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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第7章 ロソーの森
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ささやかな晩餐会

「随分抵抗したんだね。魔力がほとんど残っていない」

 優しく笑いかけたが、クレッチの表情は強ばったまま解れない。

「申し訳、ございません。力が、及ばなくて」

「ううん、君はよくがんばった」

 グレンの優しく微笑む顔を見ていると、なぜか落ち着く。これはきっと持って生まれたものなのだと思う。クレッチは難しいことは後にして、気持ちを切り替えようと努めた。切り替えを進めようと思考を巡らせていると、ふと疑問が湧いてきた。

「なぜ、私が上級ヴァンパイアに出くわしたことが分かったのですか?」

「デュランに夕食に誘われたんだ。君と約束しているから三人でどうかって」

「そうだったんですか」

「君が時間になっても戻らないから探しに行ってみようってことになって」

「デュランは?」

「今、出かけている。詰め所に報告に行くって」

 そのとき、ドアがばたんと開いた。

「ただいま戻りました」

 デュランだった。ぼうっとしていて気にも留めなかったが、あれから結構時間が経っていたらしい。やはり魔力が不足している分、疲労が出ている。

「お疲れ様」

「あ、クレッチ、気がついたか?」

 すぐにクレッチを見つけ、デュランは安心したような顔をした。

「起き上がれるか? 場所は変わっちゃったけど、三人で食事しよう。グレン将軍のおごりだ」

 紙袋からてきぱきと買ってきた食料を出しながら、デュランは言った。

「どう?」

「あ、大丈夫です」

「お腹、少しは空いてる?」

 グレンが聞くと、クレッチは頭をかいた。

「何だか、よく分からないです」

 魔力を奪われて力が入らないのだ。当然だ。だが、クレッチは笑顔になってベッドから出てきた.グレンは近くに置いていた上着を羽織らせた。

「僕も実はソードに手合わせをお願いして、結構派手にやって魔力使い果たしちゃって。まだ回復できてないんだ」

 グレンは苦笑いする。

「食べておかないと、魔力の回復が遅れるから」

「グレン将軍からの命令だぞ」

 デュランが冗談めかして言うと、クレッチも、

「参ったな」

 と言いながら席についた。

「申し訳ございません。こんなところで食事するはずじゃなかったのに」

 クレッチが謝る。

「いいよ。どこでも。三人こうして久しぶりに話ができれば」

 グレンが笑う。

「グレン将軍、予定どおり、旅の話聞かせてくださいよ」

「そうだったね」

 デュランからグラスを受け取りながら、グレンは微笑む。三人のささやかな晩餐が始まった。

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