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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第5章 インディゴ
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心の支え

「でも、本当は分かっているんだろうな」

 ウィンターは天井を見上げた。

「お前が一人で敵わないような相手なら、王騎士と同等の実力を持たない者が何人か加わっても、どうにもならないということ」

「それでもそう言わずにはいられないんだ」

「お前が逆の立場でもそうするだろう」

「まあそうかなあ」

 グレンはしばし考える。そして、くすっと笑い出した。

「僕だったら、『僕が行く!』とか、ぶっちぎれて剣持って城を出て行きそう」

「そうだな。お前ならそうするか」

 ウィンターは苦笑した。

「やっぱりエストルってすごい人なんだね。友人の命が懸かっていても、使命と責任はちゃんと果たすんだ」

 窓の外を見ると、先ほどクレサックが言っていたように深い緑が広がっている。

「僕にはとてもできないよ」

「簡単なことではない。エストルだからこそできるのだろう」

「うん。でもね、そのエストルが言ってくれたんだ。僕のおかげで宰相の仕事をこなせるんだって」

 グレンは目を閉じた。

「あのエストルが僕のこと心の支えにしてくれているんだ。それってすごく嬉しいことだと思うんだ」

 ウィンターは黙ってうなずいた。

「僕、エストルの気持ち、少し分かるような気がするんだ」

 ヴィリジアンの瞳が少し揺れている。

「僕は多くを知りすぎてしまった。城にいるときには誰にも話せない。一人で抱え込んで。誰が敵で誰が味方なのかも分からなくて疑心暗鬼になって。いつもうっかり口を滑らせてしまっていないだろうか、怪しまれるような行動を取っていないだろうか、って不安になったりして。何か重くのしかかってくる感じ」

 すると、ウィンターが少し表情を曇らせた。

「お前には、難しい立ち回りを強いて申し訳ないと思っている。だから、できるかぎりのことはする。だが」

 ウィンターの口元がほころんだ。

「お前がエストルの支えとなっているように、エストルもお前を支えてくれているのではないか?」

 エストルが抱え込んでいることが具体的に分かるわけではない。グレンに話せないこともたくさんあるだろう。それでもエストルの立場を何となく理解して寄り添ってきた。エストルもグレンのことを何となく理解した上であのように振る舞っているに違いない。

「そうだね」

 少し気持ちが晴れたような気がした。

「早く体治さないと」

 グレンは目を閉じた。また抱え込むことが一気に増えて疲れが出たのか、すぐに眠りについた。

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