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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
――――報告なし
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オリガ・カナエという少女 其の4

 リーダーになり、他の人間を率いていく人間が、最初からその目的地を知らなかったのである。


 当然だろう。どこにも行けない人間が、一体誰を導くと言うのか。


 その齟齬、摩擦が彼女の中にあることを、彼女自身が自覚した時にはもう遅かった。


 彼女は、他の誰かを裏切っているような感覚に陥り、統括者として名を知られれば知られるほど、その意識は強くなっていた。


 彼女に人間の感情は、理解できない。


 ただ求めていることが分かるだけだ。これは理解とは違う。


 そう、人間に人間は理解できない。昔と同じく、これからも。


 しかし、今の現状はどうなのか。彼らは、人民は、誰をも理解することもなく、ただ迎合している。それはつまり、人間が他者を理解するという行動を棄ててしまったということなのではないか?


 他者を理解するという行動すら棄て、その先にある他者との迎合すら拒み、それで、一体誰と行動しろと?


 無意識下で他者を求めている人間が、その事実に気付いていない。否、気付こうとも思っていない。ただ時代の風潮とかいうものに迎合するだけにし、他者との接触を拒んでいる。



 それは、不自然だ。



 徹底的な人間嫌いなら分かる。同種の嫌悪はごく自然なものだ。


 しかし、無意識下で他者を必要としながら、意識下で他者を拒むというのはどういうことか。


 感情が他者に向いていない。それでは、すべての感情は自身にしか向いていない。


 正も負も等しく、自身だけに向いている。



「どうして、そんな寂しい生き方をしているんだろう?」



 彼女にはそれが疑問だった。これだけの時間が経ちながら、明確な打開案が提唱されていないのもおかしい。


 そのころから、彼女はキカク地域の体制に対して疑問を持ち始める。


 しかし、実際に提唱し、どれだけの正当さと論理展開を挟んでも、向けられたのは同一の感情だった。



「うん。そういうことはね、言わないほうがいいですよ」



 なんだろう、それは。


 つまりは、我々はそんな意見を望んでいない。つまらない問題で面倒な論争を起こしてくれるな、ということだろうか?


 その時、彼女はようやく彼らの実態を知った。


 要は、自身に火の粉が降ってくることを嫌うだけの傍観者なのだ。彼らは。

 はたして、こんなものの為に、統括者などというものを続けていく意味があるのだろうか。


 そう思い、早くに統括者など辞めてしまえれば、あるいは、彼女は自身をずっと拘束してきた、言いようのない『何か』から解放されたのかもしれないが。


 生憎、傀儡がイトから離れることはできない。彼女は既に進み過ぎていた。


 しかし、彼女は、人と関わることを辞めようとはしなかった。


 人間の本質を知りながら、その実態に落胆しながら、それでも彼女は他者への理解をやめることはなかったのである。


 理解することは敵わくても、理解しようとすることは可能なはずだと、その思考の果てに人間に関わり続けた。


 一人でも多くの人の意思を知ろうと奮闘した。


 彼女がであった人間は、その行為の結果は、彼女にとっては棄ててしまうだけの害悪さをもっていないと感じられたからだ。彼らの口にするありがとうが、果たして上辺だけの物とは思えなかった。人間の関係は計算ではなく、利害関係では計れない不確定要素に満ちている。


 人間はマニュアルのみで動くものではない。ヒトと関わるということは、自身の欠落した部分を埋めることに等しい。彼女は、あくまでそう思っていた。どこかが欠落していない人間などいない。否、完璧に持ち得る人間は、もういなくなってしまった。他者に対しても、自分に対しても。


 結局のところ、


 人間は自身精神面において、完全な自炊行動を取れる人物は少ない、ということだ。


 彼女が考えた行為は、慈愛だった。


 他者に対して、空っぽの自分でも、その個人へは何かできるのではないかと、そう考え始じめた。無から有を造ることはあり得ないという提唱もあれば、その逆もあり得る。


 例え傀儡でも、誰かの、一時の友人になることはできるのではないかと、そう考えた。


 その結果が、彼女の支持率である。当初はただの笑いの種でしかなかった『オリヒメ』と蔑称も、いつしか憎しみが抜けた呼称になっていった。


 人を知ろうとするのも、彼女もまた、他人を理解できないが故。


 彼女の思想は次第にキカク地域そのものへの否定に傾倒していくのも自然の流れだったと言える。彼女は再度学校教育の再興を唱え、より人間のコミュニティを形成する環境の創造を目指した。


 オリガ・カナエ十六歳。そこで彼女はあることを知る。


 モモタビ・マイリの真相である。


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