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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第8章 ロソー城
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フェイント

「それが狙いか?」

 エストルは重い溜息をついた。

「何だかその上級ヴァンパイアは執拗にお前をつけ回しているような気がする」

「僕の魔力が欲しいから? でも、それだったら、ただ僕を見つけて魔力を奪えばいい。モーレでしたみたいに」

「きっとそれだけじゃない」

 グレンはびくっと身震いした。上級ヴァンパイアよりもエストルの鋭い勘が少し怖くなって。

「お前は何か重要な情報を握っていると思われているんじゃないか? 何か奴らにとって必要な情報を」

 グレンはエストルの瞳をそっとのぞき込む。何か知らせていないことまで見通しているような気がする。

「心当たりはないけど」

 エストルのフェイントを交わすようにさらっと言ってみる。しかし、エストルの面持ちは真剣だ。

「お前に心当たりがなくても、その情報を握っている可能性もあるし、握っていないとしても握っていると思われている可能性もある」

 エストルの口調がいつになく険しくなっている。エストルもそれに気づいたようにはっとする。

「心配、してくれてるの?」

 エストルの顔をのぞき込んで、グレンが微笑む。

「ありがとう。気をつける」

「気をつけて何とかなるものでもないが」

 エストルは苦笑する。

「前にも言ったが、上級ヴァンパイアはただ渇きを満たすために吸血しているわけではないような気がする。全ての人間をヴァンパイア化しようとしているように思える。お前はそれを妨げる要因になっている何かと関わっていると考えられていて、それを引き出そうとしている。考えすぎか?」

 エストルの言っていることはだいたい当たっている。エストルはやはりグレンが語ったこと以上のことを推測している。だが、ヴィリジアンやウィンターのことを話すのは、まだ早すぎるような気がする。グレンは曖昧に返答した。

「それは、ありうるかもしれない」

 そう答えるしかないだろうな、とエストルは一度話を打ち切る。

「ところで、その部下はどうしている?」

「うん。小一時間ほどで意識は戻って普通に生活できる程度まで回復した。魔力がまだ戻っていないから今日の仕事は休むみたいだけど。一日休めばもう元通りになる」

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