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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
processingの人員が負傷。故に最強のランカーを向かわせる。
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決着目撃

 あちらの剣の切っ先がこちらに伸びる。両手を使っての刺突である。


 距離的には避けられない。――というより、ある武道において、その刺突は人体では躱し切れないことが分かっている。禁じ手とされた三段突き。人間の反射でも動作でも必ず当たると言われた、その動作。


 ――だがそれは生身の話である。



『Starry sky backfire field Ⅲ、Ⅳ』



 爆破箇所は全面。背面に比べれば装甲が薄いため、より大きなものとなるが、同時に、私の前にいたハリヤマもその爆風を喰らう。


爆炎の中から、剣が突き出てくる。爆風を全く恐れることなく攻撃を再開したのか。人的鎧(ヒューマノイド)である以上、外部からの爆破によるダメージはあり得ない。視界も爆炎による光に焼付くこともない。それを見越しての判断か。


だがその範囲にすでに私は存在しない。全面からの爆発により、私の身体は異常なスピードをもって背後に加速する。



『Starry sky lightfire field Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ』



命令する。止まることは許されない。あの人物はこちらが好きに減速をできないことを知っている。だからこちらの動きを読み、最終的な攻撃を読むことができるのだ。


真横へ移動する。この時点で俺の肉体はすでに動かない。限界なのだ。之だけの衝撃をうけて瞬時に動けるわけがない。


 そこで、発見する。上から速度をもって落ちてくるモノ。その位置はこちらから視認できる。位置も予想と大差はない。


 落ちてくるそれを掴み取る。同時に腕に負荷がかかるが、それは若干の減速によって阻止される。どうにか、態勢すべてを崩すまでには至らなかったようだ。

 ピンを抜く。位置的には相手の真横に位置する。上から見れば三角形を描く過程を移動しながら、最後の曲折(ばくはつ)を実行する。



『Starry sky backfire field Ⅲ、Ⅳ』



 位置はあれの背面。その速度を持って、すでに投げ出されるだけになった肉体が飛来する。


 しかし向いた。あの人物は、三回の加速を持ってしても対応した。その剣を、こちらの位置に据える。


『王手』


 突き出される熱刀。その速度をもって突進すれば、そのまま串刺しにされる。しかし止まれない。既に加速は終わっている。身体の自由は失っている。あとは、衝撃に従ってその場に向かうのみ。


『――ぐ』


 腕のみを動かして、持っていたものを正面に向ける。


 手首の動きだけで、それを放った。


 瞬間。


『――なん』


 周囲五十mを焦土と化す爆発が両者に展開された、


 それは膨れ上がるような力量を持って周囲に拡散される。


 それまでただよっていた幾千の磁気が拡散する。


 爆風と熱量で焼切れる。


 幾千と存在していた黒い嵐は、巨大な橙の熱量によって瞬間的に溶け切った。


 崩れる物体。


 爆ぜる回路。


 網膜と視覚を潰すだけの爆風をもって、半径五十mを破壊した。


 …………



 ………………




 ……………………





 いや。


 いる。


 私が相対した相手はそこにいる。


 私が倒れていたのは、爆破距離から十数m先の地面だった。


 見回して、確認する。地面――と言っても、連なる建設物の頭の部分であるようだ。


 爆破した地点は、べこりと、わずかに凹んだように抉られている。


 そこは住居ではない。


 数ある建設物の中でも、巨大な倉庫として使われていた場所だ。


 人的鎧(ヒューマノイド)のセンサーで人がいないことは確認した。その為、死者はいないはずだ。また、倉庫であるが故にその外装は通常の建築物よりも厚く、更に断熱と耐火加工を施されているため、損傷はすくない。


 そして、その凹んだ場所に、橙と赤の光が立ち上り、消費された大気が黒い煙となって昇っている。


 その中心。


 たとえ熱そのものを防いでも、急速に酸素が消費されるため、外部からの酸素を取り込めなくなったその場所。


 そこに、彼は未だ立っている。


 衝撃を受けてなお、その場所から吹き飛ばず、衝撃の力量を最小にとどめて。


 その黒い人物は、こちらを凝視していた。


『――ふ』


 自然と、口が歪む。


 これはいい。面白い。アレは、本当に人間である動作を超越している。というより、人間を越えている。


 こちらの性能では圧倒的に劣っている。純粋な性能面のみの勝負では、まず惨敗。


 しかしこの状況はそれとは異なる。もし本当に性能だけの勝負であるならば、とっくに勝負はついている。いや、勝負にすらならないだろう。


 影が動く。こちらも立ち上がる。通信のシステムが狂ったのか、以前のようなキカク地域の建物に付着しているマグネットを纏う様子は見られない。


 こちらも、機能を使い過ぎた。もう一度でも使えば、こちらの肉体が崩壊する。自身の足で直立して、それがよく分かった。


 この肉体は齢十五歳の矮躯だ。そんなものがあれだけの衝撃に耐えきった、という方が、この時点では十分幸運と言えるだろう。


 あちらのアーマーがこちらの建物に移動してくる。たった一飛びで数十mを移動する。


跳躍から二本の足を白い建物に直立させる。衝撃緩和の態勢が不自然だ。以前の彼の動作では考えられないほどの不自然な行動になっている。人的アーマーに爆風のダメージが通っているわけがないが、その爆風を無理に耐え切ったことで、中の人体に不良が出始めている。


