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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
技術廃棄街への制圧を一時中止、監視に努める 行方不明者二名
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視点移動――キカクの住人の一日

 白い企画的な建造物は窓の外にある日光を、白い建造物へ反射させている。


 キカク地域と呼ばれる地域がなぜこのような造りになっているのかといえば、それはここの住民が、等しく外部に出ないことを意味している。建造物と建造物は地下で繋がっているし、道路を走る車なども皆地下を走っている。


故に外をうろつく人間はおらず、そのため内部で生活する人間を護るために、光を反射する白という色が選ばれたのだ。


 より強固な対策としては黒系統が適切だが、そちらは世中に人間の方向感覚を損ねることと、あまりにも見た目が異様だと言う馬鹿みたいな理由で却下された。


故にキカク地域の建造物は皆白色で、しかも等しく長方形である。建造物を長方形にしたのは、そこを人的鎧(ヒューマノイド)が走行するという想定為に基づいた配慮だ。いわば人的鎧(ヒューマノイド)専用の道路のようなものと言える。


 なので、ここから見える景色になんの面白味もない。ただ光を反射している幾何学的な建造物を、なんの感想もなく、ただ見ているだけだ。


 いや、なぜこの部屋に窓があるのいかが既に不思議ではあるのだが。設計者はどういった意図を持って、ここに窓を取り付けたのか。その理由は今でも不明である。


「センセー! ひさでーす!」


 そうしているうちに、とある人物が部屋の扉を蹴り破って入ってきた。


 ……うるさいのが来た。それも騒音レベルでの奴が。


「いたんだ、ノウスイさん」


 窓から顔を背けて口を開く。そこには、子供なのか大人なのか。、その判別がよく分からない低身長の女がいた。髪を後ろで束ね。私と同じような白衣などを着ている女が。


「休暇とかとれたんだね」

「ええまあ、んで、あまりにも暇なんでセンセーんとこに来たわけです」

「暇――ね。あなたの定義だと退屈の意味合いが強いね。休暇って、そもそも仕事以外の自身の目的を叶える為に使うもんだと思ってた」

「あたしに夢なんてないっす。あたしはぁ、仕事の合間にセンセーにちょっかい出すのがライフなんですから」

「そろそろ移動願いとか出しても文句は言われないかなー」

「なるほど、そう来たか」


 けらけらと笑って、彼女は私の前にある一つの骨格を見上げる。


「どうです、それ」


 彼女は言って、その骨格に触れる。


「なーんか。センセーの作品にしてはヤワですよねー。どうしました? 最近なんか落ち込むことでもありました?」

「その質問の意味は分からない」


 私は言って、彼女から目を離す。そうして、自室のコンピュータをいじり始めた。


「センセーの作品としては、いくつ目ですか、ソレ」

「数えていないよ。自分が作ったものを数えてなどいない。私は、自身の作品を、どのように仕上げ、どのように完成させるか。そして作り上げたならば、その先は果たしてどうするのか。そのことにしか興味はないよ」

「きゃー、カッケー!」


 騒がしさはいつもの通り。彼女は狭い私のオフィスで跳ね回る。


「ノウスイさん、部屋で騒ぐのはやめて。あと、あなたがここにきたのは私に会うためじゃないでしょう」


 ノウスイ・ソウフは私の技術スタッフの一員だった人物だ。

 

 人的鎧(ヒューマノイド)を製造すると言う、そういった荒唐無稽な技術スタッフの。見た目こそ子供そのものだが、彼女は天才でも必ず二度は落ちると言われる技術セミナーを一発で通過し、なおかつ単身で汎用性の人的鎧(ヒューマノイド)を作り上げた人物だ。こうは見えても博士なのである。


 で、この人物は今では完全に独立して、今では私は同業だ。間違っても「センセー」と呼ばれる筋合いはないのだが、本人はそれを拒否している。これは、舐められていると取っていいのだろう。


「ええ、ま。一週間後に行われる人的鎧(ヒューマノイド)の博覧会の下見をば」

「あなたもスタッフだろう。準備は?」

「分かってる癖に。一月前にぜーんぶ終わりました。今のセンセーみたいに必死こいて作業してはいません。要領は最高ですから、あたし」

「あー、そう」


 いい返すこともない。この人物は誰がどう見ても、徹頭徹尾完全無欠の優等なのだ。


「ところでセンセー、一月前の事件憶えてます?」

「そりゃ、ね。それにあなたね、こちらも大損害を被ったのに忘れるのは太すぎる」

「あたしは少し前まで忘れてましたよ」

「あなたの作品が、確かスクラップになるのを見ているしかなかったと喚いていなかったか?」

「そんなのすぐに作り直せます。そもそも、設計図は無事だったんですから」

「じゃあ。今回はそれを?」


 ノウスイは答えなかった。言わなくても分かるだろう、ということか。


「センセーは、今回はこれを?」


 ノウスイは目の前に設置されている骨組みを指しします。何故か、その顔と声は好奇の色で満ちている。


「いいや、どうなるかも分からないものを発表しようとするほど、若年に溢れてはいないかな。それに、そんな不確実なことをしては、こちらの職が危うくなること請け合いだぞ」

