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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
processingの人員が負傷。故に最強のランカーを向かわせる。
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邪魔な誰かと芸術家

『――くそ』


 しかし、実質的に勝者であるところの男はその口調が優れない。


 そこで黒い鎧が足を付いたことを確認する。あちらももう活動の限界だったか。


『おい、少年。意識落とす前に吐けよ。あのお嬢さんどこ行った? んで、あれは一体何なんだよ』


 アレとは彼女のことを指しているのか。なんというか、公的機関の人間の癖に、ずいぶんと粗末な扱いをするなぁ、このヒト。


『……そんなの、俺が知りたいケド』


 まあ、別に知らなくてもいいのだけど。


 それを聞くと、黒い人型は落胆したように舌を打って、地面に手をついた。

 とりあえず、こちらの目的は果たされた。


 この人物を行動不能にするという、当初の目的だけは。


『骨折っただけ損かよ――ったく』


 そんな悪態を吐きつつも、向こうの人物は俺に最後の一撃を見舞おうとはしない。


 こちらがすでに行動不能であり、あと数分もすれば意識が落ちることを認識しているからだろうか。


『あー、疲れた』


 そんな、今までの行為を行ってきた人物とは思えないような台詞を吐いて、その場に仰向けになるにーさん。いや、本当になんなんだろうこのヒト。


 その瞬間、視界に一つの黒い影が見えた。


 目の前の人物ではない。なんだろう。向こうから、この疑似的な空の下を、白い建物を走って欠けてくる人物が見える。


 大きさは人の身体ほど。それは異常なまでのスピードでこちらに接近している。


『――ん? なんだ?』


 ハリヤマが声を上げる。一瞬、彼のグループの人間がこちらに来ているのではないか、という考えが頭をよぎり、ますますの諦めに入るが、向こうから来た者の姿を見てその思考を投げ捨てる。


 向こうからきた人物は人的鎧(ヒューマノイド)に身を包んでいた。そこまではいい。何もおかしくはない。普通に考えれば、ハリヤマが通信から呼び寄せた仲間が到着した、で済むだろう。


 しかし、その人的鎧(ヒューマノイド)はformalではなかった。


 配色は白く。様相は白い雌獅子。つまり、今、俺が纏っているアーマーと完全に同一の外見を持ったものだった。


『なんだ、ありゃ』


 疑問の声は、ハリヤマからも挙げられる。


 そうして、その白いアーマーはこちらの姿を確認すると、ハリヤマと俺のいる建設物に着地した。


 そうして、その白い頭で、俺とハリヤマをゆっくりと視野に入れる。



『ふうん。そういう結果になったワケか。難儀だねぇ』



 鎧か発された声は、か細い、性別を疑うような両性的な声だった。


『さすがにトップには勝てないかー。ま、そうだろうね。あんまり期待はしていなかったし。ま、これはこれで十分な成果といえるでショウ!』


『おまえ、誰?』


 少なくともの目の前の人物が、自身の協力関係にない人物であることを確認したハリヤマは、その瀕死を悟られないように声を出す。


『ボク? ボクは復元身体だよ』


 その名前を聞いた瞬間、その場の空気がぴしゃりと張りつめたことを確認する。


 対して、こちらの様子に目もくれずに、自称復元身体は白い建物の上を歩く。まるでその仕草そのものが、こちらへの暗示だとでも言うように。


『キカク地域のトップランカー、その中でも最も特異な存在であったハリヤマ・ネズ。そしてボクがことを起こした時のアーマーとまったく同じ方法で出てきてくれたスラムからのお客サン。ようこそいらっしゃいましたお客サマ。このボクが復元身体です』


