抗? それは、どんな?』

「ま、単純にきみの行ったことの暴露、でいいんじゃないかな。結構な証拠も残っている」

『まさか、スラムから来た人の発言を信じると思うのかい? それに、そんな証拠を僕が残すと? 実に、愛おしい発言をするんだね。フタリは』

「俺が言うワケがないデショ。そんなことをするだけ時間の無駄だ。だから代役を立てる」

『代役?』

「オリガ・カナエだ」


 その瞬間、通話機の声と、その横にいる本人の行動が停止した。


「もうハグラカシはなしにしよう。彼女、俺の隣にいる彼女はコピーじゃない」


『――ああ』


 そこで、モモタビ・マイリは今までの一番、他者に対して興味のない声を出した。


 本当に、何の興味もないように。冷めきった声で。


「きみ、彼女が本物だって、薄々気づいてたんじゃないの?」

『薄々、じゃなくて確信だね。僕の作ったものなら、もう少し僕にとって有用な行動をする』

「ああ、それできみ、彼女のことを安物(チープ)って言ってたの?」


 モモタビ・マイリはそれには答えない。


「まあいいけどネ。で、それについての脅迫だ。モモタビ・マイリ」

『脅迫ね。つまりは、どういう?』

「言った通りだよ。きみの行為を暴露させようと思う。結構な情報源でね」

『きみ、何をするつもり?』



「彼女は本物だった。なら、もう一度統括者になることもできるはずだ」


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