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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第7章 ロソーの森
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断ち切る術

 グレンの言葉には強い意志があった。自身も上級ヴァンパイアと戦ったことがあるソードは感覚的にグレンの言葉を理解した。

「そうだな」

 ぼそっとソードが呟く。

「いい練習になったと思う。まさかあの術が破られるとは思っていなかった」

「全然知らない魔法だったから、どうしようかと思ったよ。研究熱心だね、ソードは」

「興味があるだけだ。一度お前くらい強い相手に試してみたかった」

「ソードは、ソフィアや僕と違って攻撃魔法を使うから、すごく勉強になる。上級ヴァンパイアの攻撃パターンと似てる」

 グレンとソフィアは剣を使った技を主としたバトルスタイルであるのに対し、ソードは得意な攻撃魔法が主軸である。同じ王騎士でも違った戦い方になる。

「それにしても、やっぱりソードは強いなあ。かすり傷しかつけられなかった」

 グレンは溜息をつく。

「そんなことはない。お前は私の術を断ち切った。私の負けだ」

 確かにあの激痛を抑えて集中力を最大限にまで高め、魔法の効力を断ち切る術を体験したことは、それだけで価値があるように思えた。ソードにそれを指摘されると、急に達成感が出てきた。

「優しいんだね、ソードは」

「そんなふうに言うのはお前だけだ」

 グレンはくすっと笑った。それを見て少しだけソードも笑った。


 がばっと起き上がった。

「また、か」

 嫌な汗が滲んでいる。息は切れ切れだ。また絶叫したのだろうか。喉がからからだ。

 またあの夢。エストルに牙を剥く夢。リアリティが回数を重ねるたびに出てくるような気がする。夢の中での感覚がより鮮明に、徐々に研ぎ澄まされていっているような気がする。

 窓の外を見た。もう暗くなっている。かなり眠れたようではある。魔力も順調に回復していたのだろう。今の夢で精神を蝕まれたせいでまた疲れが出て、どの程度回復したのか感覚的にはよく分からなくなっているが。

 もう少ししたら、デュランたちが来るはずだ。こんな疲れ切った顔で二人に会いたくない。二人が来るまでに気持ちを切り替えなくては。

 テーブルの上でカラフェとグラスが置いてあるのが目に留まった。デュランが置いてくれたのだろう。喉がからからだったことを思い出し、ベッドから抜け出すと、カラフェの水をグラスの注ぎ、一気に飲み干した。少し頭が回るようになったような気がした。

 とりあえず出かける支度をしよう。

 身支度が整って、しばらく片づけなどをしていると、ドアの向こうで声がした。

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