ヴァンパイアと魔獣
「そうか。上級ヴァンパイアが」
ムーンホルン国王セレストは、王騎士グレンの報告を聞いて目を閉じた。何か考え込んでいるような感じだった。
「上級ヴァンパイアが?」
隣でソードが眉をぴくりと動かす。冷静なソードにしては結構な反応だ。
「応戦したのですが、敵の攻撃にやられてしばらく意識を失ってしまって。気がついたらもう姿はありませんでした。申し訳ございません」
グレンは頭を下げた。
「良い。足取りがつかめただけでも大きな成果だ。魔獣の方はどうなった?」
「はい。意識が戻ったあと、付近を探索したのですが、どこにも姿が見当たらないのです。山を登ったり下りたりして巡回したのですが、やはり魔獣は現れませんでした」
「ヴァンパイアと魔獣には、やはり何か関係があるのでしょうか?」
エストルが口を挟む。
ムーンホルンには古くから土地に棲みついている魔獣がいる。洞窟や森の深部など人目につかない場所にいる。エリーのドラゴンのように魔剣を護っている魔獣もいる。だが、ヴァンパイアの出現とともにその数は急激に増えた。人目につくところにも現れるようになり、人が襲われる事件も多くなった。
「もしそうだとすれば、ヴァンパイアが現れたことが魔獣に何らかの影響を及ぼした可能性も考えられるのではないでしょうか」
「分からないな」
セレストは呟いた。
「とりあえず手の打ちようがないので、また何かあったら連絡するように住人たちに伝えて戻って参りました」
グレンの報告にセレストは頷いた。
「上級ヴァンパイアの件もあるので、少しエストルと話がしたい。次の任務は追って伝える。それまで城内で待機。いつでも連絡が取れるようにしておけ」
「はっ」
グレンとソードは謁見室を出た。
唇を外して傷に手を当てる。牙の痕は完全に消えた。
「ねえ、ソード」
ソードはゆっくりと顔を下げ、グレンと目を合わせる。
「ソードはヴァンパイアになって強い力を得たことをどう思う?」
ソードにしか聞けないことだった。同じようにヴァンパイアに吸血され、強い力を手にしたソードにしか。
「そんなこと考えたこともなかった」