 この場に同じ姿形をしたアーマーが二つ。この事実を、黒いアーマーに乗った彼はどのように受け止めているのか。


『――ああ、なるほど。そういうわけかよ』


 彼は、合点がいったという風に立ち上がる。傍目から見てもそれは、体の不調を隠しきれないほど無理のある動作だった。


『オレ達は、おまえの誘導にまんまと乗ったってことかよ。蟻と砂糖みたいに』


『そうですね。実に有能でした。お陰でボクは、これでやっと自由に事を起こせる』


『オレが動けなくなることそのものが、おまえにとっての作戦だったと?』


『無論ですかね。ま、お礼はそこの来客に言うとして、ボクの目的はまだ達成されていません』


 あ? と不機嫌そうな声を発して、ハリヤマは相手に目を向ける。


『ボクの目的は、あなたの行動不能ではなく、あなたを殺害することそのものにありました。故にその行動はまだ継続されています』


『へえ、そう』


 ハリヤマは臨戦態勢に入る。その恰好そのものに問題はないが、彼の肉体はどう考えても限界を超えている。


 その状態では、いくら彼でも勝敗は目に見えている。そもそも俺の目的が、彼を行動不能にすることだったのだから。


 しかしその瞬間、彼の身体が爆発した。


 爆風は鎧の全面。そこからいきなり爆炎上がり、彼の肉体を十mほど吹っ飛ばした。


 本当に一瞬の出来事で、すぐには何が起こったのかを認識できなかった。


 復元身体に特に動きは見られなかったのも要因の一つかもしれないが、それにしても速すぎる。攻撃の初動すら見えなかった。


 吹き飛んだ彼を眼で追いながら、復元は背に背負っていたあの熱刀を取り外す。にぎり部分のスイッチを押し、その刀を起動する。


『お、まえ』


『姑息な手を使ってしまって申し訳ない。けどボクには、こうでもしなければあなたの殺害は不可能だった』


『は、けどその姿で出て切ったてことは、結局なんの匿名性も維持できてねえよ』


『それは、ボクがあなたを殺害する映像を残せば、でしょう?』


 そこで、沈黙が訪れる。


『オイ、マジか』


『お察しの通りです。ボクは、この一帯の記録システムを操作しました』


『なんでそんなことが出来る? おまえ、何の権限で』


『それだけ、ボクも本気だということです。それに』


 その熱刀を転がった身体に向け、彼は言う。


『あなたの正義は、ボクの方針には不要だ。この時点で、あなたはボクの弊害でしかない』


 白い脚が動く。それは人的アーマーの初動を持って、行動不能となっている彼に突き出される。


 その足を、完全に彼がすっ転ぶタイミングで払った。


 頭から激突する復元くん。その体躯は、完全にシュールに、さながらギャグみたいに頭から転ぶことになった。


『ストーップストーップ。何二人で楽しい会話をしてるのヨ。俺を無視しなさんナ』


『…………』


 完全に出だしを挫かれた復元くんはこちらを向くと、落ちた熱刀を見て、ゆっくりとこちらに立ち上がった。


『――ああ、これはもうしわけない。一世一代のチャンスに思わず認識が遅れてしまった』


 言いながら、彼は熱刀を拾う。


 たぶん、これは次の瞬間俺の首を刎ねにくるんだろうなー、というのが直感で分かる。


『おい、復元』


 そこで、後ろから声がする。先ほど謎の爆発で吹っ飛んだばかりの、ハリヤマ・ネズだ。


『おまえが、オリヒメ殺害の犯人で間違いはないんだな?』


 なんだろう、それは。オリヒメ、というのはもしかすると、殺害されたというオリガ・カナエのことだろうか。


『そうだよ。彼女は少し間違った方向に進もうとしていたからね。行動が激しくなってきたから手を打ったんだ。だって、あれは駄目だよなぁ? 人間の興味関心を惹きつける魔力を持ってる。そんなんが上に立ってたら、本末転倒だろ?』

『ふーん』


 興味もないという風に、彼は口にする。


『今の、自白と取っていいんだよな?』

『そうだね。でもここで死亡(ロスト)するんだけど』


 人物が剣を持つ。同時にこちらに剣を振ってくる。位置は首。こちらの予想通りに、そのては殺害を目指してきた。

 


『Starry sky bottomtfire field Ⅰ、Ⅱ』

 


瞬間、足の裏が爆発する。


過度な推進。ロケットのような加速は、一直線に目の前にいるハリヤマに衝突し、その体をを建設物の下に叩き落す。


十数mから落下する二つの体躯。それは着地のインパクトを完全に計算にいれていないものだったが、まあ、人的鎧(ヒューマノイド)なら大丈夫だろう、という完全な楽観だった。


そしてその楽観は的中する。俺達は、たまたそこに停まっていた車の上部に衝突し、そのまま車のエンジンに身体を運ばれることになった。


そしてちらりと見える、車のドアからのポイ捨て。棄てられたものは煙草の吸殻ではなく、一つの缶だった。


瞬間、白い建設物を覆う道に、大量の煙幕が展開される。空気の周りが悪いため、ほとんど煙そのものは流れない。そのまま、車はルートを知っているかのようにアクセルを全開にしてその道を疾走する。俺達はその車もとい命綱に捕まることで精一杯だった。


あまりに都合の良過ぎる車両に人的鎧(ヒューマノイド)を纏ったまま乗り込む、どう考えてもの暴力集団のそれだが、運転手は我々のことなど知らないというかのような無視っぷり。


車は人的鎧(ヒューマノイド)を纏った思い人間を二名も載せていることにより、全速力でもそこまでのスピードは出ていない。そのまま、車は地上から入れる地下道路の入り口に煙幕をきって入って行く。


『おい運転手。急で悪いんだが、治安委員会の施設に行ってくれないか? そこで少し……』


そこで、ハリヤマくんは口を開くことを止める。それは、運転手の顔を間近に見たことが下人だった。



『ミシゲ・ツクリか』



そう言われて、ひょっこりとこちらに向き直ったミシゲさんは悪びれない様子でああ、などどと声を出してくれた。


『久しぶりだね、トップランカー。私の作品は元気そうでなによりだ』


私の作品『は』というところで、俺達は沈黙した。


こいつ、完全に鎧の心配してかしてねえ。


 この行為も、ひょっとすると自身の作品を救出するための行為なんじゃねえかと思うほどの愛想のなさっぷりであった。



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