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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第11章 真相
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解放のために

「ウィンターはまずヴァンパイアの出現情報をたどりながらムーンホルンの状況を調べ始めた。そこで、陛下が王騎士たちにヴァンパイア討伐をさせていることを知る」

「王騎士たちがヴァンパイア討伐をしている様子を何度か観察しているうちに、クレサックに協力をしてもらえないかと考えるようになった。クレサックであれば、私の話を理解してもらえるような気がした」

「ウィンターは私に接触してきた。陛下のヴァンパイア討伐の命に違和感があった私は、ウィンターに協力することにした。まず最初に信頼できる協力者を選ぶことにした」

 クレサックはウィンターの席を離れ、ゆっくりと歩き出した。そして、二人の上級兵士の席の間で足を止めた。

「最初に協力者になってもらったのは、そのときヴァンパイア討伐に同行していたクレッチとデュランだ。二人ともなかなかの実力で、信頼ができる部下で、何よりも肝がすわっている。二人に情報収集や伝達を担ってもらうことにした」

 クレッチとデュランはクレサックを見上げてにっこり微笑んだ。

「その後、しばらくしてエストル様に話を持ちかけた。エストル様は陛下を幼い頃から見てこられた方。異変に気づかれていないはずがない。それに宰相になられてからずっと何かと私を信頼して、助言などにも謙虚に耳を傾けていただいていた。陛下がテルウィングに操られていることもウィンターに会ってお話しすれば、信じていただけると思った」

 クレサックの洞察力も素晴らしいと思ったが、そのような賭けに出る思い切りがすごいとグレンは思った。エストルの性格から考えると、真実よりも国王の忠臣であることを優先し、セレストにクレサックの話したことを報告する可能性だって充分にあった。グレンも何度もウィンターやヴィリジアンのことをエストルに話したいと考えたが、結局実行に移す勇気は出なかった。エストルは宰相として国王に忠実であろうとするよりも、セレストという一人の人間を救うことを選んだ。セレストがそれほどエストルにとって大切な存在であるということをクレサックは見抜いていたのである。

「私はクレサックの話に興味を持ち、折を見てウィンターに会った。話を聞いて、強く陛下とムーンホルンをヴァンパイアの手から、テルウィングから解放したいと思った。どこまで力になれるか分からなかったが、私は協力を申し出た」

「私たちはその一方で手分けをしてヴァンパイア化した人間を元に戻す、つまり浄化することのできるその剣、ヴィリジアンについて調べていた。それで分かったことがいくつかある。一つはヴィリジアンがエリーの洞窟に封印されていること。そして、もう一つはヴィリジアンの封印を解き、真の力を引き出せるのは、ヴィリジアンの瞳、すなわちヴィリジアンにはめ込まれた石と同じ色の瞳をした者だけだということだ。ヴィリジアンには青みがかった不思議な緑色の石がはめ込まれていると記されていた。私はすぐにぴんときた。ヴィリジアンの瞳を見たことがあると思った。一人は」

 クレサックはまたゆっくり歩いて若い女性の席の後ろで止まった。

「姪のシャロンだ。私の家はファビウスという町で代々剣術や魔術を教えている。今は兄が家を継いでいる。シャロンはその娘で、兄から剣術や魔術の指導を受けていた。私はシャロンを引き取って指導したいと兄に相談した。兄もシャロンも喜んで申し出を受けてくれた。ヴィリジアンの封印を解き、ヴァンパイアの浄化ができるようになってもらうため、私は人目につかない場所でシャロンを指導しようと考えた。そのためには王騎士の色を辞さなければならない。ちょうどその頃、類いまれな実力で注目を浴びていた若い上級兵士がいた」

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