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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
――――報告なし
81/110

通信の内容はつまらないものだ

「弱点、かね。片方は弱点だらけだ。自身にすら処理のできない加速など、特に問題ではないだろう。もう片方については、キカク地域にいる以上は弱点がないと言っていい。軟体の人的アーマーを用いても妥当できない。唯一の手段があるとすれば、あの少年のように爆発で散らすという荒業か、打倒にショートさせるか、通信手段の妨害を行うことだ。有力なのは、広域かつ行為力の電磁パルスを拡散させること、だろうな」


 電気によるショート。それが、あの人的鎧(ヒューマノイド)を止める為にもっとも有効な手段である。


 真正面から挑んで、あの人的鎧(ヒューマノイド)とランカーに匹敵できる存在は、キカクにはいない。


 それが何百の人的鎧(ヒューマノイド)ともなれば話は別だが、それでもあの人物には、その戦力にすら匹敵するだけの性能がある。


 そも、あれは対人的鎧(ヒューマノイド)として作成した鎧だ。そのコンセプトである限り、多人数の戦闘や不意打ちにも対応するものでなければらない。


 使いようによっては、何百というアーマーの群にも、個で匹敵できるだけの戦力となる。そんな核弾頭のような存在なのだ、あれは。


「判断は失敗だね。そんな圧倒的な戦力を、たった一人の人間に持たせるべきじゃなかった。どれだけの怪物でも、常人が集まって容易に打倒できなければ、それはパワーバランスの崩壊を招く」


「個人があそこまでの戦力を有するとは思っていなかったものでね。まあ、それでもよかった。私は開発者であり技術者だ。キカク地域全体の戦力のバランスなど知らん。、求められれば造り、求められていなかろうと造る。それが私の技術感だ」


「強すぎる兵器は人類の汚点として残るぞ? まあ、そんなことをあなたにいっても仕方がないか」


 モモタビ・マイリは、わざとらしく肩を竦める。


「それで、他に何か情報はないのか」


「情報、かね。天才技術者の顔で、そんな質問を受けるとは思わなかった。そも、その二つの人的鎧(ヒューマノイド)については、すでに彼女に話している。ノウスイ・ソウフなら、そんな疑問をもつこともなく、自身で答えを算出できるだろうに。復元身体、きみはどうやら、彼女の能力までは受け継げなかったようだ」


 それについて、彼は沈黙する。

 そう、言うまでもなく、そんなことの結論は出ているのだ。

 わざわざ問うことの方が異常であると言える。


「私の役割は終わりか?」


「そうなるね。ミシゲ・ツクリさん。まあ、あなたを復元くんに言って行動不能にしてもらったのは、一概にあなたが、彼らに助力なんてしないように。だったんだけど」


 助力。今の私になにができるのだろう。例え腹に穴が開いていなかったとしても、私に何かできたとも思えない。


「さて、では復元くん。実行に移そうか。まずはきみのオリジナルに連絡。そして人的アーマーを作成している場所に行き、きみを放つ。大量の人的鎧(ヒューマノイド)formalを乗っ取り、そこからキカク地域への革命行為を開始する。それでいいね」

「元から、そのつもりだよ。モモタビさん」


 そのとき、部屋の中に通信が入った。


 モモタビが復元身体――ノウスイに対して口の前に指をあてる。

 復元身体がこの部屋にいるという事実を隠ぺいするための行為らしい。そのため、今は口を開くなと。つまりその通信は、あくまで公式なものであることを現している。


 そうして部屋のスイッチを押すと、モニターに表示されたのは、一人の女性の姿だった。


『失礼します』

「はい。何かあったのかな」

『ついさきほど、地下交通道路で事故があったようです』

「事故? へえ、完全自動操縦のシステムの中では珍しいね。どんな?」

『ある乗用車が、突然交通路の壁に激突。大破したと』

「ふーん。でも、それをわざわざ僕に教える理由って、どこにあるの?」


 モニターの先の女性の顔が曇る。


『あの、大変申し上げにくいのですが。その事故を起こした乗用車というのが、キカク統括者用の、タクシー会社が運営しているものでして』

「うん、それが?」

『その車のご利用は、モモタビ・マイリさんになっています』


 彼は、その報告を受けて、深く笑ったようだ。

 視界はまだぼやけているため、明確には分からない。しかしその顔は、この空気感は、彼がモニターの女性が話す言葉に対して、わずかな興味を持ったことを抱かせる。


「車に乗っていたのは?」

『不明。ただ、二人組であったことが分かっています。そして、その数十分前には、車から落ちる、あなたの姿が目撃されています』

「それはただの人形だ。調べてみれば分かる」

『…………』


 モニターの向こうにいる女性は、言葉を失ったようになった。


「それで? 報告はそれだけ? 他にはなんかないの?」

『炎上した車の中から。メッセージのようなものが見つかりました』

「どんな?」

『火の星。子は野水に至るべし。父に会いたくば日のあたる水辺に進め』

「なにそれ?」

『分かりません。次の犯行を示すメッセージかも』

「それが、僕に当てられたもの?」

『まだ、判然とはしませんが』

「判然としないものを、僕のところにもってくるのは筋違いだと思うけどなぁ。まいいや。ありがとう。なかなかに面白い報告だったよ」


 言って。彼は一方的に通信を切った。

そして、その場で最も影響が見えたのは、ノウスイの姿を復元身体だった。

彼女の報告があってから、彼は今までの優位性を失ったように呆然としている。


「さて、教えてもらおうか。復元身体。きみ、今の報告から一体どんな情報を取り出した?」


 その機微を、彼が見失うはずもない。


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