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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第8章 ロソー城
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背負うもの

「ねえ、エストル」

 グレンが緑色の優しい眼差しでエストルを見つめる。

「一つぐらいエストルよりもできること持っていてもいいでしょ」

 エストルはきょとんとした。すると、グレンがエストルの手を取って握った。

「一つぐらい僕に任せてよ。そうしないと、エストル、一人で全部背負っちゃうでしょ」

「グレン……」

 これだけたくさんのことを背負っているのに、まだ人のことを背負うのか。エストルは思った。こんなにたくさんのことを背負わせているのに。

 手がとても暖かい。グレンの持っている魔力と同じ暖かさ。この暖かさはグレンだけが持っている、グレンだけが育めた暖かさなのだろう。

「ありがとう」

 手をぎゅっと握り返し、エストルが体を起こした。

「さあ、もう一戦お願いしようか」

「いいよ。いつでもかかってきて」

 小気味良い金属音が風に乗って響く。二人は青空の下、二人だけの時間を楽しんだ。


 呼び出しがあったので、謁見室の方に歩いていると、長い廊下の途中で少し前を歩くソードの姿を見つけた。

「ソード」

 走って距離をつめて、後ろから声をかける。

「グレンか」

 気がついてもソードは表情も歩く速度も変えない。

「次の任務かなあ」

「そうだろう」

 数歩そのまま歩くと、グレンは口を開く。

「昨日の夜、クレッチが上級ヴァンパイアに襲われたんだ」

「何?」

 ここでソードは初めて足を止めた。

「どこで?」

「森で」

「森って、城内の森か?」

「そう」

 頭の片隅で謁見室に行く途中だったことを思い出し、ソードは再び歩き出した。

「何をしに来たんだ?」

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