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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第7章 ロソーの森
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パトロール

「お待たせしてしまって申し訳ございません、グレン将軍」

 ドアを開けると、デュランが息を切らしている。

「クレッチがいないんです」

「え?」

 約束を破るような人ではないのに。

「今日、クレッチは森の昼間のパトロールで、五時には夜間の人と交代するはずなんです」

 城の横には結構な広さの森がある。国王の所有地で、城の庭園とつながっていて、いちおう城の敷地内ということになっている。城で使用する木の実や薬草が収穫されたりもしているが、元々は国王や城の住人が狩りや散策を楽しむためのものである。

「門番に聞いてもまだ戻っていないって言うんです。何かあったんでしょうか?」

 パトロールで何か異変を見つけて対処しているのだろうか。ヴァンパイアが出現してから野生の動物の中にも、おそらくあのカーマナイトという鉱石が影響しているのだろうが、凶暴化し、非常に危険になっているものもいる。厄介な動物に出くわした可能性もある。

「行ってみようよ。何かに手こずっているんだろう。助けになるかもしれない」

「いいんですか?」

「一人で待っているのは退屈だからね」

 グレンは笑って剣を手にした。

「行こう」


 もう辺りはすっかり暗くなっていた。

「私が灯を点します」

 そう言うと、デュランが指先に小さな光の球を作り、宙に浮かべた。

「パトロールはそっち側から行くんだよね。逆から行った方が早く会えるかな」

「そうですね。その方が入れ違いにならなくていいかと」

 二人は左の道を選んだ。

「パトロールか。懐かしいなあ」

 柔らかい草の感触を確かめながらグレンは歩いた。王城の兵士たちは交代で森のパトロールを行う。だが、王騎士は城を空けることが多くなっているため、パトロールのシフトから外されている。だから、王騎士になってからはパトロールをすることがなくなった。

「ちゃんと道覚えているんですね」

 森の奥の方に来ても何の迷いもなく歩いて行くグレンを見て、デュランは言う。

「何回も歩いたからね。忘れられないよ」

 そのとき、何かに気がついてグレンが足を止めた。デュランも一瞬遅れてだが、足を止めた。耳を澄ましたが何も聞こえない。だが、確かに異様な空気が漂っている。

「この感じ」

 グレンの瞳に警戒の色が浮かぶ。

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