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チャイルズ・ワールド  作者: サイタマメーカ
――――報告なし
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親子喧嘩 討論

 熱刀が振られる。同時にこちらの刀を振るう。刀の切っ先が鎧の表面を熱で削り取る。同時に、こちらが振った刀はあちらの鎧の表面をかろうじて削り取る。


 そういった、武道とも戦闘とも呼べない、ただのつばぜり合いが開始された。


 人的鎧(ヒューマノイド)のスピードは、上半身のみの動きを大きく超える。故に刀が両者の肉体をおおきく捉えることはなく、すで回避し始めた鎧を、表面だけを削るということが成立する。


 本来、肉体であれば間合いに入った時点で、すでに振られた刃から逃れることは不可能である。


 しかしそれが実現してしまった以上、この上なく不毛な攻防が実現した。


 ただ熱刀を振るうだけ。ただ目の前の対象に接近し、そこに刃を叩き込むだけ。


 人間ならばこの上なく愚鈍などの動作が、人間の身体う能力を大きく凌駕しる人的鎧(ヒューマノイド)で行われた場合にどうなるのか。


 打っては弾かれ、切っては打つ。切断という概念を棄て、両者が全く同じ筋力で剣を振るっている状況は、わずか三秒の間に十五回は繰り返される。


 人間の認識の限界を超えた攻防は、すでに人的鎧(ヒューマノイド)の中に入っている我々でさえ目で追えていない。


 ただ、その動作、相手が動いた上半身と、下半身の足の動きのみからコンマ数秒後に訪れる刃を予測算出し、対応する。


 本能による危機感地のようなものに頼りながら、我々は橙に光る熱刀を無数に振るう。


 復元身体の腕がこちらに伸びる。同時に、その手に握られている熱刀がこちらの胴を狙う。


 その動作は、彼が刀を振り下ろす前に認識できる。


 結果として、彼の刃がこちらの鎧を捉えることはない。その前にこちらが刀で弾くことが可能だ。そんなもの、先を取ることは容易い。


 故に橙の刀は間合いに入っておきながら、相手の肉体に剣先が届かないという間抜けを繰り返す。一度熱の刃が交わる度、そこに待機と刃の表面を溶かす結果として火花が挙がる。


 その火花で視界が埋まる。つまり、それだけの数の打ち合いが行われているということ。


 かつ、その光が消えないうちに次の打ち込みを終えているということ。


 袈裟。

 逆袈裟。

 右薙ぎ。

 左薙ぎ。

 振りおろし。

 刺突。


 我々にそれらの認識はない。


 手など不要。目論見など無意味。


 ただ凶器を振り、それを防ぎ、薙ぎ払う。


 そんな攻防が、少しづつ、こちらとあちらの態勢が崩れる段階まで継続される。


 視界の狭まりを感じる。人間は極限状態の速さの物体を見続けると視野が狭まって行くのだ。


 無数に光る火花を視界に入れながら、尚その剣戟の先を見る。


『づあ――っ』


 復元身体の踏み込みが見える。

 おそらくはこちらの回避が間に合わないと悟った上での行動。


 こちらは不用意な大振りを行ったための追い大きく態勢を崩した。それを見ての行動だろう。お互いに、極限の状態になってからの神経が尖りはじめている。この殺劇にカラダが順応し始めているのだ。前よりも動きは俊敏に。その行動は合理的に。運動の初動に入るまでの速度を最速に。


 ――だが。


『よっ――』


 こちらの態勢を立て直すことはたやすい。こちらだって不用意な行動をすることには理由はある。


 態勢を崩したと思わせたのはフェイクだ。態勢の崩したと思わせた態勢からでも、ある程度の行動は可能だ。


 片足が浮いた状態で、持っていた剣を地面に刺し、そこに体重を乗せることで足を使わずに自身の態勢を立て直す。


 あちらがこちらの間合いに入った時点で、地面に刺した剣を、地面ごと薙いで目の前の対象の切断を目指す。部位は足。


 しかし躱される。多少の跳躍によって、こちらの熱刀は空振りに終わった。あちらはあちらでこちらの思惑に気が付いていたのか。


 空中で刃が振られる。こちらの鎧に激突するが、体重を支えるものがない以上、その力mの大したものではない。それはこちらの鎧の表面を少し削った程度でことを収めた。


 復元身体とこちらの損傷は共に同じ。人的鎧(ヒューマノイド)の構造、何十にも存在する鎧部分は、表面に露出した鎧のみを切り裂き、搭乗者へは至っていない。


 傷は数多。白い人的鎧(ヒューマノイド)の外装はは所々に説けたような跡が残り、黒く変色している。


 その状態になっても、一向に勝負は決することはない。


『ボクは、あなたのことが嫌いだ』


 手に凶器を持ち、自身の鎧に無数の外傷を付けた復元身体が発言する。


『ボクのオリジナル。最悪の細菌事件の主犯。このキカク地域の実質的な作成者。そんな男のスペアとして生まれたことは、ボクにとって苦痛だった。いや、そも。あなたは、一体何だ』


『なんだ、とはどういった対象に対しての発言だね? その定義を教えてもらわなければ答えることはできないよ』

『ボクは、あなたが全く理解できない』

『そりゃそうだろう。人間に人間は決して理解できない。個と個が交われるのは外だけだ。内の部分は決して入り込むことはできない。――いや、復元くん。きみがそれを言うのは、実はとても滑稽なことなんだぜ』


 復元身体は、そこで走り出す。


 手に熱刀を持ちながら、その刃の中心にこちらの首を捉えんとする。


 すれ違う内に、三回の刀の交わり。


 こちらの背後に到達した彼は、剣を逆手に持ち替え、こちらの胴体にそれを突き出してくる。


 点を目指して向かってくる剣に対し、こちらは一本の線をもってそれを弾く。突きを剣で防ぐ手段としては、その切っ先をこちらの刃に当て、刀の起動そのものを変えることが望ましい。


 あちらの刀身を受け止める。その状態で、両者は一度停止する。


『きみは、人間への完全な理解者として生まれたんだ。電子の媒体を乗っ取ることはすでに技術として率している。ならば、人間という生物の脳を乗っ取る方法は何だと思う?』


 復元身体の肉体が回る。身体全体を回し、こちらの防御を掻い潜るろうということか。


 しかし防ぐ。その行動をとった時点で、すでに手は読めているのだ。こちらが行動を停止しない限りは決定打を与えられることはあり得ない。


『それはすなわち、他者がきみという存在は完璧に理解するということだ』


 復元の刀を弾く。相手の剣に衝撃を与えることで、その構えを崩そうという方法だ。


『人間に人間は理解できない。ならば、その理解の本質はなんだ? 理解とは? 誰かが誰かを理解するということは、つまりきみのすべてを知るということだ。きみの情報を補完するということだ。しかし、そんなことをすれば、それはつまりその人間が他者の記憶を、性格を、本質を理解したと言うこと。そうなれば人間の脳にもう一人のきみが生まれたことと同義だ。単一の脳が理解できる許容を越えて、他者に自身の存在を誇張する。それが、きみが行なってきた人間への支配のカラクリだ』


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