「そうは思いませんけど。あたしセンセーの作品のファンですから」


 あーそう。


「――とにかく、私は今回これでは出典しない。…………。ところで、ノウスイさん。あなたの休暇――といったが、それもしかすると、賃金を払ってのもの、かな」

「そうですよ」


 この人物は、いわば人的鎧(ヒューマノイド)のエキスパートだ。人的鎧(ヒューマノイド)の商業は、一度流通に適用されれば、人的アーマーが会社に適用され、顧客が現れる限り、そこから無限に収益を得られるシステムになっている。


 大変な邪推にすぎないが、この人物の総合資産は二十代前半で既に数十億を超えている。いまさら労働の意味をなくした彼女にとって、仕事などというものは単なる、小さな義務と自身の精神の安定感を取るための指針。そして適度な娯楽の一環にしか過ぎないのかもしれない。


「…………。それは非常に貴重な時間じゃないか。そこまでして、私に会いに来た理由は?」

「だーかーら、一月前の事件についてです」


 何の話を持って来たのかは分からないが、彼女は執拗にその話を求める。


「私はその場にいなかったので、大したことは知らないのだが、それが?」

「その時に侵入してきた人的鎧(ヒューマノイド)、知ってます?」

「ああ」言って、思い出す。あれか。「あの、雌のライオンをモデルにしたような」

「あの人的鎧(ヒューマノイド)のことを、少し調べてみたんですよ」


 言って、彼女はいそいそと自身の重厚なアタッシュケースの中からタブレット型の端末を取り出し、私に見せてくる。


「アレ、あたしも無銘かなー、とか思ってたんですけど。どうやらどこかの誰かが作ったものらしいっす。で、このフォルムから作成者を少し絞り込んでみたんですけど」


 そのセンサタブレットには大画面に大きくプレゼントのようなものが浮かんでおり、その箱の外装にはご丁寧に


               「押してちょ」


                  といったふざけた文字が浮かんでいた。


「あなたの言わんとすることは分かったよ」

 言って、私はその端末を彼女に突っ返す。そうすると、彼女は突如破顔した。

「えぇえぇええなんで起動しないんですかセンセー。折角驚かせようと思って音量増大、光学式画面いっぱいに不快になる画像とか用意したのに」

「あなたのその指摘の時点で、私の精神面はぼろぼろだから勘弁してくれ」

 

そういうと、彼女は口をつぐんでタブレットを鞄に戻し、そうして口を開いた。


「やっぱり、あれ作ったのセンセーだったんですね」

「あなたには分かったのか」

「そりゃ分かりましたよ。あたしセンセーのファンですから。それくらいは分かって当然。あの不必要なフォルムはどう考えてもセンセーの趣味です」


 趣味。――趣味なのだろうかあれは。私の作成物というものは、設計図を敷いた時点で勝手にその形を合理的に決まるものなのだが。デザイン性を重視したことは一度もない。


「で、センセーの作品がこんなことに利用されたのには、心当たりが?」


 今までの馬鹿のような態度を棄てて、彼女は私に問いただす。これだ。人前では馬鹿のふりをしながら、その実誰よりも洞察力に秀でているのだ、この娘は。


「ないな。第一、あれは私自身が廃棄したものだよ。作ってはみたが被験をするまでもなく失敗作に違いはなかったからね。疑うまでもなく、あれは人間には扱えない」

「おおう。失敗作というフレーズを聞かなければカッコイイお言葉。オモシレエです。でもその設計図、私にも見せてほしかったなあ」

「ライバルに自分の手の内を明かす人間がいるかな」

「いるじゃないですか。今ここに」


 言って、彼女は私を指し示す。そう、その人的鎧(ヒューマノイド)を私が作成したと告白した時点で、私はこの娘に大部分を話してしまったことになる。


「センセー、この事実を公表されたら、ここにもいられなくなりますよね。というか、キカク地域にもいられなくなるかも?」


 わざとらしく言って、ノウスイは私の向かっているデスクに腰を下ろした。


「ね、センセー、このことの公表を避けてほしいならお願いが二百くらいトータルであるんですけど、聞いてもらえます?」


 まあ、こうなるのは必然かもしれない。


「残念だが、証拠は出てこない。私が作ったという痕跡は、廃棄した時点ですべて消滅させた。今更ノウスイさんが調べても出てはこないよ。例え、その暴動に使われた実物を、実際に探し当ててもね」


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