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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
――――報告なし
85/110

少年の部隊

『リアルタイムで訊いてたぜ。上からの手動命令を指喰えて待ちながらな。もう少しで全員命令違反で飛び出すところだった。で、そこで彼女の声を聞いて、オレ達は確信したんだ』


「確信、した?」


 彼女が恐る恐る訊く。


 その彼女に対して、真っ黒い人的鎧(ヒューマノイド)を纏ったハリヤマは、彼女に言う。




『あんた、少し前にオレの部屋にきたオリヒメさんだろう』




「――っ」

 彼女は驚愕する。まあ、よくは分からないが、つまりそれが、彼女が本物であることを言っていることくらいは容易に察しがついた。


『あ、マジ? ふーん。てか、ここにいる諸君にとっては『やっぱり』って感じなんだろうけどな。どうなの? 諸君。そこは』


 恐らく、このにーさんは周りの人間に話かけているんだろうが、その他の人物の反応はない。

 それを確認して、彼は人的鎧(ヒューマノイド)の上から肩を竦めたような態度を取った。


『青少年ばっかの部隊なんで、そこはまあ、シャイな奴が多いってことで許してくれ』


 その場の空気が変わった。というか、複数の人間の殺意とでもいうものが、一点に集まったといってもいい。


「それはそうとにーさん。俺達の行動を知ってると言っていたが、それはどこまで?」

『電車事故から。それでモモタビの行動が独立したんで、その推測まで。ま、つってもおまえらの今の状況は分からないけどな。さて、話してもらおうか少年少女』


 嫌なところで鋭い。その質問自体がこちらの不利益を被らないものであるといいのだが。


「別にいいけど。ただし、前の発言を撤回して、対応を変えるというならダケド」

『あ? なにか?』

「俺はスラムの人間ダケド、その対応について、少し考えてくれるなら」

『あ? あーあーあー。そういうことかよ』


 言って、彼は真っ黒い人的鎧(ヒューマノイド)のまま、こちらに腰を下ろす。


『おまえ、何を考えてる?』

「悪いことを。じゃないと考える意味がないデショウ」


 黒い人的鎧(ヒューマノイド)は、その場で沈黙する。


「了承してくれるだけでいいんだ。別に何も求めない。ただにーさんの権利で俺と、彼女のことを保留にしてくれるだけでいい」

『それだけでいいのかよ。おまえら、もっと厄介なことにまきまれてるんじゃねえの?』

「それは、すでにキカク地域の人間全員が、だよ。そんなことは頼まなくてももうにーさん達に仕事が回ってくることは分かっているんだし、言うだけ無駄だろう?」

『は、気に入らねえ』


 言って、彼は周りを取り込んでいる人的鎧(ヒューマノイド)の群に背を向けたまま言う。


「諸君。ここで見たり聞いたりしたことは忘れてね。まあ、率直に言うと黙れ」


 それを聞いた人的鎧(ヒューマノイド)の群は、一言ずつ。


『あ?』

『おまえが黙れハリヤマ』

『お願いの仕方にはやり方があんだろ?』

『勝手言ってんじゃねえこの給料ドロボー』


 という、罵声が飛び交った。

 一応確認するが、このヒト本当にこのグループのリーダーだよね?


『あー、うるせえな。いいから従えよ。これだからガキのグループは纏まらねえんだ。なに? ちゃんと言えば協力してやるだ? 何の意味があるんだよそんなもん。誠意? あるかよそんなもん。いーからやれって。ただ守秘義務を丸だけだぞ、簡単だろ』


 そんな、幼児なみの言い争いその場で開始された。まあ、言わなくてもわかると思うが、多数帯一である。


 まあ、こちらから話かけても、一向に話をきいてくれそうにない。


 仕方がないので、リーサルウェポンに頼る。


「おねーさん。頼みごとが」


 要件を離すと、彼女は渋々ながらも同意した。まあ、時間は限られている。これからマイリが何をするかは分からないが、あの状況で俺達に正体を晒した以上、もう遠い話でもないのだ。



「皆さん!」



 彼女が口を開く。今までは信じられないほどの大声で、である


「不躾で申し訳ない。でもお願いします。私は、もう時間がない」


 瞬間、その場で言い争っていた烏合の衆が一瞬で黙り込んだ。

 その場で一点に視線を受ける彼女だがそこはさすが統括者、慣れているのか焦ることはない。


「皆さんを危険に晒すことになりますが、どうか、私に協力してください」


 その、協力という一言に関しては、一人ぴくりと反応した。


『おい、まさかだろ』


 黙り込んだ人的鎧(ヒューマノイド)ーの群の中で、唯一黒い人的鎧(ヒューマノイド)である彼が口を開く。


『オレはあんたが何者なのかなんてことを詮索するつもりはない。それでも、もしオレの予想が正しければ、あんたオレ達に命令する権利を十分に持っていることになる。それでもだ』


 彼は、ただ一人彼女の前に近づき、彼女の頭を軽く小突く。


『今のあんたには何の権限もねえただの子供でしょ。そんな奴の命令に従えっつうのは明らかに無理があるとは思わねえか? しかも、治安員会の直属であるオレ達にだ。前にもいったことだぜ。オレ達は特定の個人を護るような組織じゃない。それに、これは俺の私論になっちまうが、オレは特定の個人を護りたいなんて思ったことはねえ』


「それは、人間ではなく、人間の作った基準の中で行動するということ?」


『そうだ。オレ達はいつだってそう行動してきた。それはこれからも変わらねえよ。言っちまえば、甘く見るんじゃねえってことだ。お嬢さん、あんたが誰かのことを思って行動していることくらいは分かるぜ。それでも、オレ達は誰かの為に、なんてことはできねえんだ』


「……厳しいね。あなたは」


『あんたが夢見がちなだけじゃないの?』


 はあ、と彼女は息を吐く。彼の言葉は、その場にいる全員の代弁のようなものだった。つまり、この場においてその発言に懐疑的な者はほんとんどいないということ。


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