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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第5章 インディゴ
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ヴィリジアンの使い手

「好都合?」

「そう。シャロンの、瞳の色だ」

「シャロンの、瞳の色……」

 アウルで一目見たときから気になっていた。自分と同じ、不思議な青緑色の瞳。

「ヴィリジアンの、瞳」

 ウィンターに言われて剣をじっくり見る。その柄にはめ込まれた宝石の色は確かにシャロンの瞳と同じ色をしていた。

「ヴィリジアンは同じ色の瞳をした者だけを使い手として選ぶ。他の者には剣の魔力を引き出せない。封印を解くことすらできない」

「私も真実を聞かされ、ウィンターに協力することにした。まずはシャロンに剣術を教えながら、ヴィリジアンを探す。だが、王騎士という立場ではそれが叶わなかった。そこで王騎士を他の誰かに替わってもらおうと、後任の候補を探していた。そんなときに見つけたのがグレン、お前だ」

 クレサックはグレンの澄んだ瞳をじっと見つめた。

「若かったが飛び抜けた素質と魔力、それに実力があった。そして、ヴィリジアンの瞳」

 クレサックはシャロンから剣を受け取った。剣の光が消えた。それを確認して、今度はグレンの方に柄を向けた。グレンはおそるおそる剣を手に取った。すると、再び剣が青緑色に輝きだした。

「グレン、お前もまた、ヴィリジアンの使い手だ」

「それでは僕にもヴァンパイア化した人たちを浄化できるのですか?」

「できる。だが、まだこれをお前に渡すわけにはいかない」

「陛下が、信用できないのですね」

 肩を落としてグレンは言った。クレサックは力強くうなずく。すると、ウィンターがムーンホルンのターニングポイントとなった日のことの真相を語り始めた。

「エストルから聞いているだろう。ある日を境にセレストという人間が変わってしまったということを。あの日、セレストは狩りに出かけ、森で一人の少女と出会った。少女のコードネームは〈003 告知者〉。テルウィングが開発した、いわゆる上級ヴァンパイアだ」

「そんな。じゃあ陛下は……」

「いや、セレストはヴァンパイア化したわけではない。そのときにはまだゲートは開いていなかった。ヴァンパイアを送り込んでセレストを吸血することはできない」

「だったら、その少女は?」

「ホログラムだ。〈告知者〉は離れた場所に鏡像や思念を送る能力を持つ。強い呪いのようなものに操られていたと考えた方がいい。だが」

 ウィンターは続けた。

「ゲートが開いた後、〈告知者〉はムーンホルンに来たはずだ。そして、セレストと接触したはず。そのとき何らかの処置を施したと見ていいだろう。最初の呪術でこんなに長期間安定して人を操れるとは考えにくいからな。ただ、ヴァンパイア化しているとは考えにくい。吸血されたあとの個体の変化は予測不能だ。セレストを操りたいと思うのなら、他のより確実な、例えば呪術などの方法を選んだ方がいい」


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