自信を持つことは難儀だね
「おいハリヤマ、動きがあった。というか、拙いぞ」
向こうで、オリガ・カナエを囲むようにして情報を集めているProcessingの一人がこちらに手を振る。彼らは、自身の端末と人的鎧の通信で情報を拾っているところだった。
「どんな?」
「人的鎧を作ってる工場から出荷予定の人的鎧、合計三百五十七機が一人でに動き出したらしい。いますげえニュースになってる。出荷待ち人的鎧の突然の暴動。クラッカーの仕業とみられる――だそうだ」
「――最悪だな」
「こっちにももうすぐにでも出動命令がかかるぜ。準備してたほうがいいんじゃないすか」
「ああ、うん。ありがとう」
そんな会話をしつつ、彼はこちらに顔を戻す。
「信じていいのか?」
「何が?」
「おまえらを、だよ」
「人間を信じる人間の気持ちが、俺にはまったく信じられないけどネ」
ハリヤマは呆れた顔をする。何言ってんだこいつ、という顔である。
「ま、任せてくれるっていうならいいよ。必要な要素と物もいただいたし、もう不必要なものは――運くらいかな。俺にとって、きみ達が敵に回らなかっただけでも最大の幸運なんだ。これで、おそらくは対抗できる」
ハリヤマは、息を吐く。それは、呆れたような、それでいて笑ったような、そんな分かり難いものだった。
「せっかくなら倒して来い。オレ達はオレ達の役割がある。おまえはおまえの仕事をしろ。互いの敵が共通でないことに気を付けながらな」
言って、彼は人員の元に歩いて行った。そうして、Processingの面々は立ち上がる。
ハリヤマは置いてあった人的鎧を着こみ、周囲を見回した後、肩を回す。
「あ、ところで教えて欲しいんだけど、ここら辺で巨大なコンピューターがあるとこってあるかな」
『ダムだろ、ここ。キカクのダムはほぼ機械制御だ。人間に連絡する為に通信技術もインターネットも充実してる。おまえが何をしたいのか知らないが、やることには事欠かないはずだ』
言って、彼はこちらに背をむけたまま、手を振って見せる。
『じゃあな不審者。手助けはしてやれないが、後は勝手にしろ』
「言われなくてもそうするヨ」
ハリヤマはそこで短く舌を打つと、周りの人間を引き連れて、上空へ旅立って行った。
先ほどまでいた人間が一瞬でいなくなる現象に、今の今までその中心にいた彼女は放心したようになっていた。
「さ、俺達も行こう。そろそろ、来るはずだ」
言って、彼女に手を伸ばすと、彼女もそれを握って来た。
「……信じるからな」
「誰を?」
言うと、彼女は俯いて、そのまま黙った。
「信じる人間を間違えないことだ。今、おねーさんが信じるべきは誰かじゃない」
「じゃあ、誰だよ」
「さて、まあ何でもいいんじゃない? 他人以外なら信じてもそこまでの被害を被らないよ。ああ、でも一番被害が少ないのは――」
彼女の顔に指を向ける。
「自分を信じてみることじゃないかな? ほら、資格も条件もいらないし。それに自分に裏切られる、なんてことはしょっちゅうだろ?」
「…………」
彼女は呆れたように息を吐いて、それには答えなかった。