 互いに体は満身創痍。しかし、まだ目の前の人物は稼働している。


『あのだね、ハリヤマくん』


 とりあえず、こちらから提案する。


『互いに肉体は限界だ。どうかな。ここは一度、互いに撤退するというのは』


 ハリヤマ・ネズは黙ってこちらの言葉を受けて、肩を震わせた。


『いいな、それ。確かにもう限界だ。――ていうか辛い。痛い。疲れた。速いとこ戻って休暇願い出して家に帰ってシャワーとか浴びて痛いところに湿布張ってさっさと寝たい。今まで起こした事件はさっさと起きた後の自分にまかせて責任放棄して今は寝たい。おまえもそれには完全に同感だろ?』


 言うまでもない。この時点において、この人物と私の価値観は同一である。


『――けどまあ、おまえみたいな面倒を、この場で片付けるのはこの瞬間以外にはないからな』


『それも、同感だ』


 この場において、両者の意見は一致した。


 あとは、目の前の者を排斥するのみ。


 覚束ない足取りで、向こうの人物は態勢を取る。足取りが心許なく、重心が安定しない。


 走るとしてもどれだけ行えるか。


 技量は明らかにあちらの方が上だ。すべての要素は向こうに見方をしている形になる。


 向こうの黒い脚が動く。初動から一蹴りで間合いに接近する。拳を握ってはいない。その動作は、相手を拘束し、関節を拘束することを目的としている。単純な打撃そのものが人的鎧(ヒューマノイド)に通じないのなら、中の人体を曲げる方法を取っている。


 対して、こちらは打撃したすることがない。対人のための技術などない。


 あくまで、スラムの中での危険回避を行うための、防衛技術しか有していない。


 故にこちらが行えるのは、相手を牽制し、遠ざける技術のみ。


 こちらの腕を掴もうとする手を弾き払い、その足元を蹴りつける。


 重心を支えきれないのはあちらも同じだ。途端に態勢を崩す黒い体躯。追撃は必要ない。これは互いにどれだけのダメージを与えるか、という勝負ではない。


 単純にどちらが先に倒れるか、という勝負である。ならばそれは蓄積であり、明確な人体の限界を目指す行為である。


 ただ立っているだけでも、我々の体力は消えている。否、私に限ってはもうあと十分が持つか持たないかだ。そんな状況でぶつかり合う必要はない。


 ――だが。


『――っ、……!』


 向こうは向かってくる。息を吐きだしながら、そのふらふらとした態勢を前倒しにして、こちらの無力化を目指して飛び込んでくる。


 迎撃の態勢に入ることは容易である。踏み込みから腕を突出し、拳を振るう。

 対して、向こうは手の甲でこちらの拳をあっさりと弾いた。受け止めるのでも相殺したのでもない。ただ直進してくる力量に対して別の方向に受け流した、といった方が正しい。


 身体を回す。こうなってしまってはもう攻撃を縫いながら決定的な一撃を叩き込むしかなくなった。片足を上げ、肉体を一回転させての後ろ回し蹴り。


 それを、こちらは腕のみで防ぎきる。


 ここで、私は足を出したことを後悔した、これは私のミスだろう。今まで自身の態勢を崩さない為に無理な蹴りはしなかったのにも関わらず、咄嗟の判断で、即座の戦闘不能を目指したために威力を重視してしまった。


『――は』


 向こうが笑ったのが確認できる。無論、向こうの顔は認識できないが。


 残り一本の足を弾かれる。態勢全体が崩される。百㎏の体重は即座に地面に倒れていく。


 そうして、黒い人体の両手がこちらに伸びていることを確認する。


 片手はこちらの首を掴み、もう一つの手は拳を作りこちらの顔面を殴打するために扱われる。


 かつ、こちらの肉体をマウントし、完全に動きを停止した上で何十、何百という数の殴打をおこなわれる。人的鎧(ヒューマノイド)の、最強の盾となる装甲を破るまで。


 そうなれば勝敗が決する。疑うまでもなく、自明として。


『ぬ――、づ』


 片手を下に突き出し、地面を掴む。人工筋肉を最大限に稼働させる。指から手首へ、腕の関節へ、腕の関節から腹筋へ。その動作を持って、片手で自分の身体を持ち上げ、見様によっては片手で倒立をしているような形になりながら、黒い頭を蹴りつける。


 インパクトは側頭部分。衝撃は相手の上体を吹き飛ばす程度。


 それでも相手は倒れない。衝撃を受けながらも態勢を立て直す。


 こちらは両手を地面に突き、上に向いた足を地面に降ろして着地する。


 次に前を向いた時には、すでにこちらに接近したハリヤマが足をしならせて蹴りを放っている光景だった。


 辛うじて頭を下げてそれを躱すと、更なる追撃があちらから迫ってくる。


 そこから、一秒間にインパクトの瞬間が四回もの衝撃が重なる。


 人的鎧(ヒューマノイド)の高速性に完全に依存した形になる連撃。


 蹴りを拳で対処し、拳を蹴りで対処する。


 その攻防は確実にこちらの視野を狭め、正確な判断力を失わせていく。


 拳がこちらに突き出される。それをこちらが対処しようとした瞬間、その拳は途中で止まり、あの黒い人的アーマーは高速で身を回し、私の後ろに回り込む。



 フェイント……!



 瞬時、こちらの後頭部に衝撃が走る。次いで、約数回の衝撃が背後に集中した。


 初撃から相手を行動不能にするための連撃。すべての打撃を関節に集中させる。


 結果的には。




 それは誰がどの位置から把握しても、明確な私の敗北になった。


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