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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第11章 真相
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ヴァンパイアについて

 だが、すぐに姿勢を正し、真っ直ぐ向き直って話を続けた。

「まず120年前に度重なる戦争のため、テルウィングとのゲートを互いに封印したことは周知の通りだ。その後テルウィングでは各地で内乱が起こった。テルウィング王は鎮圧に乗り出したが、一ヶ所鎮圧に成功したと思えば他の場所で、その場所の鎮圧に成功したと思えばまた他の場所で、と手がつけられない状態になった。そこで、戦争のとき、ムーンホルンに投入しようと開発を進めていた魔獣の開発を再開した。魔獣は国王軍にとって多少の戦力とはなったが、いずれも各地の兵士や冒険者に撃退された。そんな中、国王軍は強力な生物兵器の開発に着手し始める。そして、とうとうその実現に成功する。その生物兵器は、ヴァンパイアと名づけられた」

 どよめきが起こる。ヴァンパイアの正体が初めて明かされたのだ。無理もない。エストルは場が少し収まるのを待ってなおも続けた。

「ヴァンパイアは人間の血管に牙を食い込ませ、血を吸う。牙にはヴァンパイアの核となっているカーマナイトという鉱物の毒素が含まれていて、吸血された人間をヴァンパイア化する。ヴァンパイア化した人間は一般的に意識がなくなり、人間の生血を吸血するように行動する。テルウィング王はこの生物兵器を内乱の起こった地域に派遣した」

 エストルは溜息交じりに言った。

「町の住人はヴァンパイアに噛まれ、噛まれた住人が他の住人を噛み、町はヴァンパイアで溢れかえった。内乱の起こった各地にヴァンパイアは派遣され、町はヴァンパイア化した。人々はヴァンパイアの力を恐れ、内乱は鎮静化した。それを見たテルウィング王は考えた。ヴァンパイアの力でムーンホルンを支配できるのではないかと」

 室内がざわつく。一同息を呑んで聞き耳を立てた。

「テルウィングは三体のヴァンパイアの開発に成功した。この三体のヴァンパイアはヴァンパイア化した人間と区別するためにテルウィングでは〈マスターヴァンパイア〉と呼ばれている。ムーンホルンでは、王騎士など一部の者しかその存在を知らなかったが、〈上級ヴァンパイア〉と呼んでいる。三体ともそれぞれ異なる容姿と能力を持つ。テルウィングでは試験段階まで開発が成功した魔獣にコードナンバーをつけていく。ヴァンパイアは0から始まる三桁のナンバーだ。最初に開発に成功したのは〈002〉。コードネームは〈追跡者〉。先日この城に現れた上級ヴァンパイアだ。男性の姿をしていて、素速さを活かした攻撃を得意とする。その次に開発に成功したのは〈003〉。コードネームは〈告知者〉。少女の姿をし、遠隔操作などの空間操作を得意とする。そして、三体目は〈005〉。コードネームは〈執行者〉。男性の姿をしていて、強力な魔力による破壊力が特徴だ」

 部隊長たちは険しい表情をしながら耳を傾けていた。そのような強い生物兵器を相手に戦っているのかと今更ながら思い知らされる。

「テルウィング王はまず〈告知者〉の能力を使って、少女の姿をした〈告知者〉のホログラムをここ、王都ロソーの森に送った。そして、森の中で迷子になった少女を装い、当時王太子だったセレスト国王陛下に接触した」

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