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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
復元身体を確認。警戒令を発令
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サヨウナラ

『ちょっと、拙いカナ』


『おや、降参してくれるのかい?』


 まあ、できればそうしたい気持ちでいっぱいなのですが。どのみち命が失われるのであれば、残念ながら本来の降参の機能は失われている。


 なので、結論はNO。生きるか死ぬかを問われているのに、後者を選ぶ馬鹿者がいますかね?


 彼はこちらに踏み出す。その間合いを測る。


 距離十五m弱。一秒の半分以下の時間があれば、容易にこちらの首を落とせるだろう。


 しかし、この何時間かで分かったこともある。


 彼はランカーではある。事実俺よりも操作は優れている。純粋にぶつかったんじゃどうしようもない。あっさりと終わってしまう。


 しかし同時に、ランカーではあるが、対人戦のヒトではないようだ。刀を持った時、その動作で分かった。そこが、彼、キカクのトップランカーハリヤマ・ネズとの大きな違いである。


 腕が振られる。位置は腰のあたり。


 刀身が横に薙ぎ払われる。


『ん、っと』


 その刀を掴んだ腕を掴み取る。熱刀は停止し、その体全体をこちらが支える形となる。


『やっぱり、ね』


 彼の足を払う。片足を弾かれた復元くんの体は容易に地面に伏した。


 軽い。それは人間の体重ではない。どれだけ多く見積もっても、精々が三十㎏というところだろう。


 倒れる肉体。腕は掴んだまま、関節を曲げ、人工筋肉が作動しない位置にくると、その腕から熱刀がこぼれ落ちる。


 人工筋肉の活動限界である。所詮は伸縮しかできない物体が、妙な位置でねじれが起きた場合、正常に動作を行えなくなるのは必然だ。


 彼の手が熱刀を拾い上げる前に、その唾を拝借する。


 またもや軽い。熱刀は、厳密には斬るのではなく溶解させるたけめの装置であるため、適度な重さは不要だと考えたのか。


 復元くんが起き上がる。、片手を地面についての、腕一本で全身を押し上げる形になる態勢で宙返りをするような動作で地面に足を付く。


 こちらはそんな彼を背にしながら、右手に熱刀を掴み、彼の方向に大きく一歩を踏み出す。真上から見れば、丁度こちらがぐるんと回転した形になる動作。


 もちろん、その回転の初動につられて振られるのは、熱刀を持っている右手である。


『…………!』


 高熱の刃が、白い鎧に衝突する。


 切断、次いで、溶解。


 位置は右のわき腹。赤色の閃光と橙の火花を上げながら、その白い機体を断ち切る。



『な……ば』




 結果としては、


 右半身を半分以上も切断された、白い鎧がそこにあった。


 そう、鎧である。ただの鎧。



 中に人間がいるわけではなく、完全な無人状態であった。


『なぜ、分かった?』


 ノイズ交じりの音声で復元君が言う。うーん、どうするか。教えてあげてもいいんだが。


『まあ、やっぱ軽いよね、きみ。アーマーの重量を足しても軽すぎる。だからその中には何も入ってないんじゃないかと思った。それは完全な遠隔(リモ)操作(ート)で、空洞の鎧が俺達の前に現れた、という仮説が浮かんだだけだよ。ついでに、そもそも道ずれ覚悟の電車に乗ってたのもイイヒント』



『それだけで?』


『いや、まだあるよ。そのアーマーの開発者だ。ミシゲ・ツクリ。彼はそのアーマーの機能を通信面に特化させたものだと言っていた。じゃあ、それって遠隔のこといなんじゃないかなーと思ったダケ。彼教えてくれなかったからね結局』


 ふう、と向こうが息のような物を吐いたことが分かる。といっても電子音だが。


『あなたにそこまでの戦闘センスがあるとは思わなかったが』


『そんなもん最初からないよ。ただ、才能(センス)じゃなく、技術と知識があっただけさ』


『技術?』


『そう。といっても齧りなんで、威張れたもんじゃないんだけどね。でもまあ、少なくともこういった武器の扱いくらいは知ってるつもりだ。お粗末に腕だけを動かす、なんで愚行は起こさない』


 そう、こういったつばぜり合いにもっとも必要なのは、足回りである。


『野球と同じだよ。ボールを投げるのもバットを振るのも、先ずは初動の踏込み(エッジング)が肝心だろ? 運動動作とそのブレーキの配分くらいは心得ておかないとね怖いし。ただ、それを知ってただけのことデス』


『――SHI、SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHI SHIっ』



 笑う。馬鹿馬鹿しさから、彼はただ笑う。


 そんな見落として、そんな間抜けで失敗したのかと。


 そう、彼の敗因は単純かつ、ケアレスの部類に入る物だ。子供の敗因に等しい。


『難儀だねぇ。個人の馬鹿で失敗するなんて』


 けらけらと笑う。この状況で笑っていられるのは、ひとえに彼が生身ではないからか。


『分かったら、もう大人しくしててくまセンかね? 俺、ちょっと面倒事は御免デス』


『いや』


 そこで、ほとんど切断されかかっている動体を、ぐるりと回す。中が空洞だからか、その動作はひどく軽い。


『悪いけど、目的は果たさせてもらう』


 そこで、気が付く。


 切断された空洞の体の中に、何か黒い、大きなものが入っていたことに。


 そもそも、あの人的鎧(ヒューマノイド)の機能は、体中から小型のC4爆弾を射出可能なことだ。まあ、開発者曰く、これは開発者が搭載したものではなく、後に鎧を手にとった人物が付加した機能であるらしいが。


 まあ、鎧の内部が空洞であったらば、その中には本当に何もなかったのであろうか。


 そんなはずないよなぁ? 隙間があれば詰め込みたくなるのが人間の性分なのだ。


 破損した、人的鎧(ヒューマノイド)の内部には。




 ぎっしりと、粘土状のプラスチック爆弾が詰め込まれていた。




『――げ』


 確かに。


 内部からプラスチック爆弾を射出するなんていう機能、中が空洞でなければ実装できないものだろう。


 破損した白い人的鎧(ヒューマノイド)が、全力をもって、その電車の架線部分に張り付く。


 俺は? 


 それを見た瞬間に逃げたに決まっている。踵を返して一直線に、元の電車の内部に戻ろうとする。職員用のドアを掴みそしてそれを開く。


 そして、巻き込まれた。


 巨大な爆発。その爆炎と爆風による衝撃で、俺の手はドアから離れる。


 人的鎧(ヒューマノイド)の内部に詰め込まれていた大量のプラスチック爆弾は、電車の架線部分を大きく破壊し、そのまま周囲の大気を食いつぶして、俺の位置までその衝撃を伝えてきやがった。


 当然、ドアから手が離れたことで俺の体を支えるものは他になく。


『あれー』


 そのまま、俺は電車の下へと落下した。

 




 まあ、次があるのなら、また会いまショウ。


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