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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第10章 結界の向こう
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現実のたどる道

「それでいい……」

 さらさらした髪に触れていたエストルの指が力を失って離れていく。満たされる。心も体もエストルの温かい血で。意識を失ったエストルを支えながらもなおも吸血していく。背後から〈追跡者〉の勝ち誇ったような笑いが聞こえた。

「どうだ、夢が現実になった感じは?」

 グレンはエストルの傷口から魔力を送り、牙の痕を消した。そして、そっと座らせた。鞘から剣を抜くと、一気にエストルに斬りつけた。

「何?」

〈追跡者〉は予想と異なる展開に驚きを見せた。一瞬の迷いもなかった。一瞬の迷いもなくエストルを斬った。刃はエストルの皮膚には触れていなかった。エストルの胸から血ではなく、赤く光る粉末が飛び散った。それは砕け散ったカーマナイトの結晶だった。

「夢は夢。現実は、この手で動かす!」

 グレンは〈追跡者〉の方に振り返って剣を構え直した。目は真っ直ぐ〈追跡者〉を見据えたまま、グレンは優しくエストルに声をかけた。

「目を覚ましていいよ、エストル」

 エストルは目をゆっくりと開けた。そのとき、やっと〈追跡者〉がソードからの報告を思い出した。

「そうか。ヴィリジアンはお前の手にあったんだな」

 一度ヴァンパイア化した人間の体内に流れ込んだカーマナイトの成分を浄化して元の人間に戻すことのできる唯一の剣、ヴィリジアン。その剣がヴィリジアンの瞳を持つグレンの手に握られている。

「ちょうどいい。お前を倒してヴィリジアンをいただこう」

「ヴィリジアンは僕を相棒として選んだ。もう誰の手にも渡らない」

 不敵な笑みを浮かべた〈追跡者〉にグレンは毅然と返した。

「行くよ、ヴィリジアン」

 声をかけると、それに反応するように緑色の石が光る。

 最初に仕掛けてきたのは〈追跡者〉だった。グレンは周囲に被害が及んで壁や天井が崩れたりしないように結界を張った。

「こんな狭い場所じゃ使える技も限られてくるね」

 立て続けに放ってきた細かい高速の光弾を全てヴィリジアンの一振りで吸収したグレンが余裕の笑みを浮かべる。モーレで対戦したときのように大きな爆発を起こすような魔法の使い方をすれば、この狭い空間では自分も巻き込まれる。結界は魔力を跳ね返すため、流れ弾が当たってそのまま消滅しなければ、魔力の強さによっては反射して自分の方に跳ね返ってくる可能性もある。

「派手な演出だけが技術ではないということを見せてやる」

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