電車には変人が散見できる
現在、キカク地域に張り巡らされている路線は毛細血管のレベルにまで到達する。地面の下に位置する為に作り放題なのだ――というのが消費者からの目線である。
キカクの下を走っている電車の用途は人を運ぶためのみではない。線路の拡張により、純粋に物資を運ぶための乗り物としても利用されるようになったのである。
まあ、物資を運ぶだけなら数十年前にも確率していた。電子時代と呼ばれる以前の時代である。しかし、連日人を乗せるための電車が大半を占める中で、その運搬車両は肩身の狭い状況であった。しかし地下に線路を張るのならそれも解決ができる。上下に線を張ることが可能になった為、物資輸送専用線、人専用線に分かれた結果、物資運搬のコストが格段に下がったのである。
結果的に現在、いくつもの線があることで電車による運搬の制限もないため、物の運搬は大方地下の電車が担っている形になる。
その結果、車両一つに五十トン以上の物資が乗せられることは必然であり、その電車の外見は、必要に応じた形になる。
となれば、それが人間の車両にも適応されるのは時間の問題であった。
で、現在。
俺達は異常なまでに巨大なホールの中にいた。というより、巨大な筒である。菓子が入った筒を真っ二つにして、下の部分を平らにいたような構造で、その長さは一両五十mもある。
その構造で本当に曲がれるのかという部分が甚だ不安になるが、その疑問も目の前に広がる光景で掻き消えてしまう。
「広っ」
それが乗った時に出た感想だった。
広く取り過ぎである。地下トンネルをどれだけ広く掘れば、これだけの巨大なものを走らせることが出来るのか。
「ね、すごいでしょ?」
そして一名、自分のことのように車両を自慢する面倒な統括者が一人。
これは、電車というよりは街そのものが動いていると見ても間違いではない。
目の前に見えるのは幾百という人間の群れである。彼らは一様に端末で誰かと連絡を取り合っている。先ほどのホームでの一見のことを報告しているのだろう。マナー違反。
そもそも、あれだけの騒ぎがあって、今もこうして電車が運用されていること自体が異常なのである。まるで、あのホームから逃げるかのように出発した電車に対しての、わずかな不安と、一刻も早くあの場所から逃げ出したいとう危機感地能力が同時に成立していると考えている。それはとても自然なことだ。この自然とは無関係になったこのご時世でも。
「で、本当にここにいるワケ?」
「そのはずだけどね。ま、探索はしなくてもいいよ。あちらが動いたら動けばいいんだから」
「そりゃ、ありがたいけど」
彼女をだだっ広い空間に数百とある座席の一つに座らせる。下半身そのものを動かせない彼女でも、その椅子には器用に座って見せた。
その顔を見て、決断する。
「マイリ、ここ売店ってないの? 帽子か何かがほしいねやっぱり」
現在、彼女の容姿はその長い髪と顔がそのまま剥き出しになっている。今のままでは誰も気が付いていない様子だが、それも時間の経過で分からない。
「あるはずだよ。でも場所が違うかな。行ってくる?」
「――あるんだ。文明ってスゴイわ。そんじゃ、ちょっと行ってくる。留守にしている間は気を付けてチョーダイね」




